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溺愛に、振り回される?振り回す?

覚悟 2

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「わ、わたしの事が嫌いなわけではないんですね?!!」

イチイ嬢は、涙を拭うこともせず、立ち上がって、お兄様に詰め寄ります。

「はい。嫌うわけないです。
ただ、真っ直ぐすぎて、眩しいです」
お兄様も目を反らさずに答えます。

「なら、なら!淑女教育がんばります!
天使な妹さまと同じくらいキレイなご挨拶できるようになります!
天使さまの隣に立てるように、それ以外もがんばります!
天使な妹さまが一番でもいいです!
同じ愛情とか、いいです!
センバは愛情を与える者です!
天使さまが大切にする天使な妹さまも同じだけ愛せます!!
なんだったら、お二人の〝ありがとう〞の一言さえ貰えれば、なんでもできます!!
任せて下さい!
お二人、まとめて愛してみせます!!」
イチイ嬢、天高く拳を突き上げます。

「えーっと、ディにも伴侶は見つけるつもりだよ?
ディこそ幸せになって貰わないと」

「ならば、シラヌイを!絶対、シラヌイが合うと思います!!」

「「え?誰?」」
思わず声がでたら、お兄様も同じことを思っていたようです。

「すげぇわぁ、聞いてはいたけど、センバの愛情過多な猪突猛進、求愛行動、初めて直に見たわぁ。
確かに、これは逃げるのムリだわぁ」
これに横槍入れたらどうなるのかなぁ、フフ、と、小声でつぶやいているシィベリ様。

ふざけないでくださいまし、と思ったので、
「え、横槍入れるのですか?どなたが?」
とコテンと首をかしげて、わざと聞いてみました。

「は?シィベリ、どういう意味だ?」
辺境伯様がイラっとした声で問い詰めます。

「やだなぁ、そんなこと言ってないよ、妹ちゃんの聞き間違いじゃない?」
目の奥が笑ってない笑顔で茶化すシィベリ様。

ここは可愛く、ふてくされてみましょう。
頬を膨らませて、ぷいっと横を向いてみました。

そこにイチイ嬢のお顔があったから、さぁ、大変。

「天使な妹さまが、究極に可愛い!!」

お兄様ともお話しましたし、キャパオーバーだったようです。
鼻血が吹き出て倒れてしまいました。

「ここにきて、倒れるの?!限界だった?!」
夫人と辺境伯様が大慌てでイチイ嬢を抱き止めます。

シィベリ様の口元が一瞬歪みました。
シィベリ様の横槍発言はうやむやになったようです。


イチイ嬢をソファに寝かせて、シィベリ様はデッサンの続きを
残りで話し合い再開です。

「坊主が、誠実に有ろうとしてくれてるのは分かった。
でもなぁ、あれがセンバなんだ。
坊主にとっては重すぎるのかもしれん。
受け止めろ、とは言わん。
でもイチイを側に置いてやってくれ。
イチイのために何かしろとか、変われとも言わん。
坊主は坊主のままでいい。
センバの唯一は、居てくれるだけで、センバは幸せなんだ」

「良いんでしょうか、享受するだけと分かっているのに。
残念な事に、生物学上クズの血が入っているんですよ。僕には」

「それを言っちゃったら、ダメよ。
貴方には、貴方が天使と自慢する双子の妹がいるのよ?
貴方はアレとは全く違うよ」
夫人が優しく語りかけます。

「そうです、お兄様。
私、お兄様と双子で嬉しいですわ。
お兄様言ったじゃないですか。
〝ディこそ幸せになって貰う〞って。

私はもっと良いこと言いますわ!

どう頑張ってもセンバの愛情にかなわないですわ。

、じゃなく、

、せめて一人分のセンバの愛情に並びましょう!!」

イチイ嬢のまねして、天高く拳を突き上げて、それからお兄様を見て、むふー、と最大限鼻息荒くしてみました。

「ディには、やっぱりかなわないなぁ」覚悟、なかったね。ぽつりとつぶやいた後
「それは、イチイ嬢のまねしてるの?」
フフフと、お兄様の笑顔がやっと和らいできました。

それを見たヒサギ様が「アレはヤバい、私も鼻血出そう」とぶつぶつ言っています。


「で、シラヌイって、誰?」
…シィベリ様、わざと空気を読まないで言ってますね?
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