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第4章 晴嵐宅配便
第4-4話 激化する”運送”競争
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「やぁやぁ、待たせてしまってすまないね」
「ジェント運輸の社長の立場だけならともかく……皇族という肩書も面倒なものだね」
迎賓館から共和国首脳に見送られ、僕たちの元に戻って来たイレーネ殿下はいささか疲れた表情をしている。
「その分こちらはのんびりさせてもらいましたので……色々あったみたいですね?」
「ああ。 ”皇族”としての仕事は形式的な物ばかりだから構わないのだが、”社長”としては少々厄介でね」
”社長”としての顔に戻ったイレーネ殿下は、形の良い眉をひそめる。
大胆不敵な殿下にしては珍しい表情だ。
「まあそのあたりは食事をしながら話そう」
「……聞いたぞ、私が迎賓館で大して美味くもない退屈な食事を採っている間、君たちは街の飯屋を荒らしまわっていたそうじゃないか」
「はうっ!? いやその殿下、これは絶対に負けられない戦いと言いますか……」
「ま、それにしてもアンタは食べ過ぎだったかもね」
「へうっ!?」
どうやらイオニの健啖ぶりは、迎賓館の中にまで届いていたようだ。
フレッチャー級駆逐艦フレッチャーの精霊フィルと意気投合したイオニ達。
緒戦のカニ食い競争が在庫の枯渇で引き分けになった後、連日街のレストランで大食い対決を繰り広げているのだ。
結果、お昼前に品切れになるお店が続出、街のレストラン連名で”ギフトの精霊さんはおかわり2回まで”のルールが指定され今に至る。
ちなみに、勝負は5戦5分けで全く勝負がついておらず、僕の財布が寒くなっただけである。
「はっはっは! 流石だなイオニ君セーラ君。
向こうの”精霊”とも出会えたようだね」
「はいっ殿下。 少し生意気なところもありますけど……気持ちのいい子ですっ」
僕たちは眩しい日差しが降り注ぐ大通りを歩きながら、イレーネ社長を海鮮レストラン、クラブ・クラブへ案内するのだった。
*** ***
「カイザーファーマと”競争”ですか……?」
お店の人に「おかわりは2回までですからね!」と涙目で念押しされるなど、些細なハプニングはあったものの、僕たちは海鮮レストランでカニ料理を堪能していた。
イレーネ社長が聞いた”厄介な事”。
それは、僕たちジェント運輸とライバルであるカイザーファーマの間で”競争”を行うという内容だった。
「ああ。 君も知っての通り、レイニー共和国は海産物だけではなく肥沃な大地に恵まれており農業も盛んだ」
「いままでは陸続きの隣国への輸出が中心だったが、海を越えた各国への輸出を増やしたいとの政府の意向があってね」
「ウチとカイザーファーマ、どちらを主契約先にするか”競争入札”させて決めたいとのことだ」
「正直、そこまで欲しい案件でもないのだが、カイザーファーマ側の担当者がやけに乗り気でね……国同士の付き合いもあって断り切れなかったというわけだ」
「とりあえず数か月間、カイザーファーマの”ギフト・フレッチャー”と、イオニ君の伊402で”運送競争”をすることになってしまった……面倒な事に巻き込んで、すまないね」
「特別手当は弾むし、別に勝たなくてもいいから気楽にやってくれたまえ」
やれやれと肩をすくめるイレーネ社長。
ジェント運輸は官営だし、イレーネ社長の敏腕により財務状態も良好だ。
大きな利益が見込めるとはいえ、わざわざ世界最大級の運送ギルドであるカイザーファーマと競う必要は無いという事か。
だが、”競争”に意欲的な子がここに2名。
「任せてください殿下!! IJNとUS Navyは永遠のライバルっ! IJNの誇りにかけて勝って見せますっ!
肉ばっかり食って肥大してるヤンキー牛娘には負けません!!」
頬を紅潮させたイオニが、その豊満な胸を強調するように立ち上がる。
「イオニあんた……よっぽどフィルに胸囲で負けたのが悔しいのね……ちっ、持てる連中はいいわね」
「……こほん。 イオニの言う通り、あたしたちの誇りに掛けて負けられませんし……勝てばアメちゃん製の最新電探を貰える約束になってますから、やってみる価値はあるかと」
「業務計画には影響を出しませんので……ぜひやらせてくださいっ!」
確かにフィルはイオニを上回るプロポーションと長身の持ち主。
天上の会話に呪いの視線を送っていたセーラだが、彼女もやる気満々のようだ。
「そ、そうか? やる気があるのは結構だが、くれぐれも無理しないようにな」
「「はいっ!!」」
「……えっと、殿下。 僕も全力でサポートします」
かくして、ジェント運輸所属伊402はカイザーファーマ所属フレッチャーと、魔の海の覇権を掛けて競うことになったのだ。
「ジェント運輸の社長の立場だけならともかく……皇族という肩書も面倒なものだね」
迎賓館から共和国首脳に見送られ、僕たちの元に戻って来たイレーネ殿下はいささか疲れた表情をしている。
「その分こちらはのんびりさせてもらいましたので……色々あったみたいですね?」
「ああ。 ”皇族”としての仕事は形式的な物ばかりだから構わないのだが、”社長”としては少々厄介でね」
”社長”としての顔に戻ったイレーネ殿下は、形の良い眉をひそめる。
大胆不敵な殿下にしては珍しい表情だ。
「まあそのあたりは食事をしながら話そう」
「……聞いたぞ、私が迎賓館で大して美味くもない退屈な食事を採っている間、君たちは街の飯屋を荒らしまわっていたそうじゃないか」
「はうっ!? いやその殿下、これは絶対に負けられない戦いと言いますか……」
「ま、それにしてもアンタは食べ過ぎだったかもね」
「へうっ!?」
どうやらイオニの健啖ぶりは、迎賓館の中にまで届いていたようだ。
フレッチャー級駆逐艦フレッチャーの精霊フィルと意気投合したイオニ達。
緒戦のカニ食い競争が在庫の枯渇で引き分けになった後、連日街のレストランで大食い対決を繰り広げているのだ。
結果、お昼前に品切れになるお店が続出、街のレストラン連名で”ギフトの精霊さんはおかわり2回まで”のルールが指定され今に至る。
ちなみに、勝負は5戦5分けで全く勝負がついておらず、僕の財布が寒くなっただけである。
「はっはっは! 流石だなイオニ君セーラ君。
向こうの”精霊”とも出会えたようだね」
「はいっ殿下。 少し生意気なところもありますけど……気持ちのいい子ですっ」
僕たちは眩しい日差しが降り注ぐ大通りを歩きながら、イレーネ社長を海鮮レストラン、クラブ・クラブへ案内するのだった。
*** ***
「カイザーファーマと”競争”ですか……?」
お店の人に「おかわりは2回までですからね!」と涙目で念押しされるなど、些細なハプニングはあったものの、僕たちは海鮮レストランでカニ料理を堪能していた。
イレーネ社長が聞いた”厄介な事”。
それは、僕たちジェント運輸とライバルであるカイザーファーマの間で”競争”を行うという内容だった。
「ああ。 君も知っての通り、レイニー共和国は海産物だけではなく肥沃な大地に恵まれており農業も盛んだ」
「いままでは陸続きの隣国への輸出が中心だったが、海を越えた各国への輸出を増やしたいとの政府の意向があってね」
「ウチとカイザーファーマ、どちらを主契約先にするか”競争入札”させて決めたいとのことだ」
「正直、そこまで欲しい案件でもないのだが、カイザーファーマ側の担当者がやけに乗り気でね……国同士の付き合いもあって断り切れなかったというわけだ」
「とりあえず数か月間、カイザーファーマの”ギフト・フレッチャー”と、イオニ君の伊402で”運送競争”をすることになってしまった……面倒な事に巻き込んで、すまないね」
「特別手当は弾むし、別に勝たなくてもいいから気楽にやってくれたまえ」
やれやれと肩をすくめるイレーネ社長。
ジェント運輸は官営だし、イレーネ社長の敏腕により財務状態も良好だ。
大きな利益が見込めるとはいえ、わざわざ世界最大級の運送ギルドであるカイザーファーマと競う必要は無いという事か。
だが、”競争”に意欲的な子がここに2名。
「任せてください殿下!! IJNとUS Navyは永遠のライバルっ! IJNの誇りにかけて勝って見せますっ!
肉ばっかり食って肥大してるヤンキー牛娘には負けません!!」
頬を紅潮させたイオニが、その豊満な胸を強調するように立ち上がる。
「イオニあんた……よっぽどフィルに胸囲で負けたのが悔しいのね……ちっ、持てる連中はいいわね」
「……こほん。 イオニの言う通り、あたしたちの誇りに掛けて負けられませんし……勝てばアメちゃん製の最新電探を貰える約束になってますから、やってみる価値はあるかと」
「業務計画には影響を出しませんので……ぜひやらせてくださいっ!」
確かにフィルはイオニを上回るプロポーションと長身の持ち主。
天上の会話に呪いの視線を送っていたセーラだが、彼女もやる気満々のようだ。
「そ、そうか? やる気があるのは結構だが、くれぐれも無理しないようにな」
「「はいっ!!」」
「……えっと、殿下。 僕も全力でサポートします」
かくして、ジェント運輸所属伊402はカイザーファーマ所属フレッチャーと、魔の海の覇権を掛けて競うことになったのだ。
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