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幼少期
エアトル家、風前の灯 3
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辺境伯のお屋敷に到着すると、夫人は「馬鹿の話を聞いてくるわ。あの女の子が落ち着いたら知らせてちょうだい。貴方達はゆっくりしてて」と、すぐさま指示を出すと、足早に消えていった。
お兄様と私はセバスとアンを呼んで貰い、客室でお茶を頂くことになった。
「さて、セバス、状況は聞いてる?」
「お茶会に旦那様が乱入して、センバ辺境伯夫人の護衛に取り押さえられた、と」
「センバ辺境伯夫人の機転に感謝しかないよ?
王城でそもそも騒ぎを起こしといて、近衛とかに捕まったら今頃牢屋でしょうに。
そんでもって、不敬罪で、お家存続の危機だったよ。
夫人の護衛に捕まったからこちらに身柄を確保できたんだ。
こっちで相応に罰しないと反感を買って、ゆくゆくは誰も相手にしてくれなくなるよ?
あと、茶会に居た家にお詫びの品を送る必要がある。
何が良いんだろう、それこそ、社交界にも出てない僕達には、さっぱりわからん。
ってか、誰だよ、クソ親父に茶会の知らせを中途半端に教えたヤツ!!」
「お詫びの品は、それこそ、辺境伯夫人にご相談されるべきかと。
ご迷惑どうのと言っていられません。辺境伯に後見人をお願いしてるので、ここは意見を伺うべきです。
でないと、センバ辺境伯としての面目もあります」
「ナルホドねぇ。ああ、夫人に頼りっぱなしだ。今だって、クソ親父の尋問してくれてる」
「その、旦那様に茶会を知らせたのは、ギャリクソンです。
ぼっちゃま達がセンバ辺境伯の後見を得て出席すると伝える、と言っていました」
「なんなの、その、中途半端な忠誠心。
エアトル家をなんとかしたいなら、クソ親父じゃなく、現侯爵か、僕達に判断を仰ぐべきでしょう!?
アレに聞いて、報告して、何か良くなった事なんて、ひとっつも無いでしょうに!!」
「多分ですが……」申し訳なさそうに、セバスは続ける。
「ギャリクソンは、大旦那様がこちらに居た時に領地から優秀だと王都のお屋敷に抜擢され、旦那様が小さい頃からお仕えしています。
なんというか、変に、自分が旦那様をお育てしないと、と思っているというか。
旦那様が次期侯爵として自覚を持たないと、実際に仕事をしているぼっちゃま達に、乗っ取られると心配している節があります」
「エアトル家じゃなくて、クソ親父が可愛いのね。バカな子程可愛いってか。
悪かったなぁ、可愛げの無い子供で!」
お兄様が、ぽすん、とソファのクッションを叩いた。
「……ギャリクソン、クビにしたい。
…ムリだけど。
ギャリクソンの代わりをセバスならなんとか出来るけど、
セバスの代わりに僕付きになる人材が居ない……」
「セバスが居なくなったら、お兄様、倒れますわ。自信があります」
「僭越ながら、それは私、アンも思います。
もう、そこも夫人に頼ってしまわれたらいかがかと。
ギャリクソンに人材を探させても、ぼっちゃまを潰すのが目的なら、ろくな人間を寄越さないかと」
「だから、魔法の講師も見つからなかったかぁ。
僕達じゃ、伝手も何もないからなぁ。
現侯爵の時代から仕えてるなら、それなりに顔も効くからなぁ。
うわぁ、こんな身近に伏兵がぁ。
僕達が伝手を作ろうにも、今回のお茶会がこのザマだしなぁ。
ディ、どうしようか?」
「もう、エアトル家降格でも良くないです?
現侯爵を含め、あの両親が高位貴族の務めを果たす気がないのに、権利だけ享受してるの、おかしいですわ」
「どうして貴族の義務をキチンと理解してるのがこの幼い二人だけなのかしらねぇ。
あの両親から貴方達二人が生まれた奇跡に感謝かしら?」
え、夫人、どこから聞いていらっしゃったので?
お兄様と私はセバスとアンを呼んで貰い、客室でお茶を頂くことになった。
「さて、セバス、状況は聞いてる?」
「お茶会に旦那様が乱入して、センバ辺境伯夫人の護衛に取り押さえられた、と」
「センバ辺境伯夫人の機転に感謝しかないよ?
王城でそもそも騒ぎを起こしといて、近衛とかに捕まったら今頃牢屋でしょうに。
そんでもって、不敬罪で、お家存続の危機だったよ。
夫人の護衛に捕まったからこちらに身柄を確保できたんだ。
こっちで相応に罰しないと反感を買って、ゆくゆくは誰も相手にしてくれなくなるよ?
あと、茶会に居た家にお詫びの品を送る必要がある。
何が良いんだろう、それこそ、社交界にも出てない僕達には、さっぱりわからん。
ってか、誰だよ、クソ親父に茶会の知らせを中途半端に教えたヤツ!!」
「お詫びの品は、それこそ、辺境伯夫人にご相談されるべきかと。
ご迷惑どうのと言っていられません。辺境伯に後見人をお願いしてるので、ここは意見を伺うべきです。
でないと、センバ辺境伯としての面目もあります」
「ナルホドねぇ。ああ、夫人に頼りっぱなしだ。今だって、クソ親父の尋問してくれてる」
「その、旦那様に茶会を知らせたのは、ギャリクソンです。
ぼっちゃま達がセンバ辺境伯の後見を得て出席すると伝える、と言っていました」
「なんなの、その、中途半端な忠誠心。
エアトル家をなんとかしたいなら、クソ親父じゃなく、現侯爵か、僕達に判断を仰ぐべきでしょう!?
アレに聞いて、報告して、何か良くなった事なんて、ひとっつも無いでしょうに!!」
「多分ですが……」申し訳なさそうに、セバスは続ける。
「ギャリクソンは、大旦那様がこちらに居た時に領地から優秀だと王都のお屋敷に抜擢され、旦那様が小さい頃からお仕えしています。
なんというか、変に、自分が旦那様をお育てしないと、と思っているというか。
旦那様が次期侯爵として自覚を持たないと、実際に仕事をしているぼっちゃま達に、乗っ取られると心配している節があります」
「エアトル家じゃなくて、クソ親父が可愛いのね。バカな子程可愛いってか。
悪かったなぁ、可愛げの無い子供で!」
お兄様が、ぽすん、とソファのクッションを叩いた。
「……ギャリクソン、クビにしたい。
…ムリだけど。
ギャリクソンの代わりをセバスならなんとか出来るけど、
セバスの代わりに僕付きになる人材が居ない……」
「セバスが居なくなったら、お兄様、倒れますわ。自信があります」
「僭越ながら、それは私、アンも思います。
もう、そこも夫人に頼ってしまわれたらいかがかと。
ギャリクソンに人材を探させても、ぼっちゃまを潰すのが目的なら、ろくな人間を寄越さないかと」
「だから、魔法の講師も見つからなかったかぁ。
僕達じゃ、伝手も何もないからなぁ。
現侯爵の時代から仕えてるなら、それなりに顔も効くからなぁ。
うわぁ、こんな身近に伏兵がぁ。
僕達が伝手を作ろうにも、今回のお茶会がこのザマだしなぁ。
ディ、どうしようか?」
「もう、エアトル家降格でも良くないです?
現侯爵を含め、あの両親が高位貴族の務めを果たす気がないのに、権利だけ享受してるの、おかしいですわ」
「どうして貴族の義務をキチンと理解してるのがこの幼い二人だけなのかしらねぇ。
あの両親から貴方達二人が生まれた奇跡に感謝かしら?」
え、夫人、どこから聞いていらっしゃったので?
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