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3章 王子サマの帰省
紀伊助サマ、ご立腹
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森林地帯の獣道とも言えないような道をしばらく歩いていると
「もっきゅもきゅ」
柊路の懐で、オコジョが鳴き出す。
「もきゅって、オコジョの鳴き声なの?」
剛磨の肩から柊路を見下ろす紀伊助が首をかしげ、後ろを見るが、篁さんも並男もだまって首を横に振るだけだった。
「あっち」
柊路がポツリと一言もらして足を止め、オコジョと見つめあっている。
「え、どっちに何があるの?」
並男が思わず口に出す。
すると柊路はオコジョに一つうなずくと、右の方へスタスタと歩きだしてしまう。
「えーーー、早く母さまの所に行きたいのにぃ……切実に樹魅が欲しい。
仕方ないの。柊路についていくの」
そう言って一行は柊路の後についていく事にした。
5分も歩くと、そこには大木が生えており、異様な存在感を醸し出していた。
「すごいのー…北の大地でココまで大きく育つって珍しいの」
「ん?この存在感は大木本体でしょうか…?ん?何かいます…?」
篁さんが違和感を感じて木に近付き始めると
「紀伊助、すまん、降ろしてもいいか?自分、行かねばならん!!!」
そう言って、紀伊助をそっと降ろし、大木に向かって猛ダッシュする。
「剛磨!!その大木、折っちゃダメなの!!優しくするの!!!」
「はっ!!そうだった!!」
言うが早いか急ブレーキをかけ、大木への体当たりは免れた。
剛磨は大木を見上げながらじっくり回り、3周もすると、
カッ!っと目を見開き、膝を曲げ、力を溜めると、いきなり垂直に飛んだ。
その高さ3メートルは飛んだであろうが、着地すると一言
「届かん……」
がっくりと、うなだれるのであった。
「どいつもこいつもなんなの?ボクの兄弟、バカしかいないの?ちゃんと説明しろ、なの」
紀伊助が大変に不機嫌である。
あどけない幼児の仮面が剥がれている。
「つまり、木の上の方に、ものすごく気になるモノがあって、どうしても取りたかったと。
で、年甲斐もなくジャンプしてみたけど、全く届かなかったと。
……バカなの?」
気が急いて、届くはずもないのに、ジャンプするなんて、子供のようにやってしまった気恥ずかしさと、紀伊助の容赦ない言葉のナイフが剛磨をメッタ刺しにする。
森の中、地べたに正座して、幼児に怒られるムキムキマッチョ。
どうにも絵面がおかしい。
「まぁまぁ、剛磨がここまで見境なく必死になるのも珍しいですし、早く行きたいのもわかりますが、これを解決しないと剛磨も気もそぞろでしょう。
皆で助けてあげるとしましょう?ね?」
篁さんが、助け船を出すと、俯いていた剛磨がパッと明るい顔になった。
「けっこう高い所にあるんですよね?木登り、誰か出来るんですか?」
並男が言うと
「はー、仕方ないの。助けてあげるの。特大の貸し1つなの。
木に登る必要ないの。剛磨、そこに立つの」
紀伊助は剛磨を立たせ
「動かないの。そのムダについてる筋肉でバランスとるの。
……ごめんね、少しだけ力を貸して欲しいの」
そう言うと、紀伊助は地面に手をついて、「たぁ~」と気の抜けた気合いを入れる。
すると、剛磨の立っていた場所30センチ四方が盛り上がっていく。
「柊路、氷で補強するの。剛磨が滑らないように、表面はギザギザとか雪にするの。
剛磨、届いたらストップって言うの!!」
柊路が慌てて、紀伊助の作った土の盛り上がりに手をあて、氷を作っていく。
見た目氷柱がずんずん上へ上っていく。
10メートルは出来ただろうか。「ストーーップ!!」剛磨の声がした。
皆が上を見上げて、見えない剛磨を見守る中、
「獲ったどぉぉぉぉーー!!!」
剛磨の雄叫びが聞こえた瞬間、鳥達が一斉に羽ばたいた。
「こんなに高い所、垂直飛びで届くわけないの」
最後に毒を吐くことも忘れない紀伊助であった。
「もっきゅもきゅ」
柊路の懐で、オコジョが鳴き出す。
「もきゅって、オコジョの鳴き声なの?」
剛磨の肩から柊路を見下ろす紀伊助が首をかしげ、後ろを見るが、篁さんも並男もだまって首を横に振るだけだった。
「あっち」
柊路がポツリと一言もらして足を止め、オコジョと見つめあっている。
「え、どっちに何があるの?」
並男が思わず口に出す。
すると柊路はオコジョに一つうなずくと、右の方へスタスタと歩きだしてしまう。
「えーーー、早く母さまの所に行きたいのにぃ……切実に樹魅が欲しい。
仕方ないの。柊路についていくの」
そう言って一行は柊路の後についていく事にした。
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篁さんが違和感を感じて木に近付き始めると
「紀伊助、すまん、降ろしてもいいか?自分、行かねばならん!!!」
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カッ!っと目を見開き、膝を曲げ、力を溜めると、いきなり垂直に飛んだ。
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「届かん……」
がっくりと、うなだれるのであった。
「どいつもこいつもなんなの?ボクの兄弟、バカしかいないの?ちゃんと説明しろ、なの」
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「つまり、木の上の方に、ものすごく気になるモノがあって、どうしても取りたかったと。
で、年甲斐もなくジャンプしてみたけど、全く届かなかったと。
……バカなの?」
気が急いて、届くはずもないのに、ジャンプするなんて、子供のようにやってしまった気恥ずかしさと、紀伊助の容赦ない言葉のナイフが剛磨をメッタ刺しにする。
森の中、地べたに正座して、幼児に怒られるムキムキマッチョ。
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「まぁまぁ、剛磨がここまで見境なく必死になるのも珍しいですし、早く行きたいのもわかりますが、これを解決しないと剛磨も気もそぞろでしょう。
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「動かないの。そのムダについてる筋肉でバランスとるの。
……ごめんね、少しだけ力を貸して欲しいの」
そう言うと、紀伊助は地面に手をついて、「たぁ~」と気の抜けた気合いを入れる。
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「獲ったどぉぉぉぉーー!!!」
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