シンパパ底辺ダンジョン探索者さん、バグでスキルポイント獲得倍率が限界突破する ~全肯定してくれる愛娘と幸せになるために成り上がることにした~

なっくる

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第49話 俺たちのギルド、大人気になる(後編)

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「トドメだっ!」

 ザンッ!

 ダマスカスブレードの一撃が、オーガーを両断する。

「そっちに行ったぞ! リーサ!」

「まかせて☆」

 動きの素早いホブゴブリンが後衛のリーサたちに迫る。

「ほいっ」

 ガキインッ

 ホブゴブリンの一撃は、リーサのトンファーに受け止められダメージを与えることが出来ない。

「あまいよっ!」

 どがっ!

 反動を利用したリーサのキックが腹にまともに入り、吹き飛ばされるホブゴブリン。

「ミアちゃん、トドメはお願いね!」

「任せるがよい!」

 ホ、ホブゴブッ!?

 ダメージをくらい起き上がれないホブゴブリンの前に仁王立ちするミア。

「くふっ……余に刃向かってくるとはのぉ。
 あっぱれじゃぞぉ!」

 にやり……ねっとりとした視線でホブゴブリンを見下ろすミア。

 ぶにっ!

 真っ白なスニーカーがホブゴブリンの下腹部を踏みつける。

 ホ、ホブゴブボブッ!?

 狼狽するホブコブリンにかまわず足に力を込めるミア。

「天にも昇る心地よさであろう……?」

「”カーズ”!!」

 ぶおおおおおっ!

 闇の炎がホブゴブリンに纏わりつき……恍惚の表情を浮かべたホブゴブリンはチリになって消える。

「……とまあ、こんな所でよいか? サイバーウィザードよ」

 今まで纏っていた淫靡な雰囲気はどこへやら。
 無邪気な笑みを浮かべるミア。

『ばっちりですっッ!!』

 フェリナの言葉と共に、大量のコメントと投げ銭がログに表示された。
「うおおおおお、ミア様っ!」「ぼ、僕も踏んでほしいですっ」
「ばかやろう、ミアちゃんに下品な言葉を掛けるんじゃねえ」「ああ、神々しいですミア様っ!」

 ……なにやら飼いならされたコメントが多いが気にしないようにしよう。

「どきどき……リーサもちょっとえっちな路線を攻めた方がいいかな?」

「ダメ。 リーサは正統派なの」

「は~い」

 アレは魔王としての経験(?)に裏打ちされた演技だろう。

「じゃあ、次はリーサが活躍するから期待しててね☆」

 リーサが可愛くポーズを取ると、これまた大量のコメントと投げ銭が投入される。

「リーサちゃんかわいすぎる……」「これで1日頑張れるよ」
「オレもあんな娘が欲しいなぁ」「リーサちゃんはわたくしのモノです」

 ……最後のコメントフェリナじゃね?
 リーサは俺のだからな。

「えへへ」

 ……それはともかく、先ほどから気になることがあった。

「フェリナ、ここまでのモンスター出現数を表示してくれ」

 俺は真面目な表情になるとフェリナに直通回線をつなぐ。

「はい、少々お待ちを」

 フェリナからも真面目な応答が返され、ほどなくしてモンスターの出現情報が表示される。

 ======
 第1層
 ルーム1:ゴブリン10、ホブゴブリン3
 ルーム2:オーガー1
 ルーム3:ガーゴイル2
 第2層
 ルーム1:ホブゴブリン8
 ルーム2:ホブゴブリン7、オーガー2
 ======

「……多いな」

『はい。Cランクダンジョンの平均を既に大きく凌駕しています』

 Cランクダンジョンのクセに階層が複数あるのも異例だが、モンスターの出現数も多い。通常なら多くても15体前後。

 だがこのダンジョンは、まだ最奥にたどり着いていないにもかかわらず既に33体だ。

『動画的にも長すぎると飽きられますからね』

 攻略を始めてすでに2時間……さすがに同時接続数も落ちてきている。

「ここからは”調査”に移った方がよさそうだな」

『承知しました。 残りは後日アーカイブ配信という事にしますね』

「頼む」

 フェリナはリーサに連絡し、配信の終了を告知する。

「続きは今度アップしま~すっ」

「……必ず見るのじゃぞ?」

『はい、カット!』

 配信を終えたふたりがこちらに駆け寄ってくる。

 このダンジョンは少しおかしい。
 ここからは気合を入れなおした方がよさそうだ。


 ***  ***

「な、なんだアレは?」

 ようやくたどり着いたダンジョンの最奥。
 俺たちは信じられないものを目撃していた。

「モンスターを吐き出してやがるのか?」

「うえぇ……」

 リーサが顔をしかめているがそれも無理はないだろう。

 10メートルほどの高さを持つ部屋の半分以上を占める赤黒いナマコのような塊。
 その中央には口のような穴が開いており、そこからコブリンやコボルドのような雑魚モンスターが這い出てくる。

 腹の中に子モンスターを隠している、母艦のようなモンスターなのか?

「いや、そんなオリジナルモンスターがいるなんて、聞いたことも……」

『はい、協会のデータベースにもないタイプですね』

 すかさず調べてくれたらしいフェリナが俺の言葉を裏付ける。
 だが、驚きの声を上げる俺たちの中で、一人だけ得心した表情を浮かべているのはミアだ。

「ほう! ”キャリアータイプ”か、珍しいの!」

「え? 知ってるのミアちゃん?」

「見たことがあるのか、ミア?」

「うむ! ありふれたモンスターではないがな。
 数十体のモンスターを腹の中に隠し、地中を進むこともできる個体じゃ。
 魔族同士の抗争で叔父上がよく使っておったぞ?」

「……ふええ」

「…………」

 さすが魔王様といったところか。
 だが、俺が転生していた世界と全く同じモンスターがこちらのダンジョンに出現するとは……記憶にある限り初めてのケースである。

「フェリナ、念のため記録はしっかり取っておいてくれ」

『了解しました』

「さすがにそろそろ打ち止めじゃろうが……”補充”されたら厄介じゃぞ?」

 ミアの言葉に頷く。

「リーサ、ミア。
 オリジナル魔法で一気に焼き払えるか?」

 あれだけのサイズのモンスターだと、打撃で倒すのも一苦労だ。
 俺は二人に声を掛ける。

「うん! アレくらいなら大丈夫だと思う」

「任せておくがよい」

「ミアちゃん、タイミングを合わせてね」

「うむ!」

 キイイインッ

 リーサとミアの周囲に、膨大な魔力が集まっていく。

「”フレア・バースト”!!」
「”ダークバスター”!!」

 リーサとミアの極大魔法が炸裂し、巨大なナマコ型モンスターを焼き払った。

『ボスモンスターの撃破を確認……依頼No:C21334をクリアしました。
 なお、通常の報酬とは別に、153万円の投げ銭が入っています』

 配信は大成功だが……ダンジョンに何が起きているんだろうか?
 少し不安に感じる俺なのだった。
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