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第3章 初めての空
第3-4話 新しいギフトを受け取りに行こう(後編)
しおりを挟む「ども~、イレーネ殿下から伺っとります~」
「うちには高レベルの”ブリーダー”がおらんさかい、たすかりますわ~」
「こちらに置いとりますので、見てってください~」
数日後、リベラ公国の港に到着した僕たちは、殿下の紹介状を持って国営のトランスポーターギルドを訪ねる。
のんびりとしたおばちゃんギルドマスターは、上機嫌で僕たちをギルドの裏手にある倉庫に案内してくれた。
雑貨や食料が積まれた倉庫の片隅に、長さ20メートルほどの筒状の金属棒が置かれている。
よく見ると、筒は2重になっており……先端に可動式の蓋のようなものが付いている。
「おおっ! 独逸純正のシュノーケルくんだよ!」
「この大きさなら多分、艦橋横に取り付けられると思うけど……」
「電路も付け替えないといけないわね……カタパルト用の余剰回路を使えば大丈夫じゃない?」
「それにしてもさすが独逸……バリの仕上げが完璧ね」
”シュノーケル”の姿を見つけるなり、たたたっと走り寄るイオニ。
セーラはというと、シュノーケルの工作精度に興味津々のようだ。
やっぱり、リベラ公国で見つかった”ギフト”はシュノーケルで間違いないみたいだ。
イオニ達がコイツの正体を知っているようなので、ブリーディングしなくてもいいように思われるが、ブリーディングで”解析”しておかないと、魔力で動かせないのだ。
「イオニ、セーラ、”ブリーディング”を使うから、少し離れてもらえるかな?」
「はいは~い」
「ん、了解」
「よし……ブリーディング (機械使役)」
ポアアアアアアッ
魔法の光が、金属の筒を包む。
潜水艦に比べると簡易な構造なのか、すぐに”使い方”が頭の中に浮かぶ。
「ふむふむ……筒を伸ばして水上に浮かべ……ディーゼルエンジンに吸気する……浸水しないように防水弁の操作には注意」
「オッケー、防水魔法を掛けとけば、浸水を気にする必要はないよ」
「おおう、フェドくんかんちょ~の反則魔法がまた出た!」
「……魔法って本当に便利よね」
”解析”を終えた僕に感心しきりのふたり。
まあ、僕たちの魔法はこういった補助用途には強いけど、凶悪モンスターと渡り合うには威力が足りないんだよね。
解析が終わったことをギルドマスターに報告し、代金代わりの荷物を渡すと……港横の工房を借りてさっそく伊402にシュノーケルを取り付けるのだった。
*** ***
「うおおおおっ! かっこい~!」
「わたしの伊402が遣独潜水艦みたいにパワーアップしたぞっ!」
「はぁ~っ、やっぱうちらのなんちゃって水中充電装置とは違うわね……吸気圧が段違いだわ」
司令塔の後部、25㎜3連装機銃の脇に装着されたシュノーケル。
僕の魔力を使ってスムーズに昇降できることを確認した後は、海に出て試運転を行う。
「深度二○……ディーゼルエンジンへの吸気異常なし」
「行くよ……前進全速19ノット!」
「了解……前進全速19ノット!」
イオニの号令と共に、ディーゼルエンジンの音が大きくなる。
電気?で航行するのに比べ、圧倒的な力強さとスピード感。
「うん! 過負荷運転も問題なし! エンジンくんも絶好調~!!」
「ふふっ! これで厄介な護衛艦艇から逃げられるよ~♪」
「……ま、フレッチャー級からは逃げられないけどね」
「それを言わないでよセーラちゃん!」
「このスピードがあればっ、回り込んでわたしの魚雷で返り討ちだよっ!」
シュノーケルが予定通りの性能を発揮したのが嬉しいのか、ご機嫌なイオニ。
エンジンが回っていると艦内の電気使用制限も無くなるのでありがたい。
はしゃぐ彼女たちを微笑ましく見つめながら、昼食のパイを焼くのだった。
「よし、今度はあたしの晴嵐だからね!」
「ふふっ……やっと空に戻れるのかぁ……楽しみ!」
喜びを隠し切れないセーラの声が背後から聞こえる。
ジェント王国に戻れば、いよいよ”晴嵐”が復活するのだ。
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