【魔法翻訳付与】の価値を理解しない脳筋ギルドから望んで追放された青年、魔法学院の教官になり最強クラスを作る ~僕は学院でチヤホヤ充実生活!~

なっくる

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第2章 魔法士官学院とかわいい生徒達

第2-4話 【ギルド転落サイド】魔法使いを増やせない?

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「ぐ、ぐうっ……何だこれは、わずか10日間の魔法講師派遣で100万センドだとっ……!?」

 ”物理攻撃力と、物理・魔法防御力の両方を20%向上させる新型Bランク補助魔法”をギルドに導入するように、と共和国大統領キリルから命令されたギルド長アキム。

 彼としてもこの補助魔法の有用性を認めていたので、ギルドの魔法使いどもに魔法を教える外部講師を探していたのだが……。

「高すぎる! しかも、”魔法の習得は受講者の資質に左右される点も大きく、受講者が習得できるかどうかは保証しません”だとっ!?」

「これだけの金を払わせておいて、ふざけているのかっ!!」
「セシルの奴は、タダでやっていたぞ!」

 契約書に記載されている内容に激怒するアキム。


「……はあ、これでも信頼できる魔導業者のうち、一番安い所ですが……彼らの話では、契約条件も値段もこれが普通とのことですが……」

 これ以上を求められましても……と困惑する秘書。

「だめだだめだ! お前も知っているだろう!?」
「昨年作った大型のトレーニング施設……その支払いがまだあと5年もあるのだぞ!」

「魔法ごときに100万センドも投資できるかっ!」

「効果はどうでもいいから、安い業者を探してこい……どうせキリルさんには細かい所までは分からんさ……いいな!」

「……はぁ」

 知りませんよ、という顔で返事をする秘書。

 仕方ない、怪しい外国業者を当たってみるか……。


 後日やってきた1週間20万センドという格安業者は半分詐欺師のようなもので……彼らギルドは”物理・魔法防御力の両方を1%向上させる新型Dランク補助魔法”というカスを掴まされるのだった。

「くっそおおおおおおおっ、キリルさんにはうまくごまかして報告しておけよ!!」

 安物買いの銭失い……アキムの絶叫が執務室に響き渡るのだった。


 ***  ***

「なに……? 今度は”スライム型魔獣”が出現しただと!?」

 先日の魔法講師詐欺の件で、ただでさえイライラしているのに、さらに不快になる報告がギルド長アキムにもたらされる。

 スライム型魔獣は物理攻撃が効きにくい……カント共和国内には生息していなかったはずだが……。

「定期船の船底に付着して侵入したのかもしれません」

「ともかく、大量の退治依頼がギルドに届いており……大統領府からも対処するようにとの命令です」

 くそっ……普通の魔獣退治依頼なら、金にならないから後回しにするところだが、大統領の命令なら仕方ない。

「ぐぬぬ……おい、ギルド内の魔法使いを全員集めろ! 今すぐだ」

「はい……ただ現在、ギルドには3名しか在籍しておらず、しかも初級回復魔法しか使えない連中なので、戦闘の役には立たないかと思いますが」

 今回ばかりは魔法使いに頼るしかないか……焦るアキムはそう秘書に指示したのだが、彼が返答してきたのは驚くべき事実で。

「はぁ!? なんだと!? 通常時は使わせていなかったが、初級の爆炎魔法を使える連中が10人はいただろう!」

「……辞めました」

「なに……!?」

 淡々と事実を述べる秘書。

「つい先日、集団退職すると……なにやら全世界的にスライム型魔獣の出現が増えており、魔法使いの需要が伸びているようですね」

「くそ……そんな報告、聞いてないぞ……! なんとか初級魔法使いだけでも調達できないのか?」
「”ファイア・シュート”を使える奴くらい、すぐ作れるだろう?」

 この件は先日報告しましたが……本当に魔法関係には興味のない人ですね……ため息をつく秘書に無茶なことを言うアキム。

「……無理ですね、新人魔法使いの育成はすべてセシルがやっていましたから」
「いまのギルドにはノウハウがありません」

「おのれセシル……俺に報告もなくそんな重要な仕事をやりやがって……!」

(……ちゃんと報告は上がっていましたよ、読み飛ばしていたのはアナタでしょう?)

 怒りのあまり、メキメキと机を破壊しながら憤るアキム。

「どうします? こんどは攻撃魔法の外部講師を招きますか?」

「ぐぐ……仕方ない……だが、今回のスライム騒ぎには間に合わんな」
「とりあえず高レベルの戦士、格闘スキル持ちを集めろ! 魔力付与済みの武器も忘れるな!」

「……はい」

 マジックアイテム……そちらにも投資してこなかったんであまり数はありませんけどね……。

 ギルドの実態は把握しているが、特に忠告は行わず言われるがままに仕事を進める秘書。

 私はここで甘い汁を吸わせてもらうだけ……スライム退治に向かった連中がどうなろうが知ったことはありませんね。

 ドライな秘書は、淡々と事務処理を片付けるのだった。

 案の定、スライム退治に向かった部下たちは大苦戦、大きな被害を出し……アキムのギルドはごっそりと高レベル冒険者を失うのだった。


 ***  ***

「くそっ……10人以上が戦死または再起不能だと……!」

 報告されたあまりの被害に言葉を失うアキム。

「……それで、流石に彼らには見舞金を払う必要があると思いますが……冒険者連中の不満も高まっています」

「さすがに連中に辞められるのはまずい……ケガ人にはボーナス付きの見舞金を、スライム退治の参加者には、報酬を上乗せしろ!」

 物理攻撃系のジョブで成り立っているギルドが連中に嫌われるわけにはいかない……しぶしぶと追加報酬を認めるアキム。

「そうなると、攻撃魔法の外部講師を招く予算が足りませんが……こちら、最低300万センドからという事です」

「くそっ! くそおおおっ! 仕方ない、キリルさんに借金を申し込むか……」

 ギルドの資金繰りは、だんだんと苦しくなっていくのだった。
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