2 / 39
■第1章 追放と思わぬビッグヒット
第1-2話 フィッシング・ミーツ・ガール
しおりを挟む不思議な老人が手渡してきた、グランミスリルの釣り糸。
ソイツを筒から取り出した瞬間、オレに新しいスキルが発現する。
この世界の”スキル”は謎が多く、本人が潜在的に保持しているスキルが何かのきっかけに現れるとか、女神の贈り物なので運のいい人間に現れるとか、はたまた先祖からの遺伝だとか……いろいろな説があって結論は出ていないが、今回のように何かのきっかけで発現するという事、取得するのにスキルポイントが必要だという事は確かだ。
オレはさっそく、自分に発現したスキルを確認する。
おお……”金”が2つとか、ラクウェル冒険者学校でも数年に一人レベルの発現率だぞ……!
「激流の太公望」:荒れた海面、川など激しい水面での釣りが出来るようになり、釣果が2倍になる
「深淵の接続者」:グランミスリルのラインに魔力を込めると異世界に繋がる
「激流の太公望」……これはおなじみ釣りスキルだ。
「静水の太公望」と対になるスキルっぽい。
……だからなんで釣りスキルばっかりなんだよ……落胆しかけたオレの目は、2つ目の金スキルに釘付けになる。
……なんだこれ?
こんなスキルは見たことが無い……オレは慌てて学生手帳から、スキル一覧のページを探し出す。
今まで数百種類は確認されている金スキル……その中に「深淵の接続者」というスキルは存在しなかった。
まさか……”ユニークスキル”か……?
世界で初めて確認されたスキルをそう呼ぶ……ユニークスキルを持った人間は、一気にトップ冒険者の仲間入りをしてもおかしくないのだが……。
オレは、震える指でスキルを選択し……スキルポイントを消費して習得する。
大丈夫、スキルポイントは有り余っている。
パアアッ……
オレの身体が金色の光に包まれ、身体の奥が熱くなる……ふぅ、この感覚は何度体験しても気持ちいいな……。
数秒後、光が消え……これでオレは2つの金スキルを使えるようになったはずだ。
「なあ、おじいさん、これをどこで……」
手に入れたんだ?
グランミスリルの釣り糸と不思議な金スキル……もう少し詳しく聞いておこうと、振り返ったオレの目に映ったのは、誰もいない草原だった。
「え? さっきまで気配があったのに……?」
曲がりなりにも冒険者の卵なオレに気配を察知させずにいなくなるとは……。
つくづく変な老人である……っと、とりあえず……せっかく金スキルを2つも習得したんだ。
どこかで試してみたいな……きっかけはどうあれ、正直大儲けである。
オレはうきうきと釣り具を片付けると、別の場所へと移動した。
*** ***
「さてと……この辺りでいいかな?」
オレの目の前には落差100メートル、幅数百メートル以上はある巨大な滝が、轟音を立てている。
世界でも有数の滝……ラクウェル大瀑布である。
噂では滝つぼの深さが100メートルはあるとか……川面は荒れ狂っており、ふつうこんな場所で釣りは出来ない。
オレはドキドキしながらミスリルファイバーの釣り竿を組み立て、じいさんから貰ったグランミスリル製のラインを通す。
「激流の太公望」を発動させ、疑似餌を付けた仕掛けを滝つぼへと投げ込む。
普通は激流に翻弄され、釣りにならないのだけど……。
「うおおお、すげぇ!」
シュン!
僅かにスキルの発動音がしたかと思うと、流されるはずの仕掛けが流水をかき分け、滝つぼの奥へと入っていく。
……数分後、オレの両腕は体長1メートルはあるブルーサーモンの巨体を抱えていた。
コイツは激しい水流のある場所を好み、釣り上げるのが大変難しい釣り人憧れのターゲット……これでオレは王国有数のアングラーにっ!
……などと一人で盛り上がってしまったが、もう一つの”金スキル”も試してみないとな……正直謎のスキルにビビってるので、わざとはしゃいでいたのだ。
冒険者学校でスキル鑑定してもらうべきかなぁ……そんな常識的な考えが頭をもたげるが、すでにラクウェル冒険者学校を放校されていることを思い出し、がっくりと膝をつく。
野良鑑定士に頼むとスキルをパクられることもあるらしいし……ええいっ、男は度胸だっ!
ウジウジしてるのは自分らしくない!
オレはそう思いなおすと、仕掛けを重量のあるルアーに付け替えると、滝つぼの中心目掛け、思いっきりキャストする。
ルアーが着水する瞬間を狙い、「深淵の接続者」を発動させる。
ぽちゃん!
なにかとんでもないことが起きたらどうしよう……身構えるオレをあざ笑うかのように、あっさりと水中に潜っていくルアー。
「……へっ? 何も起きないけど……?」
まさかハズレか?
落胆の色を隠せないオレ……あきらめて仕掛けを引き上げようとした時、突然それは起きた。
フイイイイイインンンッ!
ズズズズズズ……
「うわっ!? ライン (釣り糸)が一気に出ていくっ!」
水面が紫色に怪しく光り……水流が渦を巻き、仕掛けがググっと引っ張られる。
リールがものすごい勢いで逆回転し、釣り糸がどんどん伸びていく……10メートル、20メートル……止まらない。
どう見ても滝つぼの水深より深く……150メートルほど釣り糸が出て行った瞬間、水面がさらに強く輝き、爆発的に盛り上がる。
ズドオオオオオオンンンッ!
「うわわわっ、今度はリールがっ!?」
爆発と同時にものすごい勢いでリールが回転し、釣り糸を巻き取っていく。
ザバアッ!
何か大きなものが、水面から飛び出す。
「きゃああああああああっっ!? なんですかこれえええええっっ!?」
「……はあ?」
銀色と紫色の固まりは、やけに澄んだ悲鳴をあたりに響かせながら大空に放物線を描く。
「ふぎゅう”えっ!?」
その塊はだんだんと少女の形をとると、やけに汚い悲鳴と共に、川面に突き出ていた木の枝に引っかかり……ぷら~んと宙にぶら下がる。
「……きゅう」
「……なんだこれ」
呆然と立ち尽くすオレと目を回している少女……これがこの世界の在り方を変えたかもしれない、ひとりの少女との出会いだった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
補助魔法しか使えない魔法使い、自らに補助魔法をかけて物理で戦い抜く
burazu
ファンタジー
冒険者に憧れる魔法使いのニラダは補助魔法しか使えず、どこのパーティーからも加入を断られていた、しかたなくソロ活動をしている中、モンスターとの戦いで自らに補助魔法をかける事でとんでもない力を発揮する。
最低限の身の守りの為に鍛えていた肉体が補助魔法によりとんでもなくなることを知ったニラダは剣、槍、弓を身につけ戦いの幅を広げる事を試みる。
更に攻撃魔法しか使えない天然魔法少女や、治癒魔法しか使えないヒーラー、更には対盗賊専門の盗賊と力を合わせてパーティーを組んでいき、前衛を一手に引き受ける。
「みんなは俺が守る、俺のこの力でこのパーティーを誰もが認める最強パーティーにしてみせる」
様々なクエストを乗り越え、彼らに待ち受けているものとは?
※この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも公開しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~
なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆
「申し訳ないが、ウチに必要な機械を使役できない君はクビだ」
”上の世界”から不思議な”機械”が落ちてくる世界……機械を魔法的に使役するスキル持ちは重宝されているのだが……なぜかフェドのスキルは”電話”など、そのままでは使えないものにばかり反応するのだ。
あえなくギルドをクビになったフェドの前に、上の世界から潜水艦と飛行機が落ちてくる……使役用の魔法を使ったところ、現れたのはふたりの美少女だった!
彼女たちの助力も得て、この世界の技術レベルのはるか先を行く機械を使役できるようになったフェド。
持ち前の魔力と明るさで、潜水艦と飛行機を使った世界最強最速の運び屋……トランスポーターへと上り詰めてゆく。
これは、世界最先端のスキルを持つ主人公が、潜水艦と飛行機を操る美少女達と世界を変えていく物語。
※他サイトでも連載予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる