【最強異世界釣り師】に転身した追放冒険者の釣って釣られる幸せ冒険譚

なっくる

文字の大きさ
上 下
5 / 39
■第1章 追放と思わぬビッグヒット

第1-5話 目覚める新たな力

しおりを挟む
 
 オレの教えた魔法を使い、所有するスキルを確認するフィル。
 金銀の輝きを伴い、数十を超えるスキルカードが空中に踊る。


「フレアバースト」:最上級爆炎魔法、追加効果としてバッドステータスを付与する。
「治癒のパティシエ◎」:最上級回復魔法、消費魔力20パーセント低減。


 などの、華々しい金スキルの他に……。


「オートマッピング」:室内や迷宮の地図を自動作成する。
「緊急転移」:ピンチの際、パーティを安全な場所まで転移させる。
「溢れ出るうま味」:料理のおいしさを250%強化する。料理下手には未対応。


 便利な銀スキルまで……何か変なスキルが混じっていた気がするが、この世界の人間ではありえない数のスキルと、見たことのないスキル。

 ”大”魔導士の称号は伊達じゃないという事か……。

 そのスキルの数に驚いたのはフィルも同じのようで……。

「これがわたくしの”スキル”……!」
「……なにやら見たことのない”魔術”も……って!」

「って、なんでわたくしの料理下手がバレてますのっ!?」

 興味深げに宙に浮かび上がるスキルカードを眺めていたフィルだが、案の定謎の料理スキル?を見て悲鳴を上げる。

 そうか……フィルは料理下手なのか……ゼロは何倍してもゼロだからな。
 ず~ん、と落ち込む彼女に、憐憫の感情が湧いてきたオレは、話題を逸らせてやることにする。

「とまあ、この世界では”スキルカード”というモノを通じて、魔法や技を使うんだ……レアリティや効果の強さによって、”金”、”銀”って呼んだりするね」

「なるほど……基本原理は魔術と同じ……術式を圧縮してカード状に封印しているのですね」

「魔力を通すことで素質の少ない者でも発動を簡単にする……素晴らしい!」
「この構成を考えた魔導士は天才……くふっ、ぜひお目通り願い、教えを請いたいものです」

 な、なるほど……そういう仕組みになっていたのか。
 レジェントクラスの冒険者だった、冒険者学校の講師でも知らないようなスキルカードの秘密を、あっさりと解明するフィル。

 いくら可愛くてポンコツ臭がしても、異世界の大魔導士……真剣な表情を浮かべ、研究者の顔になった彼女の赤い瞳に、ぞくりと背中が総毛だつ。

 だが、そんな張り詰めた空気は次に彼女が起こした無意識の行動により、あっさりと霧散してしまう。

 くうっ……

 大瀑布の水音にも負けない、やけに聞き取りやすい腹の虫が、へそ出しフィルのカワイイお腹から聞こえたのだった。

「~~~っっ!?」

 顔を真っ赤にして恥ずかしがるフィル。
 やれやれ、さっき釣った魚もあるし、美味しいご飯を食べさせてあげますか!


 ***  ***

「なんと……この噛みしめるほどに溢れ出るうま味と、川魚特有の生臭さを消すためのレモングラス……まさに、本格的な宮廷料理……!」

「レイル……あなたがこれほどの超絶技巧を持っていようとは……付け合わせのパンも絶品……街で買ったとのことですが、王宮御用達に違いありません!」
「魚肉とパンの無限サイクルっ! なんて罪作りなんでしょう……!」

 うっとりとした表情を浮かべながら、もの凄い速度でブルーサーモンの塩焼きと、チェーン店のパン屋で買っておいたコッペパンが彼女の胃袋に消えていく。

 ……生臭さが無いのは血抜きの処理をしっかりしたからで、特に香草とか使っていないんだけど……。

 絶対この子庶民だよな……なんにしろ、作った料理をおいしく食べてもらうのは、料理人として最高の喜びである!

 ちなみに、オレは裁縫も得意だ。
 そんな事だから、親友のロンドから「女子力高いんだから冒険者じゃなく、貴族に婿入りしたらどうだ?」とからかわれるんだけど。

 冗談じゃない!と、その時は言ったのだけれど……目の前のフィルの姿と18歳健康男子なオレの脳内妄想が重なる。

 普段は気高い美脚お嬢様……だけど、オレとふたりっきりの時は従順になり……恥ずかしそうな表情を浮かべつつも、そのすらりとした脚でオレの……。


「……ねえ」

「ねえレイル、聞いていますか!? このパンをどこで買ったのかと……!」


「……はっ!?」


 おおう、うららかな春の日差しの中、思わず妄想トリップしていたぞ。

 フィルの声に我に返るが、思ったより近くから聞こえたその声にどきりとしてしまう。

「えっ!? フィル?」

 気が付けば目の前にフィルの顔があった。

 きめが細かく、すべすべした褐色の肌。
 興奮しているのか、もちもちな頬が赤い。

 彼女の吐息すら感じられる距離に、思わず目線を下に逸らすが……。

「っっ!?」

 ほのかなふくらみの向こうに見える彼女のすらりとした脚。
 オレの座っている丸太に掛かる膝小僧は、オレのズボンの真ん中に触れそうで……。

 うわわわわっ!?

 この子無防備すぎだろっ!?
 いくらなんでも刺激が強すぎる……それでもオレの目線は彼女の脚に釘付けで……。

 ちょっとフィル、近すぎるって!

 さすがにこのままでは身が持たない、さりげなく彼女の身体を離すんだ……そう思ったオレは、フィルの肩に手を掛けたのだが。


 パアアアアアアッ!


 その瞬間、銀色の光がオレとフィルを包む。

「えっ!? なんですのこれ!」

 これは、スキル発現の光っ!?
 なんでこんなタイミングで……!

 光の中から現れたのは、オレが見たこともない”銀スキル”だった。

「はああああ!? なんだこのスキル!」

 オレの素っ頓狂な叫びが、辺りに響き渡るのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅
ファンタジー
およそ30年前、地球にはダンジョンが出現した。それは人々に希望や憧れを与え、そして同時に、絶望と恐怖も与えた──。 最弱探索者高校の底辺である宝晶千縁は今日もスライムのみを狩る生活をしていた。夏休みが迫る中、千縁はこのままじゃ“目的”を達成できる日は来ない、と命をかける覚悟をする。 千縁が心から強くなりたいと、そう願った時──自宅のリビングにダンジョンが出現していた! そこでスキルに目覚めた千縁は、自らの目標のため、我が道を歩き出す……! 7つの人格を宿し、7つの性格を操る主人公の1読で7回楽しめる現代ファンタジー、開幕! コメントでキャラを呼ぶと返事をくれるかも!(,,> <,,) カクヨムにて先行連載中!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

処理中です...