シンパパ底辺ダンジョン探索者さん、バグでスキルポイント獲得倍率が限界突破する ~全肯定してくれる愛娘と幸せになるために成り上がることにした~

なっくる

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第46話 ダンジョン攻略配信をしよう

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「ダンジョン内から配信を……ですか?」

「面白そう!!」

 いくら生活力と金銭感覚が壊滅していようと、ダンジョンの技術的な事はフェリナに聞け、という事でフェリナを俺たちの家に招き、作戦会議を行うことにした。

「ダンジョンバスターはありふれた職業になったとはいえ、どんな仕事をしているかまだまだ一般人に知られていないと思うんだよな」

「ふむふむ、確かに!」

 なにしろ、普通の人間はダンジョンに入れないので現場を見ることがない。

 最初のダンジョンの大量出現、”ブレイク・インパクト”に於いて人類社会は大きな被害を受けた。そのイメージが残っているのかダンジョンバスターを得体の知れない連中だと思う人々もいる。

 極端な連中になると、ダンバスは国家ぐるみの詐欺集団と言われたり。

「確かに、学校でダンバスをやってる、て言うと”どういう事をしてるの?”って聞かれることがあるよ。
 わたしもユウと一緒に潜るまでは、詳しく知らなかったし」

「ふむ……外敵から民衆を守る冒険者といえば花形のはずじゃが、この世界ではそうではないのか?」

 近所のケーキ屋さんで買って来たバームクーヘンの味に顔をとろけさせているミア。
 魔王様はこちらの世界に来たばかりだ。
 疑問に思うのも当然だろう。

「もちろん恥ずかしい仕事、というわけじゃないけど。
 成果が目に見えにくいというのはあるな」

 ダンジョンはクリアすると跡形もなく消えてしまうからな。

「なるほどの」

 少し話がそれた。

「どうだろう? フェリナ」

 魔法とスキルが飛び交うダンジョン内の戦闘は見ごたえがある。
 華々しいバトルを見せて、ゲーム実況のように”投げ銭”を貰えないだろうか?

「そうですね……」

 形の良い顎に人差し指を当て、考え込むフェリナ。

「まず大きな問題は、ダンジョン内と外の通信速度です」

「つうしんそくど?」

 フェリナは自分のスマホ内のダンバスアプリを起動する。

「ユウさんたちも知っての通り、ダンジョン内と外との通信を可能にしているダンバスアプリですが。なぜ異世界であるダンジョン内から外にネットがつながると思いますか?」

「それは……」

 そんなこと、考えたこともなかった。

「もしかして、魔法?」

「いいえ」

 リーサの言葉に首を横に振るフェリナ。

「ダンジョンを封印している”魔法陣”……そこに通信素子の役割をするナノマシンが埋め込まれているのです」

「はいてく!?」

「”なのましん”とはなんじゃ? 錬金術の素材か?」

 へ~、それは知らなかった。
 普段何気なく触れている物にも凄いテクノロジーが使われているんだな。

「説明が難しいのですが、ミアちゃんの言葉が一番近いですね」

「むふふ」

 得意げなミアが微笑ましい。

「なので、通信速度も外のようにはいかず……音声ならともかく、動画をリアルタイムでやり取りするのは難しいかと」

「ぬぅ」

 フェリナに詳しく聞いてみると、いにしえのダイヤルアップ回線に毛の生えたくらいの速度しか出ないらしい。

 動画配信ちゃんねるで止め絵ばかりはマズいだろう。

 配信をするダンバスがいないのは理由があったか……。
 それなら仕方ない、断念しようかと考えていると、ミアが何かを思いついたようだ。
 バームクーヘンのおかわりを頬張りながらリーサに話しかける。

「そういえば、リーサよ」

「ふお? どうしたのミアちゃん?」

「おぬしが余の城を奇襲した時、どうやってモンスターの配置を確認したのじゃ?
 的確に布陣が薄い所を突かれたのでな、不思議に思ったのじゃ」

「あ、それなら!」

 リーサは本棚から魔導書を取り出してくる。

「”遠見”の魔法ってあるでしょ?
 それを改造して、リアルタイムの映像をわたしの工房まで送れるようにしたんだ~もちろん、仕込みは必要だったけど」

「い、いつの間に……やるの」

 ドレイクを拾った日、俺たちは新型監視魔法の仕込みと偵察を兼ね、魔王城周辺に忍び込んでいたのだ。

「その魔法……当件に応用できぬか?」

「う~ん……ちゃんと発動させるには触媒がないと……」

「あっ」

 リーサの言葉に、ある事を思い出す俺。

「フェリナ……(ジト目)」

「なっ、なんですか?」

「あ、そうか!!」

 リーサも俺の言いたいことを察したようだ。

「フェリナお姉ちゃんが子供だましの詐欺広告に騙されて買ったアミュレット!!」

「はうっ!?!?」

「それ、使えないか?」

「……お姉ちゃん、15万円もしたって言ってた。
 もしかして、純銀で出来ていれば使えるかも」

「マジか! 怪しげな銀細工に15万も出す人間がいるのか?」

「ぐはっ!?」

「くくくっ、そんなコボルド以下の知能な人間がおるとは思えんがな?」

「ぬはっ!?」

「と、いうことで……あのアミュレットを持ってきてくれる?
 フェリナお姉ちゃん」

「はいいぃ」

 なぜか打ちひしがれた様子のフェリナは、自室から”通信速度が速くなる(笑)”アミュレットを持ってきてくれるのだった。


 ***  ***

「こ、これですぅ」

 ごとり……フェリナがテーブルの上に置いたのは、15センチメートルほどの大きさのアミュレット。
 六芒星の周りを天使の羽根が囲んだデザインで……その、なんというか心の古傷が疼く。

「ユウが14歳の時に作ったアクセサリに似てるね!」

 おう、容赦なく傷をえぐるでない。

「ほう!
 これほど高い純度の銀を使っているとは……さすがじゃな!」

 どうやら15万円もするだけあって、本当に純銀製らしい。

「どうじゃ? 大魔導士よ?」

 小麦色のほっそりとした指が、アミュレットを弾く。

 キンッ

 澄んだ音が耳をくすぐる。

「うん……魔力共鳴問題なし、伝導率もばっちりだね。
 これにわたしが開発した術式を組み込めば……行けるかも!!」

 少しだけ凛々しく、魔導士の顔になるリーサ。
 とても頼もしい。

「え、どういうことですか?」

 意外な展開に、目を白黒させるフェリナ。
 フェリナのやらかしが、金の卵になるかもしれない。
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