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溺愛に、振り回される?振り回す?

慣れる、慣れないの前に、死なないよね?

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意識を手放したご令嬢は、夫人の膝枕で幸せそうな顔をしております。

「これ、スパルタ方式やったら、死なない?」
「私達の顔、そんなに刺激が強いんでしょうか?」
「心臓麻痺、心不全、心筋梗塞?」
「お兄様、よくそんな難しい病名ご存じですね?」
「いつか、それに似せた毒かなんかが開発されないかなぁと?」
「坊主、こっわ!!オマエが言うと洒落にならんぞ?!」
「洒落じゃないですし?」
「こっわ!!!」
「エミリオくん?何か不安があるなら相談にのるわよ?」
「ありがとうございます、夫人。どうです辺境伯様、これが大人の対応というものですよ?」
「こっわ!!坊主、こっわ!!!」

辺境伯様がワンちゃんを抱きしめながらしきりに怖い怖いと言っています。
ワンちゃんが、ぐえぇと苦しそうです。

「辺境伯様、ワンちゃん、死にそうですよ?」

おおぅ、すまん、と辺境伯様がワンちゃんを放します。
辺境伯様の膝から降りたワンちゃんは、とてとてと歩いて私の足元で、ごろんとお腹を見せました。

「か、かわいいいいぃぃ!!!」

私はワンちゃんのお腹をこれでもかと撫でました。

「お兄様!!これは至高のもふもふですわ!!!
アカシアくんのほっぺに並びます!!」
ささ、お兄様も、と私はお兄様もお誘いします。
お兄様も、お腹をなでます。

「………」

「…お兄様?」

「…使用人の皆さんの努力の結晶のもふもふの毛並み。その中にあるお腹の柔肌が絶妙に温かくしっとりと、かつ、ずっと触っていても疲れない弾力。なんだこの中毒性は。これはヤバい。ここだけ切り取って書類仕事の合間に触れ」「坊主!その思考はマズイ、戻ってこい!」
お兄様がブツブツ言い出した辺りから、仰向けのワンちゃんが、ぷるぷる震えだしています。

「お兄様、切り取っちゃダメです。ワンちゃんは使用人さんも含め、皆のお気に入りです。独り占めは、メっです」

「ディ?多分、メっ、する所は、そこじゃない。
まぁ、僕もちょっとおかしかったけど。
うん。駄犬。君は撫でられ犬としては優秀だと認めざるを得ないようだ。
ディのためにも、このもふもふを損なうことのないように、使用人の皆さんには、よく媚を売っておくように!!」
お兄様が仁王立ちでワンちゃんに指令を下します。

「ワン!!」ワンちゃんが勢いよくお座りの姿勢になり、片手を上げます。

「まぁまぁまぁまぁ!!お返事もしてくれるのですね!!
良く出来ました!可愛いですわ!!!
ところで辺境伯様、この子の名前はなんですの?」
私はワンちゃんの頭を撫でながら尋ねました。

「お守り様だが?」

「そうじゃないですわ!
だって、人間の事は、勇者の再来様、って呼ばないじゃないですか。
ちゃんとイチイ様、って、個人の名前が有りますわ。
なんでこの子自身の名前が無いんですの?」

「……考えた事もなかったな。
なら、気に入られたユーディリア嬢が付けてやってくれないか?
イチイや坊主と相談するのも良いかも?」

「私達の顔に慣れる練習にもなりますかしら?!」
イチイ様とお友達になりたいですわ!

「その前に、失血死しないよね?」
…なんだかんだで、実は一番、お兄様がイチイ様を心配してる気がしますわ。
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