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幼少期

今の私

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再び目が覚めると、いくぶん頭がスッキリしていた。
それで、ストンと腑に落ちてしまった。
あ、異世界転生してるのだと。

日本で生きてきた記憶、友人と飲んだくれた記憶は、今現在の私ではないのだと。
あまり悲しいと思わないのは、私が今、ココで生きているからなのか。

ならば、これからの事を考えるため、
今の自分の状況を整理してみよう。


私の名前は、ユーディリア・エアトル

そして、最初に目覚めた時に会ったのは、乳母のアン。
え、乳母?
あれ、私、いくつだ?
んん?!4歳?!
うわぁ、幼児だよ、幼稚園児だよ。
そりゃ、お兄様だって小さいはずだよ、ベットから髪の毛しか見えないはずだよ!
そう、昨日、ベットに激突してきた小さな塊はお兄様。
私の最愛の双子のお兄様。

エミリオ・エアトル。

ん?最愛?
あれま、私ブラコンだわ。
ゴメンよ、友人。君にお兄様は渡せない。
いやちょっとまて、この思想はまずくないか?
なんでそうなっている?
思い出せ、私。

うん、そうだ、
私、お母様に殴られて「死ぬんじゃね?」と思ったのがきっかけだ。


私自身と家族のこと。

なぜ、幼児が目覚めたのに、乳母とお兄様しか様子を見に来ないのか。

……ああ、そうだ。

そもそも、私がベットに寝ていたのは。
アンが、お医者様がすぐ来ると言ったのは。

私がお母様にぶたれたら、お母様のお洋服に鼻血が飛んで、それに激怒したお母様が、うずくまった私を蹴りあげ、吹っ飛んで意識が無くなったからだ。

そりゃ、身体中痛いはずだわ。

そもそも、なんでそんな事になったのか。

お母様のあの言葉。

「お人形の癖に口答えですって?!」

そう、私はお母様の人形だったのだ。


お父様とお母様は典型的な政略結婚というものだろう。
なぜ、結婚したのか、背景はまだ教えて貰っていないけれど。
いつも家に居ない、数回しか会ったことの無いお父様と、
お家で好き勝手しているお母様。
二人が仲良く会話しているのを見たことがない。
そしてお母様は、自分の見た目が良いのも相まって、ドレスや宝飾品など、綺麗で、可愛い物が大好きなのだ。
そして、そんなお母様から生まれた私達双子も、お母様のお眼鏡に叶う顔立ちのようだ。
本当は、私達双子にお揃いを着せて、並べて鑑賞したいらしいが、
お兄様は侯爵家を継ぐための教育がもう始まっているらしく、お母様は、それを邪魔してはいけないらしい。
だから、私だけ着飾らせて遊ぶのだ。
しかし、4歳児には、お貴族様のドレスの着せ替えは苦行なのだ。
着るだけでなく、それに合わせて、髪の毛もセットされる。
それが、1回じゃない。
朝、昼、晩の3回、お母様の食事に合わせて、のだ。
そして、お母様が食事している間、次の食事の時のための衣装を合わせる時間となる。
私はドレスをあてられ、宝飾品の色味を見たりする間、ずっと立たされ、くるくる回ったり、カテーシーをさせられたりする。
そして、お母様が満足すれば解放されて、食事となる。
ただし、食事のマナーがまだ見苦しいと、お母様と一緒に食事を取ることは許して貰えていない。
いや、私や衣装を持ってるメイドに指示出しながら食事する自身のマナーは良いのか?!
と、今なら思うが。
まぁ、でも、そんな事を言ったら、皿が飛んでくるだろう。
それを避けたりしたら、近くに寄って来られて、頭から紅茶をかけられるかも?
とにかく、お母様は、癇癪がひどい。
私が少しでも自分に逆らうのが許せないらしい。

私はお母様の「動くお人形」なのだ。



そして、もう1人。

私の唯一にして最愛。

私のお兄様に対する執着の異常さよ。
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