【魔法翻訳付与】の価値を理解しない脳筋ギルドから望んで追放された青年、魔法学院の教官になり最強クラスを作る ~僕は学院でチヤホヤ充実生活!~

なっくる

文字の大きさ
33 / 34
第7章 帝国学生大演習

第7-4話 魔法格闘少女と姉弟子(後編)

しおりを挟む
 
「ん? クレアのヤツ、どうしたんだ? 対戦相手を前に棒立ちとか、らしくないな?」

 勝気な彼女なら、ドヤ顔ポーズで名乗りくらい上げそうなのに……対戦相手の顔を凝視しながら立ち尽くしている。

「もしかして……以前クレアさんから聞いたことがあります。
 クレアさんには師匠であるおじいさんがいて……一緒に切磋琢磨した姉弟子が居たそうです」

「その姉弟子さんは、数年前にふらりと行方不明になってしまったそうで……”あたしがこの大演習で優勝したら、姉さんの耳に入るかも!”って冗談めかしながら気合を入れていましたね、そういえば……」

 突然行方不明になった姉弟子……クレアが格闘部門の個人戦にやけに入れ込んでいた理由の一つかもしれないな。

 ただ、そうなると……。

「クレアさんの格闘スタイルが知られている分、不利かもしれませんね……」

 気づかわしげにクレアを見つめるルイ。
 決勝戦の開始は、間近に迫っていた。

 ***  ***


「”姉さん”……どうして、なんでここに……?」

「うふふ、3年ぶりかしら? 私がバンフィールドのお屋敷を出て」

 呆然とするクレアから漏れた問いに、どこか懐かしそうに遠くを見るリビエラ。
 リビエラは孤児院の出身であり、バンフィールド家に引き取られ、メイドとして働いていた。

 屋敷にはほかに年齢の近い女の子がいなかったこともあり、クレアとリビエラは姉妹同然に育ったのだ。

 その天性のバネに目を付けたクレアの祖父アルフに格闘術を習うことになり……お姉ちゃんがするならあたしも!
 という形で、クレアもアルフに師事することになったのだ。

 そんな騒がしくも楽しい生活は……3年前、リビエラの唐突な出奔という形で終わりを告げたのだった。

「お姉ちゃん……3年前、なんでお屋敷からいなくなったの?」

「ふふっ……そうね、バンフィールド家の跡取りとなる貴方とただのメイドだった私……大人になった時このまま”姉妹”を続けられないと思ったのが一つ目の小さな理由……」

「もう一つは…………うふふ、昔から”姉”に頼みごとをするときは、私から一本取ってみなさい、そういってたでしょう、クレア?」

 思わず幼い時の口調に戻り出奔の理由を聞くクレア。

 リビエラは、遠い目をし、一つ目の理由を語るのだが……にやり、と表情を改めると、構えを取る。

「!!」

 その表情とセリフに、”いつも通り”の姉弟子の雰囲気を感じ取ったクレア。

 そうだ、幼年学校の宿題を手伝ってもらった時も、気になる男の子に話しかけられなくて相談を持ち掛けたときも、彼女とは拳で語り合ったじゃないか。

 リビエラが出奔した本当の理由……それを聞き出すにはまず、彼女からこの拳で一本を取らないと!

「わかった……! 姉さん、あたしは姉さんに勝って、お屋敷を出た理由もちゃんと聞かせてもらうからねっ!」

 クレアはいつも通りの勝気な表情に戻ると、ずびしっと拳をリビエラに向けて突き付ける。

「うふっ……貴方の拳がこの3年でどれくらい変わったか、見させてもらうわ!」

 クレアの気合に応じるリビエラ。
 そうして、いよいよ決勝戦が始まる。

 ***  ***


「やはり……相手の打撃はクレアさんにはさして効いていませんが……”リジェネーション”の術式が壊されていってます……!」

「クレア……!」

 決勝戦が始まって数分……戦いは予想通りの展開を見せていた。

 スピードと手数でクレアを圧倒するリビエラ。

 彼女の攻撃はクレアにはあまりダメージにならないが、準決勝で見せた謎のスキルにより、”リジェネーション”の回復効果がなくなっていく。

 そうなると、ダメージの蓄積により、クレアが不利になるが……。

 クレアもそれが分かっているのだろう、力を溜め、勝負に出ようとしている……あれは、彼女が得意とするスタイル!

(……くっ、さすが姉さん、スピードと切れがさらに増している……それに、なぜかわからないけどセシル教官から貰った回復効果がなくなっている?)

(これは、一気に決着をつけるしか!)

「……いいわね、クレア。 でも、耐えるだけでは私は倒せないわよ?」

 自分の攻撃は決定的なダメージになっていない……それを察したリビエラだが、同時にそれだけでは自分を倒せないと勝利を確信する。

「……まだまだ!」

 ドウッ!

「くっ!?」

 そうはさせじと、全身から魔力を放出するクレア。
 その圧力に、リビエラの動きが一瞬にぶる。

 素早い敵や、多数の敵を相手にする際にクレアが使う奥の手だ。
 大量の魔力を消費するため、使う際は次の一撃で勝負を決める必要がある。

「はああああああっっ!」

「悪いけど、これで決めさせてもらうよっ、リビエラ姉さん!!」

 わずかな隙を見逃さず、鼻垂れたクレアのフィニッシュブロゥがリビエラを捉え……!

 ガスウッ!

 ……ザッ

「やったっ!」

 膝をついたリビエラに、勝利を確信するクレア。
 だが……!

「……ふふ、成長したわね、クレア」
「……でも」

 キイイイイインンッ!

 次の瞬間、リビエラの瞳の奥が金色に輝き、耳障りな振動が辺りを震わせる。

「えっ!? なに、魔力と力が……!?」


「あれは……!!」

 スタンドからもはっきりと見えた。
 見たことのない構成を持つ術式が、クレアの残り少ない魔力を吸い尽くし……。

 バキイッ!

 動きの止まったクレアに、リビエラの回し蹴りが炸裂する。

 どさっ……

 一瞬で意識気を刈り取られ、前のめりに倒れ込むクレア。

 審判からのジャッジが入り、個人戦格闘部門の優勝者は、リビエラと発表された。

「……こんなものかしら。 次に会うときは、命の取り合いかもしれないわね、クレア」

 そっと紡ぎだされたリビエラのつぶやきは、クレアの耳には届いていなかった。


 ***  ***

「き~~~~っ! 悔しい悔しい悔しいっ!!」

 決勝戦終了後、医務室から戻って来たクレアは悔しさのあまり、地団駄を踏んでいる。

 リビエラはすでに姿を消しており、あの謎の術式の事を追求することは出来そうになかった。

「クレアさん、大丈夫です。 これで定番の”負けイベント”が消化できましたから、明日の個人戦”攻撃魔法部門”は、わたしの勝ち確です」
「ありがとうございますっ……!」

「……えっ、あたし……カマセだったの!?」

 優勝を逃してなお、いつも通りな教え子たちに安心する。

 だが、僕たちは翌日の攻撃魔法部門で、さらなる衝撃に襲われることになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ

よっしぃ
ファンタジー
王都で「神童」の名をほしいままにしていた少年、ディラン・アークライト(17歳)。   剣を握れば騎士団長を唸らせ、魔法を学べば賢者を凌駕する。誰もが彼を「次代の勇者」と信じて疑わなかった。  しかし、運命の職業選定で彼が得たのは――【遊び人】。   それも、三つの職業スロットすべてが【遊び人】で埋まるという、前代未聞の怪現象だった。 「期待外れだ」 「国の恥晒しめ」   掌を返した周囲によって、ディランは着の身着のままで街を追放される。  だが、かつて神童と呼ばれた彼の「分析力」は死んでいなかった。 『……Lv1なのに、ステータスが異常に高い? それに経験値が分散せず、すべて加算されている……?』  彼だけが気づいた真実。  それは【遊び人】という名に偽装された、この世界の管理者権限(Free-Hander)であり、全職業のスキルを制限なく使用・強化できるバグ技(デバッグモード)への入り口だったのだ。  これは、理不尽に捨てられた元・神童が、その頭脳とバグ能力で世界を「攻略」し、同じく不遇な扱いを受けていた美少女騎士(中身は脳筋)と共に、誰よりも自由に成り上がる物語。 【著者プロフィール】アルファポリスより『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』を出版、オリコンライトノベル部門18位を記録。本作は2月に2巻刊行予定。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...