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第23話 リーノとふわふわ温泉(後編)
しおりを挟む「ふぅ……なんというか凄い目に遭ったよ……」
ララの大胆な”鑑定魔術”に目を回した僕。
慌てたララに介抱されながら、スキル進化の説明をしてもらった。
一生懸命説明してくれるララの背後にぷら~んとぶら下げられたアッカとキーロが気になったけれど……。
彼女の逆鱗に触れてしまったっぽいから仕方ないね!
ララの説明では、進化した”ホールドダウン”は、相手の能力を封じるだけじゃなく、自分に向けられた害意を無効化するらしい。
だからリーノちゃん (仮)をアレコレしようとしたグランスキュラは、無害なマスコットになったのか……。
なんとなくペットとしてノルド公国まで連れてきてしまったグランスキュラの事を思い出す。
ランと一緒に調べたのだけれど、グランスキュラとしての能力はそのままで、強力なティム魔術で”手懐けた”状態になっていた。
これからの冒険の役に立つスキルに進化したかもしれない!
……さて、なんで僕がこのように真面目な事を考えているかと言いますとっ!
現在僕がいるのはお城の中の客間の一つ。
手持ちかばんにタオルや下着を詰め込む。
この後ララと待ち合わせをしているのだ……そうっ、これからララと二人っきりで温泉、温泉に行くのである!
……ふわふわ温泉というのが良く分からないけど、ファンシーなこの世界のこと……ララに似合うとてもかわいい温泉に違いない。
室内に設置された姿見で入念に身だしなみを整えると、僕は待ち合わせ場所のバルコニーに向かった。
*** ***
「え、えへへ……リーノさんっ、お待たせしましたっ!」
「わっ……」
からんころん
軽やかな履物の音を響かせ、バルコニーにララが現れる。
「どうですかどうですか、この衣装……ナ・デナデの伝統衣装ですっ!」
くるり、と舞うように一回転したララが身に着けているのは、見たことのない衣装。
ワンピースとも違う、前合わせの上下一体となった服。
さらりとした肌触りのよさそうな布地には、赤、ピンクを基調にたくさんの花々が描かれ、目にも鮮やかだ。
腰の部分にはベルトというにはいささか太い布が巻かれ、ワンポイントのフラワーアクセサリーで留められている。
裾からちらちらとのぞく生足と、髪をアップに結い上げることによりあらわになった首筋が……正直とっても色っぽいです!
「凄く……すごくきれいでカワイイよ、ララ」
「まるで……天使の生まれ変わりみたい……」
「はうっ!?」
自然に口をついた僕の言葉に、顔を真っ赤に染めるララ。
「あ、あのあの……行きましょうか」
ぷにっ
ララのすべすべな手が繋がれる……彼女の暖かな体温を感じながら、僕たちは”ふわふわ温泉”があるという、お城の裏手に広がる街へと向かった。
「あっ、この衣装はYUKATAといって……これを着るときには下着を付けないのがマナーなんですっ!」
「帯を引っ張るとはだけちゃいますので、引っ張っちゃダメですよっ?」
「!?!?!?」
*** ***
「おおぉ、まさか混浴だとは……」
白壁の可愛い家々が並ぶ中心街を通り過ぎ、山にほど近い郊外。
ひときわ目立つ丸屋根の建物の裏手に、”ふわふわ温泉”は広がっていた。
ヘタレた僕は、「脱衣所」と札が掛けられた小部屋の中でモジモジしているのである。
観光ガイドブックで読んだ”温泉”とは、空の見える眺めの良い露天風呂。
隣の女湯とは、高い壁で仕切られてはいるものの、壁越しに彼女と言葉を交わすことは出来る……いやおうなしに膨らむ妄想にドキドキ!
……というイメージだったのだ。
それが、いきなりすっ飛ばして混浴とは!!
”その先”に踏み出せる可能性はあるものの、まだキスどまりの僕とララがいきなり愛の地平までイってもいいものか……。
童○丸出しの感想を抱く僕だが、あまり遅くなってララを待たせてもいけない……勇気を出して、浴場に続く引き戸を開ける……。
「えっ?」
僕がそこで見たモノは……!
*** ***
「……こんなもんだよね」
身体じゅうをふわふわと包む”お湯の綿毛”がとても気持ちいい。
「ふわわ~、やっぱりやっぱりふわふわ温泉は気持ちいいですねっ!」
隣に座ったララが、気持ちよさそうに伸びをする。
水面?に手をつけると、綿あめのようにフワフワの形状に変化したお湯が、ふんわりと両手を包み込む。
冬毛でもこもこになった大型犬を想像してもらえればいいだろうか?
全身を包み込む真っ白な湯毛 (誤字じゃないです)は文句なしに気持ちいいのだけど。
(真っ白すぎて何も見えない!!)
タオルを着けない混浴……なのに、なのにっ!
肝心の部分は何も見えないのだった。
(ま、まあ……健全でいいよね)
僕はそう切り替えて、お湯を楽しもうとしたのだけれど。
「えへ、こうやって身体をくっつけるともっと温まるんですよっ!」
ぴとっ!
「!?!?!?」
いきなり身体をよせてきたララの大胆な行動と肌の熱さに、僕はあっさりと目を回すのだった。
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