レベルアップしない呪い持ち元神童、実は【全スキル契約済み】 ~実家を追放されるも呪いが無効な世界に召喚され、爆速レベルアップで無双する~

なっくる

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第19話 スキル辞典リーノ、さらなる成長?

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「だあああああっ!?」
「Sランクモンスターが出るなんて、聞いてないぞ!」

「げっ、幻惑魔術でデコイを作ったのに追いかけてくるっ!?」

「Sランクのグランスキュラだぞ、生半可なデコイじゃ無理だっての!」

 真っ黒な鱗を持つ大蛇を数十匹融合した、醜悪な姿を持つグランスキュラ。
 めったに出現報告のないSランクモンスターは、Bランク幻惑魔術の”マルチデコイ”の幻影をものともせず、まっすぐに僕たちを追ってくる。

 変装というか変身魔術の”ハイ・マスカレード”を使い、悠々と王都を脱出した僕たち。
 北方のノルド公国に向かって歩き始めたのだけれど。

 突然目の前に現れたSランクモンスターに追いかけられているというわけだ。

「そもそも、なんで、こんな所に、Sランクモンスターがっ……アイスブラストっ!」

 バシュウッ!

 スキュラ類は冷気に弱いので、牽制代わりの氷雪魔術を放つ。
 大蛇の頭を一匹潰したが、致命傷には程遠い。

「くそっ! こないだのシザーハンズですらめったに出てこないってのに……やっぱバルロッツィ家の仕業か?」
「……って」

 接近戦主体で戦うランは動体視力に優れている。
 木々をなぎ倒しながら追いかけてくるグランスキュラの身体を見て、なにか気づくことがあったようだ。

「ヤツの上半身に付いた呪紋……ありゃ、ティム魔術の痕だぜ!」
「連中、ヤツを操ろうとして、ヤリ切れずにポイ捨てしやがったな!」

「迷惑すぎるっ!!」

 グランスキュラの出所が分かっても現状が改善するわけではない。
 なんとか僕の”ホールドダウン”で動きを止められれば、レベルアップしたランの剣技と僕の魔術を合わせてなんとかできるはずだ!

 これしかない……なにしろ、僕の”アジリティ”は、普段より大幅に上昇しているのだ!

「ていうか、なんでお前はまだ”変身”したままなんだよっ!」

 そう、思いのほか獣人少女の姿が気に入ってしまった僕は、王都を離れても変身を解いていなかったのだ。
 だけど今はこの身のこなしが武器になるっ!

「ラン、僕がヤツの気を引いて……動きを止めるから、タイミングを合わせて斬りかかってくれ!」

「”ホールドダウン”かっ? ていうかお前……」

 僕の”ホールドダウン”は相手に接触しないと使えない……危険が大きいことを心配してくれたのだろう。
 ランの表情が曇る。

「……グランスキュラはらしいぞ?」
「”万が一”のことにならないよう、気をつけろよ……」

 って、忘れてたあああああっ!?
 グランスキュラはエロエロモンスターだった……。

 万一捕まってあれやこれやな状態になってしまったら、僕の精神はどこかの地平に飛んで行ってしまうだろう。
 だけど、コイツは獣人族の女の子たちの天敵……絶対ここで始末しとかないと!

 思わず浮かび上がった鳥肌を気合で押さえつけると、僕はランと別れ、ヤツにワザと姿を見せる。


 ウオオオオンッ!


 我ながらとってもかわいい獣人族の女の子に惹かれたのか、おぞましい咆哮を上げ、こちらに向かってくるグランスキュラ。

「ほ、ほらっ……ふりふり」

 さらにヤツの気を引くため尻尾を上げて誘うポーズをとる。
 ……よく考えたら中身は男なので超ヤバい奴なのだが……心の奥底に生まれたこの変な感情はいったい?

「っとやばっ! こっちに誘導しないと……!」

 深く考えると戻ってこれない気がしたので、頭を振って誤魔化すと木の枝を伝ってどんどん森の奥へ誘い込む。

 この森の奥には、確か……。

 ワザとスピードを落としたり躓いたり……届きそうで届かないギリギリの追いかけっこを続けること数分。

 ここだっ!

 風に混じる、僅かな水の匂いを感じ取った僕は、肉体強化魔術を使い、全身の筋力を強化する。


 ばさっ!


 太い木の枝を蹴り、思いっきり空中に飛び出す!


 グオオオオオオンッ!!


 興奮したグランスキュラも僕の後を追ってジャンプし……。


 ドッシャアアアアンンッ!!


 飛んだ先は高さ数十メートルの崖……グランスキュラの巨体は、なすすべもなく崖下の滝つぼへと落下する。

「チャンス……くらえっ!」

 強靭な肉体を持つグランスキュラを崖から落としたくらいで倒すことは出来ない。
 だけど、数十メートルの高さから落下した衝撃は、ヤツの動きを止めている。

 スキルを使うチャンスはここしかない!
 僕は空中で姿勢を変えると、グランスキュラの上半身めがけて落下する。

 通常のスキュラの上半身は人間型だが、グランスキュラの上半身はリザードマン型なのだ。

 ……ヤツが近づくにつれ、ドロドロの粘液にまみれた醜悪な姿が見えてくる。
 あっヤバイ、抱きつきたくない……などと思っても落下の勢いを止められるはずもなく。


 べちょっ!!


 微妙に腰の引けた姿勢で、グランスキュラの上半身に抱きつく。

「うげえええ! 生暖かい! めっちゃ臭い! なんかかゆい!」

 今までの人生で感じた最悪の触感。
 そんな中でもゲ○を吐かず”ホールドダウン”の術式を展開した僕を褒めて欲しい。

「5……4……3……」

 ギュオオオオオンンッ!

 カウントダウンがじれったいほど遅い。
 僕の身体は現在かわいい獣人少女 (おっぱい大)なので、興奮したグランスキュラは粘液に濡れた触手をこちらに向けて……。

 やばいやばい!

 早くしないとR-18な子供に見せられないシーンが始まってしまう!
 一瞬変身を解くことも考えたけど、グランスキュラがだった場合、僕の尊厳は粉々になってしまうだろう。

「2……1……」

 触手たちの圧力を感じながらもカウントダウンを継続し……1本の触手が足首に巻き付いた瞬間!

「ポン!!」

 カッッッ!

 ”ホールドダウン”が発動し、スキルの光が辺りを包む。

「……へっ?」

 グランスキュラの動きが止まり、地面に倒れ伏す……そう思っていたのだけれど、驚くべきことが起きた。


 ぽてっ……
 くあ~!


 グランスキュラ?が間の抜けた声を上げる。
 もはやこちらを襲う気もないのか、のんびりと短くなった触手で上半身を掻くと、すりすりと僕の足に身体を擦り付けてくる。

 い、意外にかわいいかも……。

「”ホールドダウン”って、相手のスキルを封じたり動きを封じる効果だったよね……これって、なに?」

 確かに相手を「封じた」のかもしれないけど、小さくして無害化するなんて、そんなスキルは見たことが無い。


「まさか……”スキル進化”?」

 僕は一つの可能性に思い当る……”ユニークスキル”の中には、一定の条件を満たせば進化するものがあるという。
 ユニークスキル自体がレアなのでめったに現れるものじゃないんだけど……。

 ホントかどうか知らないけど、異世界からの侵攻を退けた伝説の勇者は、10以上の進化系ユニークスキルを持っていたとか……。

 自分のユニークスキルがそんな伝説級だとは思えないけど、ノルド公国に落ち着いたら、ララに”鑑定”してもらうべきかもしれない。

 そう考えながら、僕は本当にグランスキュラが無害化されたのか、ヤツをひっくり返したり触手をかき分けたりしながら確認する。

「リーノ! とんでもない術式の発動を感じたが大丈夫か……って……」

 僕がなかなかやってこないので心配したのだろう……グレートソードを抜き放ち、崖を駆け下りてきたランが僕の姿を見るなり絶句する。

「……あっ」

 何故なら僕はいたいけな獣人少女の姿のままで……臭い粘液まみれになったまま、小さくなったグランスキュラをいじくりまわしていたのだ。

 のちにランドルフは”シノビ”の少女に語ったという。
 親友が女体化して触手遊び……人生の中で一番衝撃的な光景だった……と。
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