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4 : DAY4 ブラックギルドマネージャー、一計を案じる
しおりを挟む「訓練もせずに実戦投入ですか……それはさすがに」
近い将来、ギルドのエースになれる逸材!
勢い込んで報告に行った私を待ち受けていたのは、無情なパトリックさんの指示だった。
「近年の魔法の進化をスピードを考えれば、間もなく戦士など不要になることが分からないのかね?
”竜の牙”では魔法使いを優先してスカウトしている件は君も知っているだろう!」
「ともかく、今重要なのはギルドランクを下げない事なのだ……わかったらとっととモンスター退治の依頼を進めたまえ」
がちゃん!
ギルドマスター室の扉が閉まり、私はあっさりと部屋を追い出されたのだった。
「まったく……最近、”耐性”持ちのモンスターが出現し始めているから、戦士が再評価されてるというのに……」
パトリックさんの情報源は”セミナー”なので、どうしても最新の冒険者トレンドから遅れている。
しかも、客寄せのためセミナー開催者は大げさに参加者を煽る傾向がある。
「読みづらいけど、毎週配信される”協会”の冒険詳報くらい読んで欲しいよな……」
思わず愚痴が口をつく。
戦士軽視のギルド方針により、先月も中堅どころが2人も移籍したのだ。
ステファンを育て上げないと、ギルドの先行きは暗い……。
使命感に駆られた私は、パトリックさん案件の期日に多少の余裕がある事を確認すると、手ごろな依頼をいくつかピックアップする。
手っ取り早く彼に経験を積ませるのだ。
チーフマネージャーの権限で、ギルドの備品である獲得経験値上昇効果のあるアクセサリーを貸与することも忘れない。
実際に”モンスター退治”をしていれば、パトリックさんも文句をつけてくるまい。
「こ、こんな貴重なマジックアイテムを貸していただけるなんて……僕、がんばります!!」
意気揚々とスライム退治に向かうステファンを、微笑ましい気持ちで見送った。
このペースなら、本来の手配モンスター退治の前にある程度レベルを上げられるだろう。
「ふふっ、さすが”人材育成のクレイ”ですね~」
「”協会”の訓練プログラムを受講させたら、目ざといパトリックさんは絶対口出してきますからね」
「”実地訓練”はいい案だと思います」
セレナさんが、ミルクコーヒーとショートケーキを私の執務室に持ってきてくれる。
さきほどのやり取りを聞いていたようだ。
「まあ、”手ごろな依頼”を紹介してくれる仲介業者さんのおかげですけどね」
「仲介業者が良くしてくれるのは、クレイさんの人徳ですよ~」
ストレートなセレナさんの称賛に、思わず頬を掻く。
私が良く使っている仲介業者のアドワークス、以前少しだけ助けたことがあるだけだが。
彼らが良い依頼を紹介してくれるのは、善良な企業だからだろう。
「それでは……今日は仕事が片付いたので、お先に失礼します」
「はい、お疲れさまでした~」
セレナさんに見送られ、ギルドを退勤する。
久しぶりに明るいうちに帰れるな……アルの好物をお土産に買って帰ろう……私は鼻歌を歌いながら、マーケットがある方に向かうのだった。
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