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二つの世界
9.廻る日
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ふと目が覚めた。
眼前に広がるのは明らかに自室の光景ではないため、正しく言えば私はまだ夢の中のはずだが、それにしてはあまりにも現実味を帯びた感触があった。
先ほどまで見ていた夢の景色だと、私は暗い深海の底へ沈んでいった気がした。
しかし、この空間は広大で全体的に明るく、先ほどとはうってかわった景色だ。
周りを見渡すも何もなく、柔らかな白色の明るさで、なんとも心地が良い。
「ここは…どこなんだ?」
不思議な光景に驚く私の耳に人の声が聞こえてきた。
「ここは時の間です。いくつもの世界が交わる空間の狭間に存在します」
声のする方を見上げると、綺麗な紺碧色の瞳をした端正な顔立ちの女性がいた。
立っているのか浮いているのか分からない。髪型や服装は、絵画等でよく見られる天使そのものだった。
「私は時の間を管理しているニケラと申します。あなたたちはこの時の間に、わずかな時間ではありますが導かれました」
何を言ってるんだこの人は。いや、私の疲労した脳が見せる夢か、はたまた幻覚か。呆けた顔で彼女を見つめ、そのようなことを考えていた。
「幻覚ではありません。正確に言えば夢でもありません。ここは本当に存在する空間なのです」
口に出していないはずだが、彼女は私の疑問に丁寧に答えてくれたようだ。私の心が読めるのだろうか。
しかしもって、この空間が実在する…全くもって信じがたい。私はただ眠りに落ち、夢を見ていただけではないのか。
「信じられないのも無理ありません」
私が考えるやいなや、その答えを述べてくれた。
やはり、彼女は心を読むことができるようだ。
「あなたが生活している世界と、ほんの少しだけ軸がずれている世界が無数に存在します。いわゆる、パラレルワールドというものです。この空間は、その世界同士の狭間に存在するのです」
突拍子もない話にいまだに私は口が開けずにいた。そんな私を見つけながら優しく微笑んだ彼女は、さらに説明を続けた。
「あなたの世界で起こったことが事実であるように、これからここで起こることも事実なのです」
私の世界で起こったこと…一番に浮かぶのはやはりカナの死についてである。それは紛れもなく事実だ。
「そうですか、こんなこともあるんですね」
ようやく開いた私の口は、なんともつまらない言葉を発した。
普通の人であるならば、もっとこう、驚きや恐れを孕んだ言葉を口にしそうだと我ながら思った。
再度周りを見渡してから、私は彼女に疑問をぶつけた。もちろん、言葉を発して。
「なぜ私はここに呼ばれたのでしょうか。もしかして、私は眠りについたのではなく、死んでしまったのでしょうか。それに、これから起こることって…」
平然を保ったふりをして言葉発したつもりだが、内心私は焦りや恐怖を抱いていたのかもしれない。もちろん、この非現実的な事象に対して。
そんな私を見透かしたように、彼女はかぶりを振りつつ、私の問いに対し答えてくれた。
「いいえ、あなたは死んでなどいませんよ。ここは、あなたが住む世界ではないですが、本当の現実なのですから」
「ここに呼ばれた理由は共鳴が起きたからです」
「共鳴?」
私が何と共鳴したのか。全く検討もつかず、悩んだ顔をしている私を見ながら、彼女は話を続けた。
「先ほど述べたように、この世界には無数のパラレルワールドが存在します。少しだけ他の世界と違うだけで、時間の流れであったり、存在している人間などは同じなのです。つまり、あなた自身もその世界の数だけ存在するのです」
突拍子もない話ではあるが、嘘ではないのだろう。現にこの謎めいた空間が夢でないとするならば、なんら不思議ではない。
私ではない私が存在する。となれば、なんとなく、ニケラさんの言わんとすることがわかった気がする。
「私は…別の世界の私自身と共鳴した、ということですね」
「話が早くて助かります」
ニケラさんはニコッとした笑顔で答えた。
「そうです。共鳴は別世界の同じ人物同士で稀に起きる現象です。いままでも生じたことがありました」
そうなのかと思いつつも、共鳴したからなんだというのか、それだけでここに来た意味はあるのかと、当然のことながら私は疑問を抱いた。
「最近、なにか感じた事はありませんか?」
「なにか、とはどのようなことでしょうか」
「例えば、経験したことがないはずの事象を、まるであなた自身が体験しているかのような不思議な夢を見た、とか」
ピンポイントで思い当たる節があった。カナと家庭を築いている、あの夢のことだ。
「今あなたの頭に浮かんだそれこそが、共鳴が及ぼしたことなのです。」
全てが繋がった。あの日見た夢は、この世界ではない別の世界の私自身だったのだ。
私とカナが結婚し、子供にも恵まれる幸せな世界。カナがこの世からいなくなってしまい、私一人で生きていく悲しい世界。
夢ではなく、どちらも現実として存在していたのだ。それが交差し、私の夢として現れたのだろう。
「あの、えっと…ニケラさん、ちょっと待ってください」
ここまでの話を聞き、疑問が浮かんだ。この世界なんて本当は存在しないのでは、などといったことはもはや考えていなかった。
「共鳴、別の世界の私同士が交差するというのは、なんとなく理解しました。ということは、別の私も、何かしら夢を見ていたのでしょうか」
私の見た夢は、私が幸せそうに家庭を築いていた世界だった。では、別の私が見た夢は…。
恐らくそれは幸せとは程遠い、とても悲しい夢として現れたことだろう。
「あなたが想像している通りです。別の世界のあなたは、あなたが最愛の人と永遠に別れることになってしまった悲しみの出来事を夢として見ていました」
私ではない、別の世界の私からすれば、幸せの真っ只中なのになぜこんな悲しい夢を見なければいけないのかと思ったことだろう。
その思いを考えると、私の胸が締め付けられるように痛かった。
そんな私を、ニケラさんは哀しそうな目で見つめ、一呼吸おいてからとうとうと話を続けた。
「共鳴は本来ならば起こるべきではないのです。同じ人物と言えど、別の世界の人間が干渉しあうことは良いことだとは言えません」
その通りだと私は思った。私の、私たちのケースの場合、どちらも悲しみを少なからず抱いたはずだ。
それならば、そんなことを知らずに生きていた方が良かったのではないかと思う。
「ですが」
私の考えを読んだのかよんでいないのかわからないが、思考を遮るようにニケラさんが話を続けた。
「あなたたちのようなケースの場合、私は共鳴が起きることは良いことだと思っています。あなたの場合、それに最も値すると私は思いました」
話す内容から察するに、共鳴の起こる原因は人によって様々なのだろう。私の場合という言葉に疑問を抱きつつも、私は話に耳を傾き続けた。
「あなたは最愛の人を亡くしてしまった。それを今も、そして未来永劫悔やみ続けるでしょう」
目蓋を閉じながらそう述べたにけらさんは、ゆっくりとその目蓋を開けた。
私を見つめるニケラさんの瞳が、私を不思議な気持ちへと導く。
包み込まれるような、優しく慈愛に満ちたその眼差しから、私は目を逸らすことができなかった。
「あなたは、最愛の人が亡くなってしまう運命を唯一背負った世界線に存在しているのです。
そして、共鳴が起こったもう一人のあなたは、最愛の人と離ればなれになることはなく、最期まで寄り添い合う運命の世界線にいるのです」
一番の幸せと一番の不幸。そうか、私の世界、私自身が最も不幸な私だったのか。
だから私は、この世で最も大切だった人をなくしてしまったのか。
しかしそれならば、私のいる世界以外ならば、カナは生きているのかもしれない。
そう思えただけでも私は涙が出そうになった。
「あなたの最愛の人に対する深い愛情、その愛情が今回の共鳴を引き起こしました。それは悪いことではないと私は思います」
紺碧色をしたニケラさんの瞳が、光を反射する湖面のようにキラキラと輝いている。
「あなたに共鳴が起こるのは今回で最後です。もちろん、違う世界のあなたにも」
ゆっくりと言葉を話すニケラさんの声には、優しい温かみを感じた。
「運命が引き合わせたあなたたちを、わずかな時間ですが引き合わせることができます。もしあなたがそれを望むのであれば」
「お願いします」
私は躊躇うことなく、答えた。
「分かりました。あなたなら迷うことなく答えると思っていました。あなたの優しい心を私は知っています」
ニケラさんは優しく微笑むと、祈るように手を合わせ、そっと目蓋を閉じた。
ふと目が覚めた。
眼前に広がるのは明らかに自室の光景ではないため、正しく言えば私はまだ夢の中のはずだが、それにしてはあまりにも現実味を帯びた感触があった。
先ほどまで見ていた夢の景色だと、私は暗い深海の底へ沈んでいった気がした。
しかし、この空間は広大で全体的に明るく、先ほどとはうってかわった景色だ。
周りを見渡すも何もなく、柔らかな白色の明るさで、なんとも心地が良い。
「ここは…どこなんだ?」
不思議な光景に驚く私の耳に人の声が聞こえてきた。
「ここは時の間です。いくつもの世界が交わる空間の狭間に存在します」
声のする方を見上げると、綺麗な紺碧色の瞳をした端正な顔立ちの女性がいた。
立っているのか浮いているのか分からない。髪型や服装は、絵画等でよく見られる天使そのものだった。
「私は時の間を管理しているニケラと申します。あなたたちはこの時の間に、わずかな時間ではありますが導かれました」
何を言ってるんだこの人は。いや、私の疲労した脳が見せる夢か、はたまた幻覚か。呆けた顔で彼女を見つめ、そのようなことを考えていた。
「幻覚ではありません。正確に言えば夢でもありません。ここは本当に存在する空間なのです」
口に出していないはずだが、彼女は私の疑問に丁寧に答えてくれたようだ。私の心が読めるのだろうか。
しかしもって、この空間が実在する…全くもって信じがたい。私はただ眠りに落ち、夢を見ていただけではないのか。
「信じられないのも無理ありません」
私が考えるやいなや、その答えを述べてくれた。
やはり、彼女は心を読むことができるようだ。
「あなたが生活している世界と、ほんの少しだけ軸がずれている世界が無数に存在します。いわゆる、パラレルワールドというものです。この空間は、その世界同士の狭間に存在するのです」
突拍子もない話にいまだに私は口が開けずにいた。そんな私を見つけながら優しく微笑んだ彼女は、さらに説明を続けた。
「あなたの世界で起こったことが事実であるように、これからここで起こることも事実なのです」
私の世界で起こったこと…一番に浮かぶのはやはりカナの死についてである。それは紛れもなく事実だ。
「そうですか、こんなこともあるんですね」
ようやく開いた私の口は、なんともつまらない言葉を発した。
普通の人であるならば、もっとこう、驚きや恐れを孕んだ言葉を口にしそうだと我ながら思った。
再度周りを見渡してから、私は彼女に疑問をぶつけた。もちろん、言葉を発して。
「なぜ私はここに呼ばれたのでしょうか。もしかして、私は眠りについたのではなく、死んでしまったのでしょうか。それに、これから起こることって…」
平然を保ったふりをして言葉発したつもりだが、内心私は焦りや恐怖を抱いていたのかもしれない。もちろん、この非現実的な事象に対して。
そんな私を見透かしたように、彼女はかぶりを振りつつ、私の問いに対し答えてくれた。
「いいえ、あなたは死んでなどいませんよ。ここは、あなたが住む世界ではないですが、本当の現実なのですから」
「ここに呼ばれた理由は共鳴が起きたからです」
「共鳴?」
私が何と共鳴したのか。全く検討もつかず、悩んだ顔をしている私を見ながら、彼女は話を続けた。
「先ほど述べたように、この世界には無数のパラレルワールドが存在します。少しだけ他の世界と違うだけで、時間の流れであったり、存在している人間などは同じなのです。つまり、あなた自身もその世界の数だけ存在するのです」
突拍子もない話ではあるが、嘘ではないのだろう。現にこの謎めいた空間が夢でないとするならば、なんら不思議ではない。
私ではない私が存在する。となれば、なんとなく、ニケラさんの言わんとすることがわかった気がする。
「私は…別の世界の私自身と共鳴した、ということですね」
「話が早くて助かります」
ニケラさんはニコッとした笑顔で答えた。
「そうです。共鳴は別世界の同じ人物同士で稀に起きる現象です。いままでも生じたことがありました」
そうなのかと思いつつも、共鳴したからなんだというのか、それだけでここに来た意味はあるのかと、当然のことながら私は疑問を抱いた。
「最近、なにか感じた事はありませんか?」
「なにか、とはどのようなことでしょうか」
「例えば、経験したことがないはずの事象を、まるであなた自身が体験しているかのような不思議な夢を見た、とか」
ピンポイントで思い当たる節があった。カナと家庭を築いている、あの夢のことだ。
「今あなたの頭に浮かんだそれこそが、共鳴が及ぼしたことなのです。」
全てが繋がった。あの日見た夢は、この世界ではない別の世界の私自身だったのだ。
私とカナが結婚し、子供にも恵まれる幸せな世界。カナがこの世からいなくなってしまい、私一人で生きていく悲しい世界。
夢ではなく、どちらも現実として存在していたのだ。それが交差し、私の夢として現れたのだろう。
「あの、えっと…ニケラさん、ちょっと待ってください」
ここまでの話を聞き、疑問が浮かんだ。この世界なんて本当は存在しないのでは、などといったことはもはや考えていなかった。
「共鳴、別の世界の私同士が交差するというのは、なんとなく理解しました。ということは、別の私も、何かしら夢を見ていたのでしょうか」
私の見た夢は、私が幸せそうに家庭を築いていた世界だった。では、別の私が見た夢は…。
恐らくそれは幸せとは程遠い、とても悲しい夢として現れたことだろう。
「あなたが想像している通りです。別の世界のあなたは、あなたが最愛の人と永遠に別れることになってしまった悲しみの出来事を夢として見ていました」
私ではない、別の世界の私からすれば、幸せの真っ只中なのになぜこんな悲しい夢を見なければいけないのかと思ったことだろう。
その思いを考えると、私の胸が締め付けられるように痛かった。
そんな私を、ニケラさんは哀しそうな目で見つめ、一呼吸おいてからとうとうと話を続けた。
「共鳴は本来ならば起こるべきではないのです。同じ人物と言えど、別の世界の人間が干渉しあうことは良いことだとは言えません」
その通りだと私は思った。私の、私たちのケースの場合、どちらも悲しみを少なからず抱いたはずだ。
それならば、そんなことを知らずに生きていた方が良かったのではないかと思う。
「ですが」
私の考えを読んだのかよんでいないのかわからないが、思考を遮るようにニケラさんが話を続けた。
「あなたたちのようなケースの場合、私は共鳴が起きることは良いことだと思っています。あなたの場合、それに最も値すると私は思いました」
話す内容から察するに、共鳴の起こる原因は人によって様々なのだろう。私の場合という言葉に疑問を抱きつつも、私は話に耳を傾き続けた。
「あなたは最愛の人を亡くしてしまった。それを今も、そして未来永劫悔やみ続けるでしょう」
目蓋を閉じながらそう述べたにけらさんは、ゆっくりとその目蓋を開けた。
私を見つめるニケラさんの瞳が、私を不思議な気持ちへと導く。
包み込まれるような、優しく慈愛に満ちたその眼差しから、私は目を逸らすことができなかった。
「あなたは、最愛の人が亡くなってしまう運命を唯一背負った世界線に存在しているのです。
そして、共鳴が起こったもう一人のあなたは、最愛の人と離ればなれになることはなく、最期まで寄り添い合う運命の世界線にいるのです」
一番の幸せと一番の不幸。そうか、私の世界、私自身が最も不幸な私だったのか。
だから私は、この世で最も大切だった人をなくしてしまったのか。
しかしそれならば、私のいる世界以外ならば、カナは生きているのかもしれない。
そう思えただけでも私は涙が出そうになった。
「あなたの最愛の人に対する深い愛情、その愛情が今回の共鳴を引き起こしました。それは悪いことではないと私は思います」
紺碧色をしたニケラさんの瞳が、光を反射する湖面のようにキラキラと輝いている。
「あなたに共鳴が起こるのは今回で最後です。もちろん、違う世界のあなたにも」
ゆっくりと言葉を話すニケラさんの声には、優しい温かみを感じた。
「運命が引き合わせたあなたたちを、わずかな時間ですが引き合わせることができます。もしあなたがそれを望むのであれば」
「お願いします」
私は躊躇うことなく、答えた。
「分かりました。あなたなら迷うことなく答えると思っていました。あなたの優しい心を私は知っています」
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