地獄の王子サマ

犬丸大福

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1章 王子サマの日常

幕間 ゾウのひとりごと ①

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はじめまして、アタクシ地獄の象ですの。
名前は、まだないですわ。

その前は、ナニかしていたような気はするんですが、思い出せませんの。
思い出せないものは仕方ないですわ。
放置ですの。

そんなアタクシ、ずっと何か足りない気がしてましたの。

いままで、それは、お仕事だと思ってましたわ。

だって、地獄の象なのに、お仕事ないんですもの。
ザイニンを踏みつけるお仕事だと聞いてましたのに、
だだっ広い大地に人っ子一人居ないんですもの。

こんだけ広いんだから、見えない所に居るのかと思って、お散歩兼パトロールしてましたの。
長いこと歩くのは、苦じゃありませんし。

ずーーーーっと歩き回って、アタクシの縄張りにいたしましたの。

やっぱり、誰も居ませんでしたの。

でもほら、もしかして、もしかしたら、
向こうもアタクシの姿を見て、逃げ回っているかも知れませんでしょう?

だから、毎日、パトロールが仕事と思って歩き回ってましたの。

でもねぇ、代わり映えしない景色と毎日にちょっとうんざりしてましたの。

そしたら、「祭り」というものが始まりましたわ!
驚きましたの!
ザイニンというモノを、その時初めて見ましたわ!!
なんですの、アレ。
生理的に受け付けませんわ!!!

アタクシ、身体が大きいのを自分でもわかっていますから、普段はわりと慎重に、足元に注意して歩き回ってますのよ。何か、もふっとした小さいの、たまに紛れてるんですもの。あれ、踏んじゃったら、一発ですわ。

そんなアタクシが、アレは、滅したいと思ってしまいましたの。
踏みつけてもいいモノ、というか、踏みつけるべきモノに変わった瞬間でしたわ。

いつもアタクシの食事を用意してくれる獄卒さんが、

「いつもパトロールおつかれさん。
今日は〝祭り〞と言って、罪人達にわざと酒を与えて、本性を現れさせる日なんだ。
だから、罪人達の気が大きく、荒くなって、大暴れするんだ。
そこを我々獄卒がコテンパンにする日なんだよ。
多分、キミの縄張りにも乱入すると思うんだが
罪人は踏みつけてもいいけど、獄卒は勘弁して貰えるかな?」

アタクシ、大きく頷きましたわ。
だって、嫌悪感のあるモノと、そうじゃない者の区別ぐらいつきますもの。
なんだったら、アタクシの縄張りに誘導してきてくださっても良くってよ?と思いまして
カモン、カモン、とジェスチャーしてみましたの。

そしたら、獄卒さんが

「もしかして、キミも暇だから、祭りに参加したいかい?
なら、ココに罪人を追いたてるよ!!!」

いい笑顔でサムズアップを決めてくださいましたわ!!

流石、長年アタクシの食事係をしてきてくださってるだけありますわ!




さぁ、アタクシ、祭り初参加ですのよ!!!
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