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幼少期

辺境伯夫人

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結論から言うと、
辺境伯様ご自身は早々に領地へ強制送還された。

その代わり、私達は辺境伯夫人から王都のお屋敷にご招待された。

先生にも正式な招待状をくれて、大事なお子様二人をご招待するのだから、と、わざわざ迎えの馬車を寄越し、先生が一緒に行ってもおかしくない体裁を調えてくださった。

お屋敷につくと、庭のガゼボに案内され、辺境伯夫人がやって来た。

「まぁまぁ、ようこそいらっしゃいました。小さな紳士淑女。
私が辺境伯夫人のセイラー・センバよ」

「今回はお招き頂きありがとうございます、エミリオ・エアトルです」
「お初にお目にかかります、妹のユーディリア・エアトルです」
お兄様と二人でご挨拶をした。

「まぁまぁまぁまぁ、立派なご挨拶をありがとう!
さぁ、顔を上げてちょうだいな。聞いてはいたけれど、なんて可愛いのかしら!」
そう言うなり、私達二人をまとめて抱きしめた。
…どうしよう、お胸が。
そして、とんでもなくいい匂いがする。

私が、わたわたしてるのに気がついた先生が、
「辺境伯夫人、お茶目はほどほどになさって下さい。ユーディリア様が困惑しておいでです」

「んまぁ!嫌だった?」

ブンブンブンと私は大慌てで首を横に振った。

「なんてこと!顔が真っ赤よ!
ちょっと、テン爺!なんなの、この可愛いすぎる生き物達は!!!」

見るとお兄様の耳も赤い。

夫人は輝くばかりの笑顔で、再び私達を抱き締めたのだった。



「ごめんなさいね、抱きしめたい衝動が抑えきれなかったの」 

落ち着いて席につくと夫人はそう言って謝ってくれた。

私は再びブンブンブンと大きく首を横に振った。
お兄様はそんな私の様子を苦笑いで見ていた。
「まぁ、緊張してるの?大丈夫よ、センバ一族に名を連ねてはいるけれど、気に入った子を捕獲したりしないわ」
そう言って夫人はコロコロと笑いながら続けた。

「この髪色を見て気づいたと思うけど、私は、もともと氷のアイシア公爵家の娘よ。
センバに気に入られて嫁に入ったの。
もうねぇ、逃げられなかったわ」
そう言ってクスクスと笑った。

夫人は目も覚めるような美しい青色の髪と瞳を持っていた。

「うちの主人が貴方達二人をとても気に入ってしまって。
貴方達のお宅にお邪魔した日、帰って来るなり「野生の山猫が懐いた!捕獲だ!逃がさん!俺が育てる!!」って、大騒ぎして。
最初意味が分からなかったわ。
エアトル家に行ったはずなのに、王都で山猫になんて会うわけないでしょう?
で、よくよく聞いたら、貴方達の事だったのよ。
よその家のお子様を捕獲だって、いくらセンバでもやって良いことと悪いことがあるわ。
で、貴方達の困り事に主人を関わらせたら、ヒドイ事になりそうだったから、
領地に強制送還したわ。
今頃、娘と一緒に魔の森で暴れているんじゃないかしら」

「えっと、お身体が大事な時期に、ご迷惑をおかけして?すみません」
お兄様がちょっと困惑しながら答えた。

「まぁ、本当に出来た子ね。
大丈夫よ、全く問題ないわ。
安定期に入ったし、まだそこまでお腹も大きくないし。
それに、生まれるまであと5ヶ月もあるのよ?何もしなさすぎるのも、体に悪いわ。
では、早速本題に入りましょう。
貴方達の困り事は2つ。
1つは王家のお茶会。2つ目は魔法の講師。これで合っているかしら?」

「はい。でも良いのですか?
すみません、夫人が元はアイシア公爵家と存じ上げなくて。評判の悪い家の僕達と関わって大丈夫ですか?」
お兄様が、申し訳なさそうにしている。

「良いのよ。私はもうセンバ一族の者だから。
センバの人を見る目は確かなの。主人が見込んだ子に間違いはないわ。
それに私も貴方達の事、一目で気に入ったもの。あんなに綺麗なカーテシー、早々出来るものじゃないわ。その歳で良く頑張ったわね」
夫人は私の頭をなでてくれた。

「私にも娘が居るから。貴方達の1つ下だけど、んまぁ、これぞセンバ!ってぐらいに駆け回っているわ。マナーのお勉強はほとんど進んでないわね。来年、鑑定式だから、それまでにはなんとかカーテシーは出来るようにしたいのだけど。
生むまで5ヶ月。首が据わるまで3ヶ月。あ、間に合わない気がしてきたわ。
そうそう、鑑定式のために王都に来るから、その時は、遊んでくれるかしら?娘の初めてのお友達が、貴方達なら、私は嬉しいわ」
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