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第13話 追放側サイド・リーノ抹殺計画
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「そんな……”昏き魔蛇”の暗殺者だぞ……一体どうなっている!?」
ギルド長アントがバルロッツィ家に呼び出され、リーノの始末を厳命されて二週間あまり……。
失敗続きの暗殺計画に、アントは頭を抱えていた。
手始めにマリノ王国の闇社会を牛耳るマフィアに暗殺を依頼した。
”リーノのヤツがどれくらいデキる”のか、威力偵察のつもりだったのでたいして期待はしていなかったが、わずか数時間で撃退された。
情けないマフィアの構成員いわく……夕闇迫る路地裏、背後から一突きしたつもりだったが相手は幻のように消えてしまった。
呆然としていたところをランドルフに切り伏せられ一敗。
しょせん田舎マフィアか、と隣国にある巨大犯罪組織に改めて依頼。
流石に巨大組織である……数百体のマンドレイクから濃縮した特殊な幻覚ガスをヤツの部屋に流し、前後不覚にさせて倒すという完ぺきな作戦。
……のはずだったのだが、なぜかリーノには全く効果が無く……「なんか臭うな……まさかガス漏れっ!?」などとリーノが言ったかどうかは知らないが、
ヤツの使った旋風魔術で幻覚ガスが吹き返され、暗殺者は昏倒。
これで二敗。
それならば最後の手段と、世界で最もヤバいと言われる暗黒組織、”昏き魔蛇”にコンタクトを取り、大金をはたいてレベル50以上ともいわれる最強クラスの暗殺者を雇った。
最初、暗殺者として8歳のガキがやってきた時には掴まされたと思ったが、洗脳と投薬……それに禁呪クラスの強化魔術により、最強の暗殺者を”製造”しているらしい。
ガキを使うのも、相手を油断させるのに好都合らしいが……垣間見た世界の闇に、金輪際コイツらには関わらないでおこうと誓ったアント。
今度こそリーノも終わりだろう……と確信していたが、なんとあっさり返り討ちにされてしまった。
……監視していたギルドの構成員いわく、暗殺者のガキは腹をすかせた浮浪児を装ってリーノに近づいて行ったらしい。
食事をねだるふりをして、猛毒を塗ったナイフで一突き……という計画だったようだが、”かわいそうに! 何でも食べさせてあげる!”と急に涙を浮かべたリーノがガキに抱きついたとたん、
なんとガキに掛けられた洗脳と強化魔術が解けてしまったらしい。
普通のガキになった元暗殺者は、今は孤児院に預けられてよろしくやっているらしい。
なんという事だ……世間の犯罪組織は役立たずばかりなのか!?
蓄財していた裏金をほとんど使い果たしたアントが頭を抱えてしまったのも無理もない。
「くそっ……報告書を見る限り、リーノのヤツが使ったのはヘタしたらAランクの幻惑魔術に、デバフスキルか?」
「”昏き魔蛇”の洗脳を解くだと? そんな劇的な効果のあるスキルなど聞いたことが無い……」
「まさか、”ユニークスキル”なのか? ……馬鹿な、こんな短期間でさらにレベルアップしているというのか!!」
最悪な事に、明日がバルロッツィ家への報告期限となっている。
これだけの暗殺者をマリノ王国に入国させた手前、虚偽報告など出来るわけがない。
アントは血がにじむほど両手を握りしめ……深夜の執務室で絶叫するのだった。
*** ***
「……ということで、最近僕の周りでヘンな事件が起こるんだよね~」
「な、なるほど」
ナ・デナデの凄腕モフ術師少女、ララに僕の呪いを鑑定してもらってから2週間……何度かララに召喚されてデート?を繰り返し、ちまちまとレベルアップした僕は絶好調だった。
凶悪モンスターにより世界に危機が迫っています! ……という割にナ・デナデは平和であり、モンスターと戦ったのは一度だけ。
スライム未満の超初級モンスターだったので、少しだけしかレベルアップしなかったけど、僕のレベルはもう33!
そこそこの大きさのギルドでも、上位の実力である!
レベルが上がると同時に請けられる依頼のランクも上昇し、身の回りで起こる出来事も刺激的なモノに変わってきていた。
これが上級冒険者が見ている世界か!
僕はうきうきと指折り数えながら、最近起こった”事件”を思い出す。
「まずは1週間前、ランも知ってるだろ? 妙齢獣人お姉さんのセレナさんが手作りする焼き立てパン!」
「レベルアップした僕は神の加速でタイムセールに一番乗り!」
「……だけど気合入れ過ぎたのか、服に穴が開いていたんだよね。 レベルアップしすぎるとこういう副作用も出るんだね」
「お、おう……」
「次に3日前……となりの部屋のマッドじいさんがまた怪しげな実験を行ってガス漏れを起こしたようなんだよね……旋風魔術が使えるようになっていて助かったよ」
「あ、ああ……」
「極めつけは昨日だね! 行き倒れそうになった獣人族の幼女を助けたんだ!」
「”お兄ちゃん”って呼んでくれたし……ああ、心配しないで! 僕はララ一筋だし、ロリちゃんにはNO タッチ! ってね!」
「そ、そうか……」
あくまで能天気な相棒の様子に、ひきつった声で相槌を打つランドルフ。
……マジかよ、最初にリーノを襲った奴はマフィアの構成員だったし、麻痺毒を使うのは暗殺組織の常とう手段。
そして、昨日リーノが助けたという獣人族の幼女を見たが、彼女の二の腕にあった入れ墨……”昏き魔蛇”のモノに間違いない。
リーノは”狙われている”……なにが起きているか調べる必要があるな……。
ウキウキな親友を心配そうに見つめるランドルフは、対策に頭を悩ませるのだった。
ギルド長アントがバルロッツィ家に呼び出され、リーノの始末を厳命されて二週間あまり……。
失敗続きの暗殺計画に、アントは頭を抱えていた。
手始めにマリノ王国の闇社会を牛耳るマフィアに暗殺を依頼した。
”リーノのヤツがどれくらいデキる”のか、威力偵察のつもりだったのでたいして期待はしていなかったが、わずか数時間で撃退された。
情けないマフィアの構成員いわく……夕闇迫る路地裏、背後から一突きしたつもりだったが相手は幻のように消えてしまった。
呆然としていたところをランドルフに切り伏せられ一敗。
しょせん田舎マフィアか、と隣国にある巨大犯罪組織に改めて依頼。
流石に巨大組織である……数百体のマンドレイクから濃縮した特殊な幻覚ガスをヤツの部屋に流し、前後不覚にさせて倒すという完ぺきな作戦。
……のはずだったのだが、なぜかリーノには全く効果が無く……「なんか臭うな……まさかガス漏れっ!?」などとリーノが言ったかどうかは知らないが、
ヤツの使った旋風魔術で幻覚ガスが吹き返され、暗殺者は昏倒。
これで二敗。
それならば最後の手段と、世界で最もヤバいと言われる暗黒組織、”昏き魔蛇”にコンタクトを取り、大金をはたいてレベル50以上ともいわれる最強クラスの暗殺者を雇った。
最初、暗殺者として8歳のガキがやってきた時には掴まされたと思ったが、洗脳と投薬……それに禁呪クラスの強化魔術により、最強の暗殺者を”製造”しているらしい。
ガキを使うのも、相手を油断させるのに好都合らしいが……垣間見た世界の闇に、金輪際コイツらには関わらないでおこうと誓ったアント。
今度こそリーノも終わりだろう……と確信していたが、なんとあっさり返り討ちにされてしまった。
……監視していたギルドの構成員いわく、暗殺者のガキは腹をすかせた浮浪児を装ってリーノに近づいて行ったらしい。
食事をねだるふりをして、猛毒を塗ったナイフで一突き……という計画だったようだが、”かわいそうに! 何でも食べさせてあげる!”と急に涙を浮かべたリーノがガキに抱きついたとたん、
なんとガキに掛けられた洗脳と強化魔術が解けてしまったらしい。
普通のガキになった元暗殺者は、今は孤児院に預けられてよろしくやっているらしい。
なんという事だ……世間の犯罪組織は役立たずばかりなのか!?
蓄財していた裏金をほとんど使い果たしたアントが頭を抱えてしまったのも無理もない。
「くそっ……報告書を見る限り、リーノのヤツが使ったのはヘタしたらAランクの幻惑魔術に、デバフスキルか?」
「”昏き魔蛇”の洗脳を解くだと? そんな劇的な効果のあるスキルなど聞いたことが無い……」
「まさか、”ユニークスキル”なのか? ……馬鹿な、こんな短期間でさらにレベルアップしているというのか!!」
最悪な事に、明日がバルロッツィ家への報告期限となっている。
これだけの暗殺者をマリノ王国に入国させた手前、虚偽報告など出来るわけがない。
アントは血がにじむほど両手を握りしめ……深夜の執務室で絶叫するのだった。
*** ***
「……ということで、最近僕の周りでヘンな事件が起こるんだよね~」
「な、なるほど」
ナ・デナデの凄腕モフ術師少女、ララに僕の呪いを鑑定してもらってから2週間……何度かララに召喚されてデート?を繰り返し、ちまちまとレベルアップした僕は絶好調だった。
凶悪モンスターにより世界に危機が迫っています! ……という割にナ・デナデは平和であり、モンスターと戦ったのは一度だけ。
スライム未満の超初級モンスターだったので、少しだけしかレベルアップしなかったけど、僕のレベルはもう33!
そこそこの大きさのギルドでも、上位の実力である!
レベルが上がると同時に請けられる依頼のランクも上昇し、身の回りで起こる出来事も刺激的なモノに変わってきていた。
これが上級冒険者が見ている世界か!
僕はうきうきと指折り数えながら、最近起こった”事件”を思い出す。
「まずは1週間前、ランも知ってるだろ? 妙齢獣人お姉さんのセレナさんが手作りする焼き立てパン!」
「レベルアップした僕は神の加速でタイムセールに一番乗り!」
「……だけど気合入れ過ぎたのか、服に穴が開いていたんだよね。 レベルアップしすぎるとこういう副作用も出るんだね」
「お、おう……」
「次に3日前……となりの部屋のマッドじいさんがまた怪しげな実験を行ってガス漏れを起こしたようなんだよね……旋風魔術が使えるようになっていて助かったよ」
「あ、ああ……」
「極めつけは昨日だね! 行き倒れそうになった獣人族の幼女を助けたんだ!」
「”お兄ちゃん”って呼んでくれたし……ああ、心配しないで! 僕はララ一筋だし、ロリちゃんにはNO タッチ! ってね!」
「そ、そうか……」
あくまで能天気な相棒の様子に、ひきつった声で相槌を打つランドルフ。
……マジかよ、最初にリーノを襲った奴はマフィアの構成員だったし、麻痺毒を使うのは暗殺組織の常とう手段。
そして、昨日リーノが助けたという獣人族の幼女を見たが、彼女の二の腕にあった入れ墨……”昏き魔蛇”のモノに間違いない。
リーノは”狙われている”……なにが起きているか調べる必要があるな……。
ウキウキな親友を心配そうに見つめるランドルフは、対策に頭を悩ませるのだった。
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