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■第1章 追放と思わぬビッグヒット
第1-5話 目覚める新たな力
しおりを挟むオレの教えた魔法を使い、所有するスキルを確認するフィル。
金銀の輝きを伴い、数十を超えるスキルカードが空中に踊る。
「フレアバースト」:最上級爆炎魔法、追加効果としてバッドステータスを付与する。
「治癒のパティシエ◎」:最上級回復魔法、消費魔力20パーセント低減。
などの、華々しい金スキルの他に……。
「オートマッピング」:室内や迷宮の地図を自動作成する。
「緊急転移」:ピンチの際、パーティを安全な場所まで転移させる。
「溢れ出るうま味」:料理のおいしさを250%強化する。料理下手には未対応。
便利な銀スキルまで……何か変なスキルが混じっていた気がするが、この世界の人間ではありえない数のスキルと、見たことのないスキル。
”大”魔導士の称号は伊達じゃないという事か……。
そのスキルの数に驚いたのはフィルも同じのようで……。
「これがわたくしの”スキル”……!」
「……なにやら見たことのない”魔術”も……って!」
「って、なんでわたくしの料理下手がバレてますのっ!?」
興味深げに宙に浮かび上がるスキルカードを眺めていたフィルだが、案の定謎の料理スキル?を見て悲鳴を上げる。
そうか……フィルは料理下手なのか……ゼロは何倍してもゼロだからな。
ず~ん、と落ち込む彼女に、憐憫の感情が湧いてきたオレは、話題を逸らせてやることにする。
「とまあ、この世界では”スキルカード”というモノを通じて、魔法や技を使うんだ……レアリティや効果の強さによって、”金”、”銀”って呼んだりするね」
「なるほど……基本原理は魔術と同じ……術式を圧縮してカード状に封印しているのですね」
「魔力を通すことで素質の少ない者でも発動を簡単にする……素晴らしい!」
「この構成を考えた魔導士は天才……くふっ、ぜひお目通り願い、教えを請いたいものです」
な、なるほど……そういう仕組みになっていたのか。
レジェントクラスの冒険者だった、冒険者学校の講師でも知らないようなスキルカードの秘密を、あっさりと解明するフィル。
いくら可愛くてポンコツ臭がしても、異世界の大魔導士……真剣な表情を浮かべ、研究者の顔になった彼女の赤い瞳に、ぞくりと背中が総毛だつ。
だが、そんな張り詰めた空気は次に彼女が起こした無意識の行動により、あっさりと霧散してしまう。
くうっ……
大瀑布の水音にも負けない、やけに聞き取りやすい腹の虫が、へそ出しフィルのカワイイお腹から聞こえたのだった。
「~~~っっ!?」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるフィル。
やれやれ、さっき釣った魚もあるし、美味しいご飯を食べさせてあげますか!
*** ***
「なんと……この噛みしめるほどに溢れ出るうま味と、川魚特有の生臭さを消すためのレモングラス……まさに、本格的な宮廷料理……!」
「レイル……あなたがこれほどの超絶技巧を持っていようとは……付け合わせのパンも絶品……街で買ったとのことですが、王宮御用達に違いありません!」
「魚肉とパンの無限サイクルっ! なんて罪作りなんでしょう……!」
うっとりとした表情を浮かべながら、もの凄い速度でブルーサーモンの塩焼きと、チェーン店のパン屋で買っておいたコッペパンが彼女の胃袋に消えていく。
……生臭さが無いのは血抜きの処理をしっかりしたからで、特に香草とか使っていないんだけど……。
絶対この子庶民だよな……なんにしろ、作った料理をおいしく食べてもらうのは、料理人として最高の喜びである!
ちなみに、オレは裁縫も得意だ。
そんな事だから、親友のロンドから「女子力高いんだから冒険者じゃなく、貴族に婿入りしたらどうだ?」とからかわれるんだけど。
冗談じゃない!と、その時は言ったのだけれど……目の前のフィルの姿と18歳健康男子なオレの脳内妄想が重なる。
普段は気高い美脚お嬢様……だけど、オレとふたりっきりの時は従順になり……恥ずかしそうな表情を浮かべつつも、そのすらりとした脚でオレの……。
「……ねえ」
「ねえレイル、聞いていますか!? このパンをどこで買ったのかと……!」
「……はっ!?」
おおう、うららかな春の日差しの中、思わず妄想トリップしていたぞ。
フィルの声に我に返るが、思ったより近くから聞こえたその声にどきりとしてしまう。
「えっ!? フィル?」
気が付けば目の前にフィルの顔があった。
きめが細かく、すべすべした褐色の肌。
興奮しているのか、もちもちな頬が赤い。
彼女の吐息すら感じられる距離に、思わず目線を下に逸らすが……。
「っっ!?」
ほのかなふくらみの向こうに見える彼女のすらりとした脚。
オレの座っている丸太に掛かる膝小僧は、オレのズボンの真ん中に触れそうで……。
うわわわわっ!?
この子無防備すぎだろっ!?
いくらなんでも刺激が強すぎる……それでもオレの目線は彼女の脚に釘付けで……。
ちょっとフィル、近すぎるって!
さすがにこのままでは身が持たない、さりげなく彼女の身体を離すんだ……そう思ったオレは、フィルの肩に手を掛けたのだが。
パアアアアアアッ!
その瞬間、銀色の光がオレとフィルを包む。
「えっ!? なんですのこれ!」
これは、スキル発現の光っ!?
なんでこんなタイミングで……!
光の中から現れたのは、オレが見たこともない”銀スキル”だった。
「はああああ!? なんだこのスキル!」
オレの素っ頓狂な叫びが、辺りに響き渡るのだった。
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