シンパパ底辺ダンジョン探索者さん、バグでスキルポイント獲得倍率が限界突破する ~全肯定してくれる愛娘と幸せになるために成り上がることにした~

なっくる

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第36話 スキルポイントの秘密

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「だ、ダンジョンからオーブを?
いったいどうやって?」

基本的にダンジョンの中は隔絶した異世界であり、一部のガチャから出現する”固有装備”を除いて、外の世界に持ち出すことはできない。

ダンジョンのコアともなるオーブならなおさらだ。

「正確には、この子はダンジョンのコアを成すオーブとは違うのだけれど。
基本的には貴方の持っている固有装備と同じよ?」

ことり……

ブレンダは壁に埋め込まれた計測機械からオーブを取り外し、ガラステーブルの上に置く。

「オーブを構成するスキルポイントの組成を解析し、こちらの世界で同一のオーブとして再生する。だいぶ小さくなったけどね」

彼女の語る理屈はよく理解できないが、俺とリーサが指輪として身に着けている増幅の腕輪+と同じようなモノらしい。

「この子は面白い特性を持っているわよ。
ステータスを開いてごらんなさい」

「??」

ブレンダの言葉に従い、ダンバスアプリからステータスを展開する。


======
■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:F・ノーツギルド
ランク:B
スキルポイント残高:112,501(+1)
スキルポイント獲得倍率:950%
口座残高:7,526,000円
称号:ドラゴンスレイヤー
   災害迷宮撃破褒章
======

「え?」

「ふ、ふお?」

スキルポイントが……増えた?
ありえない現象に目が点になる。

「この子の近くにいると、スキルポイントがにじみ出てくるの。
微々たるものだけどね」

「こ、これはまるで……」

スキルポイントを採掘できるマインの中心、鉱床デポジットと呼ばれる巨大オーブみたいだ。

「そんな大げさなモノじゃない、ただの欠片よ」

「そんなことより」

ブレンダは驚く俺達に満足したのか、にやりと笑うと脚を組みかえる。

「私はスキルポイントを、近しい異世界からにじみ出てくる魔力のようなもの、と考えているの。どう? 思い当ることがないかしら、ご同類さん?」

「!!」

こちらを見透かすような金の瞳に見据えられ、思わずびくりとしてしまう。
災害ダンジョンで感じたあの違和感……。

「!!!!」

その違和感は、大魔導士でもあったリーサの方が大きかったらしく。
びくんと耳と尻尾を逆立てる。

「……ビンゴみたいね。
色々話を聞かせてくれないかしら」

俺とリーサは頷き合う。
俺はカバンからノートPCとコピー用紙の束を取りだし、テーブルの上に置いた。

「俺たちは」
「わたしたちは」

俺とリーサの長い話が始まった。


***  ***

「……なるほどね。
これほどまでに、知識とスキルを引き継いでいるなんて」

リーサの記した禁書の一部をコピーした書類と、俺のユニークの解析記録を読み終えたブレンダが、少し疲れた様子で嘆息する。

「スキルポイント獲得倍率が実質的に無限になる、か」

「無限は少し言い過ぎじゃないか?」

今まで最大でも100倍程度だったし。
それもHランクダンジョン限定の話だ。

「いいえ」

ブレンダは人差し指で書類を軽くたたく。

「リーサ……アナタの娘さんがいた世界の魔法理論は私の世界の物とは違うけれど。
私の予想では、上限は存在しない」

「貴方の世界における”魔法元素:マナ”は、自然界に遍在するもの?」

「ちがうよ? マナは、生きとし生ける者の生命力に伴い発生する力。
例えば、ご飯をいっぱい食べればたくさんできる!!」

「……へ、へぇ」

ブレンダの問いに、ふんすっと胸を張るリーサ。
リーサの話では、どんどん昔の知識が戻ってきているらしい。
そういえば大規模な魔法実験の後、いつもリーサは大量のメシを食べていたっけ。

「やはりあなたの世界は少し変わっているわね。
私の世界では、魔法元素は石油や天然ガスみたいに絶対量が決まっている資源だったの」

一言に魔法、といっても世界によって色々みたいだ。

「そんな桁外れの魔法元素を持つリーサと一緒に育ち、こちらの世界にスキルを引き継いで戻って来たユウ。貴方は莫大な魔法元素を受け入れる器のような存在になっているみたいね、とても興味深いわ」

……ブレンダの話を総合すると、リーサと一緒にいた俺はリーサの世界からスキルポイントとして大量の魔法元素をすくい採れる、バケツのような存在になったという事だろうか?

「ひとまず難しいお話は終わりにするとして……お茶した後、少しリーサを借りてもいい? 試してみたいことがあるの」

ぎらり

ブレンダの瞳が、光を放つ。

「ほほう」
「このわたしと、魔法理論を戦わせたいという事だねブレンダおねぇちゃん!」

「ふふ、分かる?」

「もちろんだよ!
まずは……」

てててっ、とブレンダに走り寄るリーサ。

「かわいさしょうぶ!!」

「!?!?」

ぴょんっとブレンダに抱きつくリーサ。

「すりすり~♡」

「なっ……これは……もふもふっ!?」

クールなブレンダの表情が崩れる。

「ほれほれ、愛しい”パパ”とは向こうの世界でどんな関係だったの~?
リーサは……ふひひ、一日五回はシテた」

「ご、五回ですって!?」

真っ赤になり、すっかりリーサに翻弄されているブレンダ。
リーサめ……五回もしたのは一日だけだろう?

「まったく……って、どうしたフェリナ?」

これでリーサの魔法の事がもっと分かれば儲けものだ。
そう思った俺はさっきからフェリナが何もしゃべっていないことに気付く。

「…………」

俺の隣で眉を寄せ、厳しい表情で何かを考えこんでいる。

「フェリナ?」

「……はぅ、すみません!」

俺が肩をゆすってやると、ようやく我に返る。

「何か気になる事でもあったのか?」

「いえ……ラボ、ノーツ研でも恐らくブレンダさんが話した事はある程度掴んでいると思うんです。なら、財閥は……義父《マクライド》はユウさんたちを使って何を企んでいるんでしょう?」

「ふむ……」

スキルポイントが無限に取れる俺を利用して金儲け?
それともスキルポイント相場の操作?
とはいえ、一人のダンジョンバスターが市場全体に与える影響は微々たるものだろう。世界全体では数十億ポイント以上のスキルポイントが取引されているのだ。

「一度、オヤジさんと話をしてみようか?」

「そうですね……」

オリジナル鉱山の問題を解決すれば、その功績でアポを取ることも可能だろう。
その時の俺は、そう軽く考えていた。
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