追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる

文字の大きさ
上 下
18 / 62
第3章 初めての空

第3-2話 フェド、晴嵐を修理する

しおりを挟む
 
「今度こそ……”コンバージョン”!」

 頭に叩き込んだ”設計図”を思い浮かべながら、物質変換の魔法を使う。
 成功のカギは、どれだけ鮮明に完成後の姿を思い浮かべられるか……ワンオペ・トランスポーター時代に鍛えられた僕の妄想力を発揮するときっ!

 なぜかすごく悲しくなってきたが、数十回の失敗を経て、修正点は分かっている……!

 パアアアアアッ

 ”マテリアル”の組成を組み替える、物質変換魔法の光が粘土色のブロックを包み…・・・。

 カッ!

 光が消えると共に、マテリアルは精緻な工作が施された、1本の棒へと姿を変える。

「すごっ! このできばえ、今度こそ完璧じゃないっ?」

 僕の隣で、セーラが飛び上がって歓声を上げる。

 ぴょんっ!と上下に揺れるツインテールはとてもかわいいが、胸元はその動きに追従してくれるはずもなく……。

 神様って残酷だよね。
 伊402の整備を手伝っていて、ここにいないイオニのと比較して世の中の無常を思う僕。
 セーラに幸あれ。
 僕はどっちも好きだから。

「……フェド~? アンタ何か失礼なことを考えてない?」

 ぎくっ!

 物質変換魔法の会心の出来に、調子に乗ってヨコシマなことを考えていたら、セーラにジト目で睨まれてしまった。

「え、えっと……さっそく晴嵐に付けてみようよ!」
「ミスリル銀を配合したから、強度も軽さも抜群だよ!」

「……しかたないわね、追求は今度にしてあげる」
「急ぐわよ、フェド!」

 そういうセーラも待ちきれないのだろう。
 出来上がった”プロペラシャフト”を片手に持つと、僕の手を引いて外へと駆け出す。

 工房代わりに借りている倉庫の外には、伊402の格納庫から取り出された晴嵐が緑の翼を休めている。

 超々ジュラルミンという、ミスリル銀をしのぐ強度を持った合金で作られた滑らかな機体が、柔らかな日差しにきらりと輝く。

 何度見ても綺麗なギフトだよなぁ……晴嵐の向こうには、伊402の巨体が気持ちよさそうに浮かび、外壁に取り付いたイオニがはげた塗装を塗りなおしているのが見える。

「よし、シャフトを取り付けるわよ……」

 晴嵐の傍らには、取り外された”エンジン”が台に置かれている。
 複雑に絡み合ったシリンダーやケーブルは、芸術作品のように細かいつくりだ。

 ……壊れたときには僕が修理するんだよな……せめて外装だけでもコンバージョンできるように、姿形を記憶する。

「……ごくっ」

 かちん

 思わず息をのんだセーラの前で、完璧に成型されたプロペラシャフトがエンジンに開いた穴にぴったりと納まる。

「……ふむふむ、シャフト本体のたわみもなし、遊びも完璧ね……凄い!」

 プロペラシャフトの先端に、動作確認用の小さなプロペラを取り付けたセーラは、そっとプロペラに手を触れる。

 カラカラカラ……

 何の抵抗もないかのように、回り続けるシャフトとプロペラ。

「完璧よっ!」
「空技廠 (先端航空技術を研究していた軍の部署)の試作品以上ね!」
「さすがフェド、本当にありがとう!!」

 よほどうれしいのか、いつもは強気なまなざしも柔らかく弧を描き、目じりには涙すら浮かんでいる。
 ……やっぱりセーラもかわいいなぁ、彼女たちの幸せのために、もっともっとがんばるぞ!

 改めてそう心に誓っていると、ダークスーツの上に白衣というアンバランスかつやけにお似合いな格好をした女性が僕たちの工房にやってきた。

 イレーネ社長だ。

「素晴らしいな……V型12気筒レシプロエンジン……しかも水冷か」
「一般的なギフトの30年先を行っているね」

「おっとすまん、思わず見とれてしまった」
「君達に面白い話を持ってきたぞ……イオニ君も呼んで、こいつを読んでくれたまえ」

 そういってイレーネ社長が取り出したのは一通の封筒。

 なんだろう?
 思わずセーラと僕は顔を見合わせるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

処理中です...