4 / 39
■第1章 追放と思わぬビッグヒット
第1-4話 異世界のお嬢様(?)と、新たなスキルを確認しよう
しおりを挟むオレのことを自分を召喚した「異世界の神」と勘違いしている、滝つぼから釣れた異世界の少女フィアナルティーゼ。
誤解されたまま話が進むと厄介だ。
オレは興奮する彼女をなだめ、この世界のこと、オレのことを一つずつ丁寧に説明する。
最初はまさかの展開に目を白黒させていた彼女だが、説明が進むにつれ、だんだんと理解してくれたようだ。
「それでは……レイルは神様ではなく、普通の人間で、私を釣り竿で釣り上げたという事ですのね……それは興味深い」
「この世界では、ある程度腕に覚えがある者は”冒険者”を目指すのが普通と……確かに、周囲の森に魔物の気配が多くあります……わたくしの世界に比べ、物騒ですね」
「”魔術使い”による討伐は進んでいないのですか?」
彼女の言う”魔術”とは、”魔法”の事だろうか。
「冒険者育成学校を中心に、魔法の研究は進んでいるんだけど……強力な攻撃魔法スキルは発現率が低くて……」
「モンスターの討伐は、打撃スキルを持つ冒険者が、街の近くで地道に行っているんだ」
「ただ、モンスターのネスト (巣)にまでは、なかなか手が出せなくて……」
「なるほど……”魔術”については、わたくしたちのロゥランドの方が進んでいるようですね……」
実は魔法のことはからっきしな、オレのたどたどしい説明を聞いて考えこむフィアナルティーゼ。
まぁ、そういう難しいことはおいおい話すとして……オレとしては目の前にいるカワイイ女の子と仲良くしたいな!
そう考えたオレは、口調を明るいものへと改め、フランクに語り掛ける。
「詳しくはオレの家に魔法書があるから、後で持ってくるよ!」
「それより、お互い年齢も近いみたいだから……キミのこと愛称で呼んでいいかな?」
「ええ、それはもちろん大丈夫ですが……その書物は見せてくださいね、絶対ですわよっ!」
話を聞いていると、彼女は16歳、オレは18歳……ほぼ同世代と言ってもいいだろう。
オレの申し出に、快く頷いてくれる彼女。
魔法書の存在に食い気味になる様子から、魔法使いらしく、知的好奇心にあふれている子であることが分かる……魔法書とか、読んでると眠くなるんだけどな。
オレは気を取り直すと、異世界に来てしまった彼女が不安にならないよう、努めて優しい声色を意識して、彼女の名前を呼ぶ。
フィアナルティーゼという名前だから愛称はこちらのキレイな言葉に引っ掛けて……。
「困ったことがあったら何でも力になるから。 これからよろしく、ア○ル!」
……ん?
自分の喉から発せられた声に何か違和感があったような……具体的に言うと、ピー音が入ったような……?
「あれ? もう一度……これからもよろしくね、ア○ル」
まただ……首をかしげていると、目の前の彼女が顔を真っ赤にして震えている。
なにかあったのだろうか?
「なっ……なっ……なあっ……」
「いきなりア○ル呼びなんて……レイル、ハレンチですわぁ~っ!」
ぱこん!
やけに前時代的な表現と共に、彼女が投げた金属製のマグカップが、オレの鼻先にクリーンヒットしたのだった。
*** ***
「……大変失礼しました。 まさかこちらの世界では別の意味があったとは……」
更に鼻を赤くしたオレに、彼女が謝罪の言葉をかけてくれる。
こちらの世界の言葉では、”美しい花”を差す意味の古語なんだってば!
顔を真っ赤にして怒り出した彼女をなだめようと必死に説明したオレ。
これも異文化コミュニケーション……彼女はすぐに納得してくれたのだが。
「申し訳ないのですが、先ほどの呼び名は……わたくしの世界では、お嬢様的に少々お下品感満載のFワードですので……わたくしのことはフィルと呼んで頂けますか?」
恥ずかしそうに頬を染めながら、やけにお嬢様感のない表現を使うフィル。
それは全く問題ないのだけれど……先ほどからどうしても気になることがあって。
「わかったよ、フィル。 これからもよろしく」
「……それで一つ聞きたいんだけど、先ほどから”ア○ル”と声に出すと、なんかピー音が入るんだけど、これってなんなの?」
思わず聞いてしまった……今回もきっちり入るピー音。
「もう! ア○ルと呼ばないでと言っているでしょう!」
「これは、宮廷付大魔導士である、わたくしの開発したお嬢様魔術ですわっ!」
「……お嬢様魔術?」
いきなり意味不明なことを言い始めたフィルに、思わずオウム返しで聞き返してしまう。
「色とりどりの花が咲き乱れる上流社会……生き馬の目を抜く世界で戦う、わたしくたちお嬢様のために開発した、やらかしを未然に防止する究極魔術……」
「それがお嬢様魔術なのです……!」
……やけに芝居がかった動作でお嬢様魔術とやらを説明するフィル。
下品な言葉を口走ったときにピー音が入るのなら、下品なことを言ったのがバレるのでは?
言葉の節々から感じるポンコツ臭に思わず生暖かい視線を送ってしまう。
その時、ぴこん!という音を立て、フィルの胸元に”失言おもらし防止姫”なる、謎の銀スキルが発動するのが見えた。
”失言おもらし防止姫”……最初のスキル発現者には、命名権がある (ユニークスキル除く)とはいえ酷いネーミングだな……彼女のセンスに一抹の不安を覚えたオレだが、スキルの発現自体が彼女には意外だったようで……。
「ふえっ!? なんですのこの銀色の光はっ……ていうかなんでわたくしだけが知るこの魔術の名前がおおやけにっ!?」
胸元にスキルカードを輝かせながら、慌てる彼女の様子が面白く、思わず吹き出したオレは、この世界の”スキル”についてフィルに説明してやる。
「はえ~、スキルに関してはこの世界は進んでますのね~」
オレの説明に、感心しきりのフィル。
……おい、膝がゆるんで下着見えるって……さらにアホ面晒さないように。
ぷっ……。
やけに気を抜いた、上流階級風 (仮)のお嬢様とは思えない親しみやすい様子に、思わず頬が緩んでしまう。
「じゃあ、フィルのスキルを見せてくれよ。 ここに書いてあるマジックワードを唱えたら、一覧が見れるからさ」
彼女が発現させたスキルが気になる……そう思ったオレは、学生手帳を開き、スキル確認の魔法をフィルに教える。
「ふんふん……こうですね」
ぱああああああっ!
あっさりと魔法を理解したフィルは、スキル一覧のコマンドワードを唱える。
光と共に空中に表示されたスキルに、オレは思わず息を飲む。
表示された彼女のスキルは、驚くべきものだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる