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第8章 伊402、最終決戦へ
第8-4話 フェドの全力とアルバンの誤算
しおりを挟む「YES! 全弾Hit!
フェド、凄い照準デスっ!」
「……よしっ」
フィルの主砲一斉射でイオニ達を狙っていたエルダードラゴンを撃墜したことを確認し、拳を握る僕。
「す、凄いけど敵の数が多すぎるわよ!?」
伊402を狙っていたエルダードラゴンは倒したものの、上空には100体を超えるレッドドラゴン、ブルードラゴンが舞っており、海中にはシーサーペントの気配も感じる。
レヴィン皇国の方角へ向かおうとするドラゴンもおり、危機は全く去っていない。
「まかせて、セーラ……僕の切り札を出す!!」
22隻のフレッチャー級が描く魔法陣のせいなのか、大地に魔力が宿ると言われるレヴィン皇国の近くだからなのか、僕たちの周りには膨大な魔力が漂っている。
飛躍的に増大した僕の魔力と合わせれば、あの究極魔法もっ!
「フィル! 僕に君の全火器を操作させて!」
「Yes、Sir! You have control!」
僕の指示に、サムズアップで答えるフィル。
「イオニ、怪我はない?
14㎝単装砲と機銃のコントロールを僕に託してくれる?」
イオニに通信魔法を繋ぐと、少し照れたような彼女の声が聞こえた。
『う、うんっ! わたしも殿下も無事だよっ!』
『えへへ……助けてくれてありがとう。 かっこよかったよ♡』
「……アンタ、早くしなさいよ」
『ふおおっ!? 全火器の操作をかんちょ~に移譲!』
氷のようなセーラのツッコミを受けながら、火器の操作権限を渡してくれるイオニ。
「最後に、ミカさんもお願いします!」
『おう! おぬし……なにやら面妖な事を考えておるな?』
ミカさんのツッコミに苦笑しながら、僕はゆっくり目を閉じる。
「探査魔法……マルチロック!」
ブワン!
僕の視界に、周囲10㎞四方をカバーした仮想フィールドが出現する。
フィールド内を動きまわるレッドドラゴンにシーサーペント。
マルチロックの魔法は、モンスター達のレベルと脅威度を瞬時に判断し、赤黄青の三色でランク付けしてくれるのだ。
多数の敵を同時に相手する事が増えてきてたので、こっそり開発していた正真正銘僕だけのオリジナル魔法である。
「エルダードラゴン4にはミカさんの35.6㎝砲……シーサーペント3にはイオニの酸素魚雷」
「レッドドラゴン38、ブルードラコン72……14㎝単装砲、5インチ単装砲連続発射モード!」
脅威度に基づき、イオニ達の火器を割り振っていく。
「よしっ!」
準備完了!
あとは僕の魔力量勝負である。
「うおおおおおおっ!」
「行くぞっ! ”究極全弾発射”!!」
ブワアアアアアアアアッ!
その瞬間、溢れんばかりの魔力が僕の全身からほとばしり、大砲の発砲音が辺りを満たした。
*** ***
「う、ウソでしょ……35.6㎝砲の連続発射ですって?」
ハイエルフの少女を抱いたまま、思わず立ち上がったセーラがあんぐりと大きな口を開けている。
セーラのリアクションも当然だろう。
ズドオンッ!
ズドオンッ!
数十秒の発射間隔が必要なはずの戦艦三笠の主砲が、数秒間隔での連続発砲を行っている。
ドドドドドド!
14㎝副砲の射撃に至っては、ほとんど機銃並み。
『ぬぬぅ! まさか氷系の魔法で砲身の強制冷却を?』
「わわっ!? 即応弾がキラキラ光って空中に浮いてるっ!?」
「Yes! フェド、ワンダフル!」
「くっ……目標殲滅まであと10斉射っ!」
イオニ達の歓声に答えている余裕はない。
30門近い大砲を冷やす氷雪魔法と次弾装填の制御。
普段の10倍近い魔力消費に思わず脂汗がにじむ。
だけど、僕の身体に周囲から魔力が集まってくるのを感じる。
これは……?
「ふみゅっ……がんばって、おにいちゃん」
目を覚ましたのか、ハイエルフの少女の小さな手が僕の方を向いている。
なるほど……彼女も力を貸してくれてるのか。
「頑張って、フェド!」
「フェドくんかんちょ~、いっけ~っ!」
「God bless you、フェドっ!」
『頼むぞ、フェド!』
彼女たちの声援が、僕に力をくれる。
「うおおおおおおっ!!」
出し惜しみは無しだ!
最後の仕上げとばかりにすべての魔力を叩きつける。
ドドドドドドッ!
伊402と三笠とフレッチャー。
3隻の艦から嵐のように伸びた火線は、全ての敵を叩き落すのだった。
*** ***
「ちっ、余計な事を」
キングアルバン1世号の艦橋で、忌々しげに舌打ちするアルバン。
彼の計画では、フェドのギフトたちが深刻なダメージを受けて動けなくなったところで”最終フェーズ”に移行、モンスター共を一掃する。
イレーネ姫と精霊どもは助けてやるが、連中のギフトは自沈させ、助けた見返りとしてフェドを頂くつもりだった。
「……まあよい、どのみち我々の作戦が成功すれば連中など物の数ではない」
「キユー、やれっ!」
「はっ!!」
ブワン!
キユーの手のひらから、小さな魔力球が撃ち出される。
アルバンの計画は最終段階を迎えようとしていた。
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