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第3話 Sランクダンジョンとスキポバグ
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ウオオオオオオオオオオンッ!
「……マジかよ」
転移したダンジョンは一本道、迷宮型じゃないのはとてもありがたい。
……正面にいるボスモンスターが、ドラゴンでなければ。
体長10メートル以上、緑色の肌を持つゲームでおなじみのアレだ。
A+ランク以上のダンジョンに出現し、基本的にBランク以上のダンバスがたっぷりスキルポイントを使って数人がかりで倒すモンスター。
ちなみに倒せばドラゴンスレイヤーの称号をゲットできる。
「え~っと」
つまり、今のステータスと装備で倒せるわけがない。
一度ダンジョンに転移したら、ボスを倒すか戦闘不能になるかしないと外に出られない。
このくらい能力差がある場合、命を落とす事もある。
「つ、詰んだ……」
ごめん、リーサ……。
最悪の可能性が脳裏をよぎる。
『はぅ、はわわわっ!?
すいませんすいませんすいませんっ!』
最初の凛とした立ち振る舞いはどこへやら。
わたわたと慌てるフェリナさん。
スマホ画面に映る姿がガチ泣きしていることから、悪気が無いのは分かるけど、せめて事前に情報が欲しかった……。
どうやら彼女は相当なおっちょこちょいらしい。
『あのあの、スキルポイントもっとじゃんじゃん使ってください!』
「え? い、いいんですか?」
俺のランクでドラゴンを倒すには、ステータスの暴力に訴えるしかない。
”スキルポイントガチャ”が出現しても赤字になること確定だが……。
『そんなの、ユウさんの命の方が大切に決まっています!
それに、明日は娘さんの誕生日なのでしょう?』
「フェリナさん……」
彼女の心遣いに感動する。
……もとは彼女の伝え忘れ、というのは気にしない事にする。
もし赤字になったら、時間をかけてちゃんと返そう。
「それじゃ、遠慮なく!」
俺はスキルポイントを思いっきりステータスに割り振る。
======
■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:498,275(-20,000)
スキルポイント獲得倍率:0.5
口座残高:123,500円
■ステータス
HP :5200/5200
MP :100/100
攻撃力 :5200(+10)
防御力 :5200(+10)
素早さ :2100
魔力 :100
運の良さ:100
■装備/スキル
武器:ブロードソード(10×30回)
防具:皮の鎧(10×30回)
特殊スキル:ヒールLV1(10×30回)、ファイアLV1(10×10回)
======
攻撃イズパワーの超脳筋構成である。
俺はドラゴンと戦ったことなんてない。
大は小を兼ねる、である。
「行くぞ!」
ぐんっ!
(!?!?)
ブロードソードを構え、地面を蹴った瞬間、ものすごい勢いで全身が加速する。
(こ、これが素早さ2000超の世界!?)
新幹線より速いんじゃないか、そう錯覚するほどに加速した俺は、100メートルほどの通路をひとっ飛びし……。
「食らえ!」
ブロードソードの刀身が紅く輝く。
ザンッ!
手ごたえは殆どなかった。
俺の剣は溶けたバターを切るように……あっさりとドラゴンの巨体を両断した。
「……は?」
ズズン
「ま、マジか?
ドラゴンを一撃で……?」
二枚におろされたドラゴンを見て唖然とする俺。
「き、気持ちいい……!」
これが、Sランクの世界なのか!
キラキラキラ
と、目の前に黄色に光るオーブが出現する。
『来ました!』
”スキルポイントガチャ”だ!
せめて大当たりが出ますように……祈りを込めてオーブにタッチする。
カラカラカラカラ……ギッ
(ん?)
ガチャの回る音。
その中に僅かな違和感を感じる。
キイイインッ!
「え?」
黄色のオーブが虹色に輝く。
こんな反応、見たことないぞ……!?
カッッッ!!
=== スキルポイント獲得倍率が変更できるようになりました ===
「うっ!?」
まばゆい光がダンジョン全体を満たし……次の瞬間、俺の身体は地下鉄の工事現場に戻ってきていた。
「クリア、したのか?」
念のため、地面に落ちたダンジョンICチップをスキャンする。
『依頼No:S123777、Sランクダンジョンの消失を確認』
『現金報酬1,000,000円 スキルポイント報酬:787FE6CE(獲得倍率@p%$S)』
「……なんだこりゃ?」
俺が驚いたのは現金報酬の高さにではない。
スキルポイント報酬と獲得倍率の表示がめちゃくちゃになっている。
『え? ユウさん何かしましたか?
誤振り込みしたスキルポイント52万が返却されましたよ?』
「そ、そんな馬鹿な!?」
ダンジョンをクリアすると、余ったステータスがスキルポイントに清算される。
だが、いくら”スキルポイントガチャ”の恩恵があっても、計2万ポイント以上を使った俺に、52万ポイントを返却するスキルポイントがあるはずがない。
俺は慌ててステータスを表示しようとする。
【エラー829892、スキルポイントがオーバーフロー……アプリを再起動します】
「どうなってんだ?」
アプリを起動した途端、見たことのないエラーコードが表示され、ダンバスアプリが再起動してしまった。
「壊れたわけじゃなさそうだけど……」
改めてステータスを表示する。
======
■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:0
スキルポイント獲得倍率:た5むF%
口座残高:323,500円(+200,000)
称号:ドラゴンスレイヤー
■ステータス
HP :0
MP :0
攻撃力 :0
防御力 :0
素早さ :0
魔力 :0
運の良さ:0
■装備/スキル
武器:なし
防具:なし
特殊スキル:なし
======
ステータスの清算が終わったので、全て初期値に戻っている。
それはいい。
スキルポイント獲得倍率が変になったままなのだ。
(これって?)
オーブが虹色に光った時、脳内に浮かんだ”スキルポイント獲得倍率が変更できるようになりました”というメッセージ。
「ユウさん、本当に助かりました。
お詫びに、ダンジョンの現金報酬は全部差し上げますので。
また何かありましたら、よろしくお願いいたします」
フェリナさんが個人の連絡先をスマホに送信してくれる。
だが、俺の頭の中はさっきのメッセージの事でいっぱいになっていた。
20年に渡るダンバスの歴史の中で、数例だけ存在したという、バグとしか思えない奇跡のユニークスキル。
……試してみる価値はありそうだ。
「それでは、また」
にこやかな笑顔を浮かべ、帰っていくフェリナさん。
『追加報酬が振り込まれました』
======
■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:3,000(+3,000)
スキルポイント獲得倍率:た5むF%
口座残高:1,123,500円(+800,000)
称号:ドラゴンスレイヤー
======
「って、本当に全額貰えてる!?
スキルポイントも!
こ、これだけあればリーサに贅沢させてやれるかも……」
嬉しくなった俺は、追加の料理をたっぷり買い、リーサの待つアパートに帰ったのだった。
「……マジかよ」
転移したダンジョンは一本道、迷宮型じゃないのはとてもありがたい。
……正面にいるボスモンスターが、ドラゴンでなければ。
体長10メートル以上、緑色の肌を持つゲームでおなじみのアレだ。
A+ランク以上のダンジョンに出現し、基本的にBランク以上のダンバスがたっぷりスキルポイントを使って数人がかりで倒すモンスター。
ちなみに倒せばドラゴンスレイヤーの称号をゲットできる。
「え~っと」
つまり、今のステータスと装備で倒せるわけがない。
一度ダンジョンに転移したら、ボスを倒すか戦闘不能になるかしないと外に出られない。
このくらい能力差がある場合、命を落とす事もある。
「つ、詰んだ……」
ごめん、リーサ……。
最悪の可能性が脳裏をよぎる。
『はぅ、はわわわっ!?
すいませんすいませんすいませんっ!』
最初の凛とした立ち振る舞いはどこへやら。
わたわたと慌てるフェリナさん。
スマホ画面に映る姿がガチ泣きしていることから、悪気が無いのは分かるけど、せめて事前に情報が欲しかった……。
どうやら彼女は相当なおっちょこちょいらしい。
『あのあの、スキルポイントもっとじゃんじゃん使ってください!』
「え? い、いいんですか?」
俺のランクでドラゴンを倒すには、ステータスの暴力に訴えるしかない。
”スキルポイントガチャ”が出現しても赤字になること確定だが……。
『そんなの、ユウさんの命の方が大切に決まっています!
それに、明日は娘さんの誕生日なのでしょう?』
「フェリナさん……」
彼女の心遣いに感動する。
……もとは彼女の伝え忘れ、というのは気にしない事にする。
もし赤字になったら、時間をかけてちゃんと返そう。
「それじゃ、遠慮なく!」
俺はスキルポイントを思いっきりステータスに割り振る。
======
■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:498,275(-20,000)
スキルポイント獲得倍率:0.5
口座残高:123,500円
■ステータス
HP :5200/5200
MP :100/100
攻撃力 :5200(+10)
防御力 :5200(+10)
素早さ :2100
魔力 :100
運の良さ:100
■装備/スキル
武器:ブロードソード(10×30回)
防具:皮の鎧(10×30回)
特殊スキル:ヒールLV1(10×30回)、ファイアLV1(10×10回)
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攻撃イズパワーの超脳筋構成である。
俺はドラゴンと戦ったことなんてない。
大は小を兼ねる、である。
「行くぞ!」
ぐんっ!
(!?!?)
ブロードソードを構え、地面を蹴った瞬間、ものすごい勢いで全身が加速する。
(こ、これが素早さ2000超の世界!?)
新幹線より速いんじゃないか、そう錯覚するほどに加速した俺は、100メートルほどの通路をひとっ飛びし……。
「食らえ!」
ブロードソードの刀身が紅く輝く。
ザンッ!
手ごたえは殆どなかった。
俺の剣は溶けたバターを切るように……あっさりとドラゴンの巨体を両断した。
「……は?」
ズズン
「ま、マジか?
ドラゴンを一撃で……?」
二枚におろされたドラゴンを見て唖然とする俺。
「き、気持ちいい……!」
これが、Sランクの世界なのか!
キラキラキラ
と、目の前に黄色に光るオーブが出現する。
『来ました!』
”スキルポイントガチャ”だ!
せめて大当たりが出ますように……祈りを込めてオーブにタッチする。
カラカラカラカラ……ギッ
(ん?)
ガチャの回る音。
その中に僅かな違和感を感じる。
キイイインッ!
「え?」
黄色のオーブが虹色に輝く。
こんな反応、見たことないぞ……!?
カッッッ!!
=== スキルポイント獲得倍率が変更できるようになりました ===
「うっ!?」
まばゆい光がダンジョン全体を満たし……次の瞬間、俺の身体は地下鉄の工事現場に戻ってきていた。
「クリア、したのか?」
念のため、地面に落ちたダンジョンICチップをスキャンする。
『依頼No:S123777、Sランクダンジョンの消失を確認』
『現金報酬1,000,000円 スキルポイント報酬:787FE6CE(獲得倍率@p%$S)』
「……なんだこりゃ?」
俺が驚いたのは現金報酬の高さにではない。
スキルポイント報酬と獲得倍率の表示がめちゃくちゃになっている。
『え? ユウさん何かしましたか?
誤振り込みしたスキルポイント52万が返却されましたよ?』
「そ、そんな馬鹿な!?」
ダンジョンをクリアすると、余ったステータスがスキルポイントに清算される。
だが、いくら”スキルポイントガチャ”の恩恵があっても、計2万ポイント以上を使った俺に、52万ポイントを返却するスキルポイントがあるはずがない。
俺は慌ててステータスを表示しようとする。
【エラー829892、スキルポイントがオーバーフロー……アプリを再起動します】
「どうなってんだ?」
アプリを起動した途端、見たことのないエラーコードが表示され、ダンバスアプリが再起動してしまった。
「壊れたわけじゃなさそうだけど……」
改めてステータスを表示する。
======
■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:0
スキルポイント獲得倍率:た5むF%
口座残高:323,500円(+200,000)
称号:ドラゴンスレイヤー
■ステータス
HP :0
MP :0
攻撃力 :0
防御力 :0
素早さ :0
魔力 :0
運の良さ:0
■装備/スキル
武器:なし
防具:なし
特殊スキル:なし
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ステータスの清算が終わったので、全て初期値に戻っている。
それはいい。
スキルポイント獲得倍率が変になったままなのだ。
(これって?)
オーブが虹色に光った時、脳内に浮かんだ”スキルポイント獲得倍率が変更できるようになりました”というメッセージ。
「ユウさん、本当に助かりました。
お詫びに、ダンジョンの現金報酬は全部差し上げますので。
また何かありましたら、よろしくお願いいたします」
フェリナさんが個人の連絡先をスマホに送信してくれる。
だが、俺の頭の中はさっきのメッセージの事でいっぱいになっていた。
20年に渡るダンバスの歴史の中で、数例だけ存在したという、バグとしか思えない奇跡のユニークスキル。
……試してみる価値はありそうだ。
「それでは、また」
にこやかな笑顔を浮かべ、帰っていくフェリナさん。
『追加報酬が振り込まれました』
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■個人情報
明石 優(アカシ ユウ)
年齢:25歳 性別:男
所属:東兵庫第25ギルド
ランク:F
スキルポイント残高:3,000(+3,000)
スキルポイント獲得倍率:た5むF%
口座残高:1,123,500円(+800,000)
称号:ドラゴンスレイヤー
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「って、本当に全額貰えてる!?
スキルポイントも!
こ、これだけあればリーサに贅沢させてやれるかも……」
嬉しくなった俺は、追加の料理をたっぷり買い、リーサの待つアパートに帰ったのだった。
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