追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる

文字の大きさ
上 下
15 / 62
第2章 新生トランスポーターの新天地

第2-8話 恐るべき天敵?出現

しおりを挟む
 
「あいたたた……どうしたの、イオニ?」

 急速潜航!

 そう叫んだイオニの手で艦内に通じる昇降筒に放り込まれた僕、したたかに打ちつけた腰をさすりながら立ち上がる。

「ベント開け! ダウントリム30……急いでセーラちゃんっ!」
「任せなさい! 重量物を艦首に移動!」

 イオニに僕の問いに答える余裕はなく……必死の形相で潜航準備を整えていく。

 ゴゴゴゴッ……

 鈍い音を立てながら、艦内各所に積まれた報酬代わりの魔導水晶の原石 (リトルアイランドの名産で、魔法装置などに使われる)が艦首方面に移動していくのが見えた。

 どうやら、艦の先っぽを重くして潜航速度を速める狙いみたいだが……説明を求めずにイオニの指示に従うセーラの様子は、さすが軍人といったところか。

 僕も強化魔法で全身の筋力を強化し、原石の移動を手伝う。

 そのかいあって、伊402の巨体はどんどん水中に潜っていく。

「深度50……60……70……懸丁装置作動、無音潜航!」

 水深70メートル……陸地にほど近いこの辺りではほとんど海底の深さだ。
 イオニの号令と同時に、エンジンがカットされ、不気味なほどの静寂が辺りを包む。

 結局何が起きたの?
 僕が口を開こうとすると、イオニが身体を寄せてきてそっと人差し指で僕の唇を押さえる。

 ぷにっ……柔らかい身体の感触と、しっとりとした彼女の指先に、思わず赤面してしまう。

 全くこんな時までアナタは……そう言いたそうな顔をして、セーラも近づいてきた。
 艦橋直下の大部屋である、発令所に掲げられた時計の秒針が動く音すら聞こえそうな静寂の中、
 ひそひそ声でイオニが”敵”の正体を告げる。

「……あのね、電探 (レーダー)波の照射を感知したの……」
「たぶん、駆逐艦……しかもアメちゃん最新型の……」

「……アンタがそんだけ慌ててるからまさかと思ったけどやっぱりか……」

 真っ青な顔をしたイオニの説明に、心当たりがあるのかセーラが天井を仰ぐ。
 僕には何のことかさっぱり理解できないけど……深刻な表情を浮かべたセーラが、僕の上着の袖を掴む。

「ねえフェド、アンタの他に”こんなの”を動かせる奴っているの?」

「”ギフト”のこと? いや、”潜水艦”や”飛行機”なんて、伊402の他に見つかった記録はないけど……」

 セーラの問いに答えながら、発令所の本棚から”名鑑”を取り出す。
 解析が済んだギフトは”統括機関”に登録する必要があり、登録済みのギフトがこの名鑑に載っている。

 僕がこないだ申請した伊402と晴嵐までが反映されたである。

 念のため、”船”のページを開くけど……伊402のような潜水艦は他に存在せず、最大の物でも全長100メートルほどの外輪船だった。

「ふ~ん、いないのね……でも、イオニの言葉が本当なら……」

「ひっ!? 来たっ!」

 イオニが小さくおびえた声を出す。
 同時に、海中に鈍い爆発音が響き……しかもそれが連続する。

 ズン……ズン……ドオウンンッ!!

「きゃう!?」

「くっ……近いっ?」

「任せてふたりとも! 探査魔法!」

 珍しく取り乱すイオニとセーラを落ち着かせようと、探査魔法を発動させる。
 周りで何が起きているか探るのだ。

「丸い……筒のようなものが海中に落ちてきて……爆発している?」

 どうやら、謎のギフトは”船”らしい……たくさんの”筒”をばらまいて……こちらを狙っているわけではなさそうだけど、広いで範囲で起こる爆発に、シードラゴンの反応が1つ、また一つと消えていくのを感じる。

 もしかして、シードラゴンを駆除している?
 だけどこの爆発の威力……伊402が積んでいる”魚雷”には遠く及ばないけど、現在使われている爆弾などと比べると破格の威力。

 ものの数分で、シードラゴンは全滅してしまったようだ。

「ああああ……飽和爆雷攻撃だぁ……先輩たちもみんなこれでっ」

「落ち着きなさいイオニ! あたしたちが狙われたんじゃないからっ!」
「……フェド、”敵”の姿を確認するわよ」
「安全深度から潜望鏡を伸ばすから、あの凄い魔法をお願い!」

 なにかのトラウマに触れてしまったのか、頭を抱えてしゃがみ込むイオニをセーラが元気づけている。

 僕は静かに頷くと、潜望鏡に”耐圧”、”拡大”の魔法をかける。

「深度20まで浮上して、潜望鏡を上げるよ……アレは?」

 限界いっぱいまで潜望鏡を伸ばし、少しだけ先っぽを海上に出す。

 拡大された僕の視界が捕らえたのは巨大な船。

 全長100メートルは優に超えているだろう。
 平べったい蒸気船でも、ゴテゴテとした外輪船でもないすっきりとしたシルエット。
 どこかロングソードを思わせるスマートな船体には1、2、3……5基もの大砲が積まれている。

 しかも、スピードが速いっ!?

 伊402の水上航行も速かったけど、それをはるかに上回る速度。
 時速50キロは出ているかもしれない。

 シードラゴンが全滅したことを確認したのか、この海域から立ち去ろうとしている。

「セーラ、こんな感じの船なんだけど……」

「な……うそでしょ!?」
「あたしにも見せてフェド!」

 船の特徴を伝えたところ、さっと顔色を変えるセーラ。
 僕は彼女と潜望鏡を交代する。

「あ……あ、艦種識別表を見る間でもないわ……」
「駆逐艦の……フレッチャー級ですって!?」

 思わず叫び声を上げるセーラ。
 ボトムランドにもたらされるギフト……そこに大きな変化が訪れようとしていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...