レベルアップしない呪い持ち元神童、実は【全スキル契約済み】 ~実家を追放されるも呪いが無効な世界に召喚され、爆速レベルアップで無双する~

なっくる

文字の大きさ
上 下
30 / 36

第30話 スキル辞典リーノを救う逆転の一手

しおりを挟む
 
「ふ~、終わった終わった……堅苦しい場所は肩がこるぜ」

 ばさっ

 レグナー公主催の晩さん会が終わり、控室に戻ってきたランはソファーに豪華なマントを脱ぎ捨てると、大きく伸びをする。

「お疲れ様、ラン……って、ととっ!?」

 いつも通りのランに、思わずいつものノリで返してしまったが、相手はアルベルト帝国の皇位継承者様だった。

 慌てて床に膝まづき、最敬礼の姿勢を取る。

「おいおい……やめてくれよリーノ」
「確かにオレは成人をもって帝国の皇位継承者へ正式に指名されたわけだが、我が父上は世界最強に頑丈でな……皇帝になるのはまだまだ先の話だよ」

「そんな畏まった態度を取られると、悲しくなっちまうぜ?」

「予定した行事はすべて終わったし、いい時間だから……抜け出して繁華街行こうや」
「かわいい獣人ちゃんもいるいい店があるって大臣から聞いたぞ」

「マジで!? ……って、いいのか?」

 世界最大国家の皇位継承者になったのに、相変わらず軽いノリのランに困惑してしまう。

「アルベルト家の掟筆頭! 遊びも仕事も手を抜くな、ってな?」

 がしっ!

「ととっ……へへっ」

 いつものようにハイタッチを交わし、エリザちゃんに見つからないようこっそり部屋の窓から外に出る。

「獣人ちゃんのいるお店かぁ……楽しみだけど、しっぽモフモフはしないから!」
「モフモフはもう、金輪際ララとしかしないって誓ったんだ!」

「……なんだよその妙な誓いは」

 ランと言葉を交わしながらも、頬が緩むのを抑えきれない。
 頼れる相棒は最強国家の皇太子様だった……昨日までの関係は変わらざるを得ないだろうと半分諦めていたのだ。

 いつも通りに接してくれる最高の親友と一緒に、僕は夜の街に消えていくのだった。


 ***  ***

「つーことで、もろもろの手続きがあるから来週にいったん帝国に戻らなきゃなんねーんだけど……ああめんどくせー」
「マスター! モルトソーダ割、濃い目で」

「僕も同じのを……少し薄めに」

 からん!

 ウィスキーグラスとボールアイスが軽やかな音を立てる。
 ”夜のお店”を堪能した後、僕とランはおしゃれなバーで2次会としゃれこんでいた。

 冒険の苦労話、ララやエリザちゃんのことまで……日付が変わっても、たわいのない話題は尽きることがない。
 何杯目かのウィスキーを飲み干したとき、ふとランが真面目な顔になる。

「そんで、マジな話なんだが……リーノ、オレと一緒に帝国に来てもらいたいんだ」

「激動の時代に備え、ずっと暖めていたことがあって……異世界とつながりを持ち、帝国でも有数の使い手になったお前に手伝ってほしい」
「つまりは次世代の育成……これが大事だと思うんだ」

 ここ数か月、冒険の合間に難しそうな本や書類を読み、考え込んでいる場面を何度も目撃した。
 ”帝国”の後継者の座に就くにあたり、色々悩み、考えていることもあるんだろう。

「もちろん! 親友として何よりランの相棒として手伝わせてもらうよ!」

「へへ、サンキュ!」

 ちんっ!
 何度目かの乾杯を交わす。

 詳しい話はまだ聞いていないけど、頭のいいランが長年考えてきた事が悪い話であるわけがない。
 教育か……冒険者か兵士の訓練でもするんだろうか?

 僕が帝国での新しい生活に思いをはせていると、打って変わってニヤリと悪い表情を浮かべたランが僕の肩を叩く。

「それで……バルロッツィ家のことだけどな?」
「証拠も集めたし、帝国に戻ったらオレの名前でマリノ王国に書簡を送る……まあ見てろよ?」

「??」

 世界最大最強国家、アルベルト帝国からの正式な書簡。
 ソイツが何をもたらすのか、その時の僕はまだ分かっていなかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

処理中です...