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幼少期

この世界の魔法

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コンコンコン。
「お嬢様、アンです。お医者様が来てくださいました。よろしいですか?」
アンが来てくれたようだ。
「はい、どうぞ」
私はお医者様の診察を受ける事になった。

「骨も折れていませんし、内臓なども大丈夫なようです。しかし、この脇腹の痣はもうしばらく痛むでしょうし、体のこわばりもあります。むち打ち症もあるでしょう。2~3日は安静にして様子をみましょう。他に何か聞きたい事はありますか?」
先生は優しく語りかけてくれたので、ここはひとつ、子供の好奇心という体で聞いてみよう。
「先生、おべんきょうで、私たちは、まほうがつかえる、と、ならいました。
そこで、けがなどをなおす、ちゆ、というまほうがあると、ならいました。
お医者さまと、ちゆのまほうつかいは、ちがうのですか?」
すると先生はびっくりした顔をしたあと、優しく教えてくれた。
「良くお勉強なさっているのですね、えらいです。
さて、医者と治癒師の違いですか。
ふむ、私が教えても大丈夫ですか?」
先生はアンに目配せをすると、アンは頷いた。
「では、了解も得られたので、ご説明いたしましょうか。
まず、はっきり言うと、治癒師は、そもそも数が少ないです。
しかも、教会預かりですからね、普通の怪我や病気の時にかかることは、まず、ありません。
治癒師の最大の仕事は、魔物に襲われた傷の対処です。
魔物から受けた傷には〝穢れ〞がありますから。
普通の薬では、塞がりきらんのです。
治癒師の魔法で治さないと、そこから腐って、いずれ、死に至ります。」

……なんですと?!

「まぁ、軽く裏技があるんですけどね。
浄化師は、まぁまぁいるんです。ただ、何故かわかりませんが、魔力の少ない者ばかりなんです。なので、魔物が生まれる瘴気溜まりを失くす、なんてのは無理ですが、魔物から受けた傷口ぐらいなら浄化できるんですよ。なので、傷口を浄化した後、治療自体は医者がやる、というのは、高位貴族の皆さんがなさっていることです。
魔物からの襲撃なんて、いつあるかわからないのに、傷を受けてから、いちいち教会に許可申請して、治癒師の派遣を待つ、なんてやってたら、腐って死んでいく人間ばっかりになります。
教会の権威のために死ななくていい人間を守るために、医者も頑張ってます」

……なんというか、先生の心の闇を見た気がするわ。
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