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第7章 帝国学生大演習
第7-4話 魔法格闘少女と姉弟子(後編)
しおりを挟む「ん? クレアのヤツ、どうしたんだ? 対戦相手を前に棒立ちとか、らしくないな?」
勝気な彼女なら、ドヤ顔ポーズで名乗りくらい上げそうなのに……対戦相手の顔を凝視しながら立ち尽くしている。
「もしかして……以前クレアさんから聞いたことがあります。
クレアさんには師匠であるおじいさんがいて……一緒に切磋琢磨した姉弟子が居たそうです」
「その姉弟子さんは、数年前にふらりと行方不明になってしまったそうで……”あたしがこの大演習で優勝したら、姉さんの耳に入るかも!”って冗談めかしながら気合を入れていましたね、そういえば……」
突然行方不明になった姉弟子……クレアが格闘部門の個人戦にやけに入れ込んでいた理由の一つかもしれないな。
ただ、そうなると……。
「クレアさんの格闘スタイルが知られている分、不利かもしれませんね……」
気づかわしげにクレアを見つめるルイ。
決勝戦の開始は、間近に迫っていた。
*** ***
「”姉さん”……どうして、なんでここに……?」
「うふふ、3年ぶりかしら? 私がバンフィールドのお屋敷を出て」
呆然とするクレアから漏れた問いに、どこか懐かしそうに遠くを見るリビエラ。
リビエラは孤児院の出身であり、バンフィールド家に引き取られ、メイドとして働いていた。
屋敷にはほかに年齢の近い女の子がいなかったこともあり、クレアとリビエラは姉妹同然に育ったのだ。
その天性のバネに目を付けたクレアの祖父アルフに格闘術を習うことになり……お姉ちゃんがするならあたしも!
という形で、クレアもアルフに師事することになったのだ。
そんな騒がしくも楽しい生活は……3年前、リビエラの唐突な出奔という形で終わりを告げたのだった。
「お姉ちゃん……3年前、なんでお屋敷からいなくなったの?」
「ふふっ……そうね、バンフィールド家の跡取りとなる貴方とただのメイドだった私……大人になった時このまま”姉妹”を続けられないと思ったのが一つ目の小さな理由……」
「もう一つは…………うふふ、昔から”姉”に頼みごとをするときは、私から一本取ってみなさい、そういってたでしょう、クレア?」
思わず幼い時の口調に戻り出奔の理由を聞くクレア。
リビエラは、遠い目をし、一つ目の理由を語るのだが……にやり、と表情を改めると、構えを取る。
「!!」
その表情とセリフに、”いつも通り”の姉弟子の雰囲気を感じ取ったクレア。
そうだ、幼年学校の宿題を手伝ってもらった時も、気になる男の子に話しかけられなくて相談を持ち掛けたときも、彼女とは拳で語り合ったじゃないか。
リビエラが出奔した本当の理由……それを聞き出すにはまず、彼女からこの拳で一本を取らないと!
「わかった……! 姉さん、あたしは姉さんに勝って、お屋敷を出た理由もちゃんと聞かせてもらうからねっ!」
クレアはいつも通りの勝気な表情に戻ると、ずびしっと拳をリビエラに向けて突き付ける。
「うふっ……貴方の拳がこの3年でどれくらい変わったか、見させてもらうわ!」
クレアの気合に応じるリビエラ。
そうして、いよいよ決勝戦が始まる。
*** ***
「やはり……相手の打撃はクレアさんにはさして効いていませんが……”リジェネーション”の術式が壊されていってます……!」
「クレア……!」
決勝戦が始まって数分……戦いは予想通りの展開を見せていた。
スピードと手数でクレアを圧倒するリビエラ。
彼女の攻撃はクレアにはあまりダメージにならないが、準決勝で見せた謎のスキルにより、”リジェネーション”の回復効果がなくなっていく。
そうなると、ダメージの蓄積により、クレアが不利になるが……。
クレアもそれが分かっているのだろう、力を溜め、勝負に出ようとしている……あれは、彼女が得意とするスタイル!
(……くっ、さすが姉さん、スピードと切れがさらに増している……それに、なぜかわからないけどセシル教官から貰った回復効果がなくなっている?)
(これは、一気に決着をつけるしか!)
「……いいわね、クレア。 でも、耐えるだけでは私は倒せないわよ?」
自分の攻撃は決定的なダメージになっていない……それを察したリビエラだが、同時にそれだけでは自分を倒せないと勝利を確信する。
「……まだまだ!」
ドウッ!
「くっ!?」
そうはさせじと、全身から魔力を放出するクレア。
その圧力に、リビエラの動きが一瞬にぶる。
素早い敵や、多数の敵を相手にする際にクレアが使う奥の手だ。
大量の魔力を消費するため、使う際は次の一撃で勝負を決める必要がある。
「はああああああっっ!」
「悪いけど、これで決めさせてもらうよっ、リビエラ姉さん!!」
わずかな隙を見逃さず、鼻垂れたクレアのフィニッシュブロゥがリビエラを捉え……!
ガスウッ!
……ザッ
「やったっ!」
膝をついたリビエラに、勝利を確信するクレア。
だが……!
「……ふふ、成長したわね、クレア」
「……でも」
キイイイイインンッ!
次の瞬間、リビエラの瞳の奥が金色に輝き、耳障りな振動が辺りを震わせる。
「えっ!? なに、魔力と力が……!?」
「あれは……!!」
スタンドからもはっきりと見えた。
見たことのない構成を持つ術式が、クレアの残り少ない魔力を吸い尽くし……。
バキイッ!
動きの止まったクレアに、リビエラの回し蹴りが炸裂する。
どさっ……
一瞬で意識気を刈り取られ、前のめりに倒れ込むクレア。
審判からのジャッジが入り、個人戦格闘部門の優勝者は、リビエラと発表された。
「……こんなものかしら。 次に会うときは、命の取り合いかもしれないわね、クレア」
そっと紡ぎだされたリビエラのつぶやきは、クレアの耳には届いていなかった。
*** ***
「き~~~~っ! 悔しい悔しい悔しいっ!!」
決勝戦終了後、医務室から戻って来たクレアは悔しさのあまり、地団駄を踏んでいる。
リビエラはすでに姿を消しており、あの謎の術式の事を追求することは出来そうになかった。
「クレアさん、大丈夫です。 これで定番の”負けイベント”が消化できましたから、明日の個人戦”攻撃魔法部門”は、わたしの勝ち確です」
「ありがとうございますっ……!」
「……えっ、あたし……カマセだったの!?」
優勝を逃してなお、いつも通りな教え子たちに安心する。
だが、僕たちは翌日の攻撃魔法部門で、さらなる衝撃に襲われることになる。
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