地獄の王子サマ

犬丸大福

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1章 王子サマの日常

黒縄地獄 ②

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視察ピクニック2日目、早朝の集合場所で
樹魅に、何か着ないと絶対に連れて行かない、と盛大にゲンコツを貰った焔矢は
待ってるから服を着てこい、と言われたのにもかかわらず、
野次馬の中に居た獄卒から赤いカーディガンと、
畑に居たおじいさんから麦わら帽子を借りた。
二人とも今までの騒動を見ており、笑いながら貸してくれた。

「ゴメン、キミ名前と部署は?あとでお詫びの品と、一緒にとどけるよ。
おじいさん、麦わら帽子ごめんね、明日もココで畑仕事する?明日返すから。お詫びに何かもってくるね」

フォローは、樹魅しかしない、というか、できない。

「人に迷惑をかけたら、コスプレイヤーを名乗ってはいけないと思うの」
紀伊助は焔矢に冷たい眼差しを送る。
「あんたも、大概だけどな!」
樹魅はツッコミを忘れない。






2日目、地獄の第二階層、黒縄地獄こくじょうじごくである。
ここは、殺生と盗みをすると落ちる地獄である。
大昔から、それこそ、人が集落で生活するようになってからか、盗賊の類いはいたのである。
まぁ、でもどっちかというと、優しい盗賊の類いが落ちてくる。
まぁ、盗んで、殺してる時点で、優しいとは言いがたいが。
もっと酷い盗賊、飲酒の為や、犯すことも目的の内な奴らは、もっと下の地獄に落ちる。
飢饉で自分の子供を助けるため、だの、地主の搾取でどうにもならなくなった、だの、
社会が悪い、と盗賊になったモノたちもいる。
悲しい事ではある。
が。
そういうモノ達は、大抵、自分より弱いモノ達から奪う。
反撃にあっても、自分が勝てる相手を無意識で選んでいる。

子供のため、家族のため、ナニカのために、自分も生き残る。
自分が生き残るために、弱いモノを大義名分にし、弱いモノを狩る。
だから、カルマが積み重なって、ココに落ちる。

例えるなら、

どこぞの越後屋に「先生方!高い金を払ってるんです!こういう時に役に立ってもらわないと!」
という高い金を貰っている先生方や、守られてる越後屋は狙わない。
高い金を持った先生方が、酒を飲みに行った先の「金は持ってるんだ、さっさと酒を持ってこい!」とイビられている酒屋のヨボい親父を狙ったりして、代わりに娘が犠牲になってみたりする。


どちらにとっても、悲しい事である。


そんな業が貯まったヤツらはココに来ると
「オレは仕方なくやったんだ、子供のためだ、なら、今度はオレのため、あいつらがココに来るべきだろう!!」
「地主が悪い、飢饉が悪い、子供を育てなくちゃいけないのが悪い、私は悪くない!!!」

自分で盗んで殺しておいて、悪くないワケないだろう。

だから、業が溜まるのである。

本気で反省している罪人には、恩赦があったりする。
黒縄地獄の刑期は千年だが、刑期が短くなったりする。
でも、こういう罪人には当たらない。
そういう反省の態度や気持ちも、獄卒は見ていたりする。
等活地獄の太助さんのように、キチンと報告があがるのだ。


獄卒、マジ優秀。
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