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第3章 俺だけが知っている序盤の山場
第3-7話 今明かされる魔王様の恥ずかしい秘密
しおりを挟む「はむはむ……余の耐性ですか?」
「あれ、ウソです」
「……は?」
辛くもBL勇者に先んじて新ダンジョンを攻略した聖槍の勇者ルクア。
聖剣アスカロン(本物)をサブウェポンとしてゲットしたルクアは、初の新ダンジョン攻略者として大々的な歓迎を受け、またまた王都に呼び出されていた。
ダンジョンの大ボスにまたもや効果を発揮したルクアの必殺技。
不可思議な現象に悩んだ俺は、当の魔王本人に相談することを思いつく。
お土産のスイートモンブラン(限定品)をパクつく魔王フェルからあっさりと告げられた真実が今の言葉である。
「ど、どういうことだ?」
「今次魔王……お前は増加する高ランク女性冒険者に対抗してその耐性を得たのではないのか?」
少々慌てる俺。
魔王の耐性が”偽装”だとしたら……。
数百年以上にわたり蓄積されてきた、人類の「魔王監視技術」は超絶ハイレベルである。
そう簡単に逃れられるものじゃないはずだが……。
「ああ、あの人間どもの魔王監視網ですね」
魔王フェルは人差し指に付いたマロンクリームをぺろりと舐め取ると、その金色の双眸をギラリと光らせる。
「乙女の秘密を赤裸々に覗かれるのは超ムカつきますので、魔導設計図をめちゃめちゃに改変したうえで偽情報を流しておきましたっ♪」
「お、おおう……」
きゃるん! と可愛くポーズを取るフェル。
先代、先々代魔王でも手を出せなかったという人類の英知があっさりと破られた現実に戦慄する俺。
もしかして魔王フェルーゼって過去最強なのでは?
そんな彼女が俺の友達になってくれているのである。
世界の為にも彼女を怒らせないようにしようと心に決めるのだった。
「にゃはは☆ フェル様はこんなナリで男子の攻撃がほとんど効かないにゃん!」
「なぜかというとにゃ~?」
俺がひとりで頷いていると、いやらしい笑みを浮かべたポンニャがフェルにしなだれかかる。
「ちょ、ちょっとポンニャちゃん……」
「にゃしし! ほんとうはオトコノコに興味津々のクセに勇気が出なくて(はーと)……もんもんとベッドで自分を慰めるうちに過去最強の男性勇者耐性が……」
「…………」
ブオッ!
額に青筋を浮かべたフェルの拳から蒼い炎が吹き上がる。
バキッ!!
「ぶべらっ!?」
べしゃっ
「……と、いうことで余は男性勇者の攻撃にたいして90%の耐性があります」
「四天王はもちろんですが、中ボスクラスにもそれなりの耐性が付与されます」
「……男性勇者ばかりの現在、時間稼ぎに好都合ですよね?」
フェルの裏拳を食らい、干物のように壁に張り付くポンニャ。
もしかしてアレはわざとやっているのだろうか。
「そうだな……」
俺はフェルの言葉を脳内で反芻する。
今次魔王は女性攻撃耐性100%を持つと認識している勇者候補たち。
その上で、男性の攻撃が完全に防がれるわけではないというのがミソだ。
大幅に時間はかかるだろうが、世界中に散らばる”塔”の攻略もじりじりと進んでいくと思われる。
それに、こちらには現状唯一の女性勇者であるルクアがいる。
つまり、”魔王討伐英雄譚”の進捗具合をある程度俺がコントロールできるという事だ。
今後予想される想定外の事態に備えることも考えて、勇者ルクアの事を詳しくフェルに話した方がいいだろう。
そう判断した俺が口を開こうとした時。
「魔王フェルーゼ様っ! ご歓談中に失礼しますっ!」
ばたん!
慌てた様子でフェルの私室に飛び込んでくる伝令役のハーピィ。
「ご、ゴーリキ様が……勝手に軍をっ!」
「「!!」」
彼女の口から告げられたのは、衝撃の出来事だった。
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