追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる

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第8章 伊402、最終決戦へ

第8-1話 突然の遭遇

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「ううっ……フェドくんとセーラちゃん、大丈夫ですかね?」

「レヴィン女王は全面協力を約束してくれた」
「帝国はほぼ全ての戦力をこの戦いに連れてきているし、フェド君とセーラ君の練度なら問題ないさ」

「は、はいっ!」

「それより、伊402と晴嵐は大丈夫か? 私の魔力はフェド君には遠く及ばないぞ?」

「問題ありません! フェドくんかんちょーにチャージしてもらった分がまだ残ってますし、帝国海軍の燃費は世界一なんですよ!」

「ふふっ、そうか」

 ふんす、と鼻息荒くこぶしを握るイオニの様子に柔らかな笑みを浮かべるイレーネ。

 フェドとセーラが”特殊任務”に就いてから3時間近く……オーベル帝国艦隊を先頭にした三国連合艦隊は14ノットの巡航速力でアビスホールのある魔の海中心領域を目指していた。

 既に陸地から100㎞以上離れている。
 視界に映るのは360度青い海と空だけだ。

(レヴィン女王と私の推測が確かなら……)

 あのギフトたちの中には。
 イレーネは鋭い目つきで帝国艦隊を見据える。

 22隻の駆逐艦は紡錘陣形をとり、伊402と三笠のはるか前方に布陣している。

 フェドとセーラが証拠を押さえ、レヴィン女王が”切り札”を使うことが出来れば、アルバンの暴走を止められるはずだ。

「……ん? これは?」

 辛抱強くフェドたちの帰りを待つイレーネ。
 その時、甲板に立つイレーネは僅かな異変を感じる。

 流れる潮風に僅かな魔力のひずみを感じるような……?


 ***  ***

 ーーー同時刻、レヴィン皇国皇宮

「じょ、女王陛下!、御瞑想中の所失礼いたします!」
「大変な事態が起きました!」

 最上階にある女王の間。

 ホワイトマテリアルで作られた玉座に座り、祈りを捧げていたレヴィン女王のもとに侍従長が駆け込んでくる。

「……わたくしの方でも感じております」
「これは30年前の大災厄の時と同じ」

「まさか、新たなアビスホールが出現したのでしょうか!?」

 30年前に突如現れたアビスホール。
 その余波で皇国に大きな被害が出たのだ。

 過去を思い出したのか、顔面蒼白になる侍従長。

「落ち着きなさい侍従長」
「まずは皇立魔導研究所に連絡、近衛師団からも選りすぐりの術者を集めなさい」
「わたくしもレヴィンセントラルに向かいます」

「はっ! 承知しました!」

 敬礼もそこそこに、女王の命令を遂行すべく駆け出していく侍従長。
 その様子を見ながら、女王はゆっくりと玉座から立ち上がる。

(イレーネ姫から聞いたアビスホールの様子には特段おかしなところはなかった……まさかこれは!)

 最悪の事態に思い至るレヴィン女王。

(いざとなれば、”あれ”を使うべきでしょう)

 レヴィンセントラルの奥に封じられた皇国の秘宝……。
 覚悟を決めた女王は、聖地に向かう準備を始めるのだった。


 ***  ***

「ば、馬鹿な! なぜこんな近海に!」

「で、殿下! あれって魔の海で見た……黒い球!」

 伊402の甲板に立ち尽くすイレーネとイオニ。

 異変は突然現れた。
 紡錘陣形を組んでいた帝国の駆逐艦群が陣形を変えたと思ったとたん、突如空が暗くなり、上空に漆黒の密雲が出現した。

 その雲を割って降りてきたのは……。
 直径数百メートルの暗黒球。

 アビスホールと呼ばれた魔の海領域の中心で彼女たちが遭遇した、全てを飲み込む漆黒の災厄だった。
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