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第6章 帝国の野望と変わる世界
第6-1話 魔法皇国レヴィン
しおりを挟む「なるほど……西方諸国ではより”進んだ”ギフトが落ちて来るとは聞いていましたが……」
「フェド殿はこれほどのギフトをブリーディング (機械使役)されたのですな、素晴らしい」
工房長であるハイエルフの老技術者さんが、見事な白髪をたなびかせながら称賛の声を掛けてくれる。
2メートルを超える身長なので、僕からは見上げるような形となる。
「い、いやぁ……なんとなく出来てしまっただけで、正直内部構造はさっぱりなんですよね」
「実際の操作はイオニ達に任せっきりで……」
思わず頬を掻きながら謙遜してしまう。
実際に魔力タンクだしね……最近はリモートコントロール魔法も使うようになったけど。
ここは港にほど近い工場地帯。
レヴィン皇国魔法技術の粋を集めた研究所や工房が立ち並んでおり、長期航海であちこち傷んだ伊402や晴嵐シリーズのオーバーホールに訪れたのだ。
「いやいや、いくら精霊たちの力を借りたとはいえ……これほど複雑なギフト、潜水艦に飛行機でしたか?」
「それを同時に動かすなど、我々ハイエルフの魔法使いの魔力量でもなかなか厳しいですぞ」
「それに……」
「それに?」
工房長さんの蒼い両目がきらりと光る。
「どうやらまだまだ向上の余地がおありの様子……どうです? 我らレヴィン皇国技術工廠の総力を挙げたブートキャンプに参加しませんかな?」
「えっ?」
ざざざっ……
「えっえっ?」
気が付くと、魔法装置の影から数十人の技術者たちが現れ僕を取り囲んでいる。
若い男女、壮年の男性など背格好はまちまちだが、共通するのは皆さんハイエルフだという事と……異様な目のきらめき。
あの目は見たことがあるぞ……マッドな魔法研究者の実験動物を見る目だ!
「人間族ではありえない魔力量と特異なブリーディング……実験もとい、強化しがいがありそうです!」
がばっ!
「ぎゃ~っ!?」
逃げる間もなく僕は大勢の技術者たちに担ぎ上げられ……皇国技術工廠ブートキャンプなる怪しげな儀式に放り込まれたのだった。
*** ***
「ほえ? なんか今フェドくんかんちょーの悲鳴が聞こえたような?」
屋台で買った七色に光るりんご飴のようなものを舐めながら、空を見上げるイオニ。
「あたしは聞こえなかったわよ? 気のせいでしょ」
「それにしてもこの”まーまん”とやらの串焼き……味は美味しいけど肉の色が真っ青ってのは、いささか食欲が削がれるわね」
街中の屋台で買ったマーマンの串焼きにかぶりつきながら、少しだけ顔をしかめるセーラ。
伊402と晴嵐の本格修理をフェドに任せ、イオニとセーラはレヴィンの街のそぞろ歩きとしゃれこんでいた。
「ふふっ、この飴の中に入ってる果物も得体が知れないけどね」
コリコリと歯ごたえが良すぎる謎の果肉を噛みしめながら、イオニの視線は街ゆく人々を追う。
「はいえるふ、かぁ……みんなでっかいねぇ」
人々の背格好を見て、あらためて驚きの声を上げるイオニ。
殆どがハイエルフで、その身長は2メートルを超える。
ほぼ全ての人たちが白を基調とした僧衣のようなものを着ているので、飛行服やセーラー服姿の二人はとても目立つ。
興味深げな視線をよこす人もいるが、基本的にハイエルフは奥ゆかしい性格なのか声を掛けられることは少なかった。
ある意味日本人っぽい反応に、懐かしさすら覚える。
「ううっ、この人ごみの中に居たら、あたしなんて童女じゃない……ちょっとイオニ、はぐれないでよね」
「? セーラちゃんは通常でも童女だよ?」
げしっ!
「あいたっ!?」
余計な一言を口走り、身長140センチ未満と元の世界基準でもちっちゃいセーラに蹴りを入れられるイオニ。
ちょっと短気な相棒をなだめようとイオニが口を開いた瞬間、人ごみの中から声が掛けられる。
「あいやそこの二人……伊402と晴嵐じゃな?」
「へっ!?」
「えっ!?」
驚きの声を上げるイオニとセーラ。
視線の先に立っていたのは、艶やかな黒髪をそよ風になびかせ、
深蒼の着物に朱色の下駄という、純和風な服装に身を固めた妙齢の女性だった。
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