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■第1章 追放と思わぬビッグヒット
第1-4話 異世界のお嬢様(?)と、新たなスキルを確認しよう
しおりを挟むオレのことを自分を召喚した「異世界の神」と勘違いしている、滝つぼから釣れた異世界の少女フィアナルティーゼ。
誤解されたまま話が進むと厄介だ。
オレは興奮する彼女をなだめ、この世界のこと、オレのことを一つずつ丁寧に説明する。
最初はまさかの展開に目を白黒させていた彼女だが、説明が進むにつれ、だんだんと理解してくれたようだ。
「それでは……レイルは神様ではなく、普通の人間で、私を釣り竿で釣り上げたという事ですのね……それは興味深い」
「この世界では、ある程度腕に覚えがある者は”冒険者”を目指すのが普通と……確かに、周囲の森に魔物の気配が多くあります……わたくしの世界に比べ、物騒ですね」
「”魔術使い”による討伐は進んでいないのですか?」
彼女の言う”魔術”とは、”魔法”の事だろうか。
「冒険者育成学校を中心に、魔法の研究は進んでいるんだけど……強力な攻撃魔法スキルは発現率が低くて……」
「モンスターの討伐は、打撃スキルを持つ冒険者が、街の近くで地道に行っているんだ」
「ただ、モンスターのネスト (巣)にまでは、なかなか手が出せなくて……」
「なるほど……”魔術”については、わたくしたちのロゥランドの方が進んでいるようですね……」
実は魔法のことはからっきしな、オレのたどたどしい説明を聞いて考えこむフィアナルティーゼ。
まぁ、そういう難しいことはおいおい話すとして……オレとしては目の前にいるカワイイ女の子と仲良くしたいな!
そう考えたオレは、口調を明るいものへと改め、フランクに語り掛ける。
「詳しくはオレの家に魔法書があるから、後で持ってくるよ!」
「それより、お互い年齢も近いみたいだから……キミのこと愛称で呼んでいいかな?」
「ええ、それはもちろん大丈夫ですが……その書物は見せてくださいね、絶対ですわよっ!」
話を聞いていると、彼女は16歳、オレは18歳……ほぼ同世代と言ってもいいだろう。
オレの申し出に、快く頷いてくれる彼女。
魔法書の存在に食い気味になる様子から、魔法使いらしく、知的好奇心にあふれている子であることが分かる……魔法書とか、読んでると眠くなるんだけどな。
オレは気を取り直すと、異世界に来てしまった彼女が不安にならないよう、努めて優しい声色を意識して、彼女の名前を呼ぶ。
フィアナルティーゼという名前だから愛称はこちらのキレイな言葉に引っ掛けて……。
「困ったことがあったら何でも力になるから。 これからよろしく、ア○ル!」
……ん?
自分の喉から発せられた声に何か違和感があったような……具体的に言うと、ピー音が入ったような……?
「あれ? もう一度……これからもよろしくね、ア○ル」
まただ……首をかしげていると、目の前の彼女が顔を真っ赤にして震えている。
なにかあったのだろうか?
「なっ……なっ……なあっ……」
「いきなりア○ル呼びなんて……レイル、ハレンチですわぁ~っ!」
ぱこん!
やけに前時代的な表現と共に、彼女が投げた金属製のマグカップが、オレの鼻先にクリーンヒットしたのだった。
*** ***
「……大変失礼しました。 まさかこちらの世界では別の意味があったとは……」
更に鼻を赤くしたオレに、彼女が謝罪の言葉をかけてくれる。
こちらの世界の言葉では、”美しい花”を差す意味の古語なんだってば!
顔を真っ赤にして怒り出した彼女をなだめようと必死に説明したオレ。
これも異文化コミュニケーション……彼女はすぐに納得してくれたのだが。
「申し訳ないのですが、先ほどの呼び名は……わたくしの世界では、お嬢様的に少々お下品感満載のFワードですので……わたくしのことはフィルと呼んで頂けますか?」
恥ずかしそうに頬を染めながら、やけにお嬢様感のない表現を使うフィル。
それは全く問題ないのだけれど……先ほどからどうしても気になることがあって。
「わかったよ、フィル。 これからもよろしく」
「……それで一つ聞きたいんだけど、先ほどから”ア○ル”と声に出すと、なんかピー音が入るんだけど、これってなんなの?」
思わず聞いてしまった……今回もきっちり入るピー音。
「もう! ア○ルと呼ばないでと言っているでしょう!」
「これは、宮廷付大魔導士である、わたくしの開発したお嬢様魔術ですわっ!」
「……お嬢様魔術?」
いきなり意味不明なことを言い始めたフィルに、思わずオウム返しで聞き返してしまう。
「色とりどりの花が咲き乱れる上流社会……生き馬の目を抜く世界で戦う、わたしくたちお嬢様のために開発した、やらかしを未然に防止する究極魔術……」
「それがお嬢様魔術なのです……!」
……やけに芝居がかった動作でお嬢様魔術とやらを説明するフィル。
下品な言葉を口走ったときにピー音が入るのなら、下品なことを言ったのがバレるのでは?
言葉の節々から感じるポンコツ臭に思わず生暖かい視線を送ってしまう。
その時、ぴこん!という音を立て、フィルの胸元に”失言おもらし防止姫”なる、謎の銀スキルが発動するのが見えた。
”失言おもらし防止姫”……最初のスキル発現者には、命名権がある (ユニークスキル除く)とはいえ酷いネーミングだな……彼女のセンスに一抹の不安を覚えたオレだが、スキルの発現自体が彼女には意外だったようで……。
「ふえっ!? なんですのこの銀色の光はっ……ていうかなんでわたくしだけが知るこの魔術の名前がおおやけにっ!?」
胸元にスキルカードを輝かせながら、慌てる彼女の様子が面白く、思わず吹き出したオレは、この世界の”スキル”についてフィルに説明してやる。
「はえ~、スキルに関してはこの世界は進んでますのね~」
オレの説明に、感心しきりのフィル。
……おい、膝がゆるんで下着見えるって……さらにアホ面晒さないように。
ぷっ……。
やけに気を抜いた、上流階級風 (仮)のお嬢様とは思えない親しみやすい様子に、思わず頬が緩んでしまう。
「じゃあ、フィルのスキルを見せてくれよ。 ここに書いてあるマジックワードを唱えたら、一覧が見れるからさ」
彼女が発現させたスキルが気になる……そう思ったオレは、学生手帳を開き、スキル確認の魔法をフィルに教える。
「ふんふん……こうですね」
ぱああああああっ!
あっさりと魔法を理解したフィルは、スキル一覧のコマンドワードを唱える。
光と共に空中に表示されたスキルに、オレは思わず息を飲む。
表示された彼女のスキルは、驚くべきものだった。
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