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幼少期

幕間 僕の死なない理由 2

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それから、妹の事は、ディ、と呼ぶようになった。
誰も呼ばない、僕だけの呼び方。
セバスに、休憩の時はディと一緒にお菓子が食べたい、と、ちょっとワガママを言ってみたら「全力で叶えます」とびっくりするくらい意気込んでいて、ちょっと笑った。

ある日、セバスが血相を変えて、文字通り転がり込んできた。
「ぼっちゃま、大変です、お嬢様が怪我をなさいました!」
「っ?!!」
僕はディの部屋に走った。
そこには、青白い顔で眠るディの姿があった。
「……アン、何があった?」
自分でも驚く程、声が震えた。
「ほ、本日の昼食の披露が終わって、お嬢様が部屋でお着替えをされていた所に奥様がいらっしゃって、再度のお召し替えを命じられたのです。お嬢様が思わず「夕食時ではダメなのですか?」と答えたら、奥様がお嬢様を平手打ちなさいました」
「ッ?!!あのクソババァ……でもそれで、意識失う?」
「お嬢様の鼻血が出てしまったんです。それが奥様の裾に付きまして、それに激昂した奥様が、うずくまった、お、お嬢様を……あ…あ、足蹴になさい…ま…した。と、止められず、庇うことも出来ず、誠に…不甲斐なく…申し訳ありません…」
そう言って、アンは泣きながら謝ってきた。
「ふざけんなよ、あんのクソババァ、全力でつぶ」「今はまだ!まだ、ぼっちゃまにも、もちろんお嬢様にも、力が、物理的にも、お屋敷の中も対外的の権力もございません。逆らったところで、今度はぼっちゃまが被害にあっておしまいでございます。何卒、何卒、今は堪えて下さいませ!!」
アンが膝をつき、僕に目線を合わせて、拳を握った僕の手を包み、泣きながら懇願してきた。
「ッ!!……ディが目覚めたら教えてくれ。ディを頼む」
僕はそう言って、部屋を出るしかなかった。
自分の部屋で、枕に顔を埋めて歯ぎしりするしかなかった。

ディが目覚めてからは、ディ自身が変わった気がした。
受け身の死んだ目で、言われた事だけするじゃなくて、
全てを知りたいと、守られるだけじゃなく、隣に立ちたいと言ってくれた。

〝置いていかないで〞

そう言って、泣くんだ。

僕と一緒に居るために努力すると言ってくれたんだ。
そしてこう言った。

「〝家族〞は二人だけで十分ではないですか?」

だから、僕は決めたんだ。
僕は、僕だけは、何があっても〝家族〞である君の幸せのために動こう、と。
ああ、その為になら、僕の命も惜しくない。
だって、ディが居なくなったら、僕は多分、また、灰色の世界に逆戻りだ。


でも、そんな浅はかな僕の願いをディはうち壊してくるんだ。
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