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第17話 楽しい学院生活編 その3 ロリちゃんと高飛車お嬢様(おまけの壁男子)登場

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「はーい、おまえら。 今日は新入生を紹介するぞ……ヨーゼフ家からの推薦で、1か月の短期留学だが、おまえらと一緒に学んでもらう……というか、色々教えてもらえ?」

「ということで、ふたり、自己紹介なー。 うーい」

 仕事は終わった、とばかりに、ワインを瓶ごと煽るイレーネ先生。 特Aクラスの生徒たちは、慣れているのか、特に反応を示さない。

 さて、こういうのは第一印象が肝心だ……愛らしいリリちゃんキャラで、好感度を稼がねばなるまい……って、アレ?

 オレは、ある事に気づく。

 教室自体は、普通の教室だ。
 三人掛けの机が左右にふたつ、奥に5列。 教室の最後部には、生徒用のロッカーが並んでいる。

 魔法学院らしく、床には魔法陣が描かれ、窓や天井には対魔法コーティングが掛けられているが、特段、変わった点はない。
 席についている生徒が、3人しかいないことをのぞけば……

「……先生、インフルエンザでも流行ってるんですか? やけに生徒が少ないですが……」

「あー、言ってなかったっけ? 特Aクラスはキミ達を入れても5人だよ。 上位クラスの才能を持った学生が、そんなにいるわけないじゃん。 ひっく」

「ああああ、しまったー!!」

 当然と言えば、当然の理由にオレは思わず頭を抱える。

 そうだった……上位クラスの魔導士なんて、人間族にはちょっとしかいないんだった……サナがたまたまレベルSの才能を持ってるからと、感覚がマヒしていたぜ……

 や、やばい! これでは、リリちゃんうはうはハーレム計画が……面接で手を抜いて、Cクラスにしとくんだった……

「あー、オレ、リリ・グレイト13歳。 ドラゴン……のように強いしカワイイので、つきあいたい奴は連絡よろしくー……はぁ」

 テンションダダ下がりなオレは、自己紹介しながら、改めて教室を見渡す。

 右側列の一番前に座っているのは、オレンジの髪をツインテールにした、子供っぽい女の子。

「おおお、どらごんさんのように強いとか、期待しちゃいます! しかも、かわいい……」

 なにやら、適当なオレの自己紹介に刺さるところがあったようだ。 ふむ、人懐っこそうなタレ目、柔らかそうな手足……胸は0.6サナと、そこそこあるが、合格ラインだろう……せめてもの救いだ。

「……ヨーゼフ家からの推薦ですって……七光り……いや、本当に実力者の可能性も……(きっ!)」

 ツインテール子の2つ後ろに座ってるのは、オレ達より少し年上か? 豊かな金髪を縦巻きロールにしている。 おほほほ! とでも笑い出しそうな、気の強そうな瞳……見たところ、お嬢様っぽいな。あとでスキャンしよう。

 胸は……おっ! 0.2サナじゃないか! そこは大合格だ!

 もう一人……左側前列に座っているのは……なに!? 男だとっ!? 学園もので出てくる男は、モブか主人公の友人だけではないのか!? 今回の場合、オレの友人はサナだから、こいつはモブのはずだが……

 無害そうな糸目……のほほんとお茶を飲んでいる。 どちらにしろ、男なのでどうでもいいか……。

 まあ、攻略対象がゼロじゃなかっただけでも、ヨシとするか……聖典(ギャルゲー)によれば、体育や、水泳などは、他のクラスの女子と合同授業が行われるそうだ。 隣のクラスに転入してきた、素敵な転校生……まだこのシチュならいける!

「みなさん、初めまして! わたし、サナっていいます! リリ様の愛人兼今カノとして、毎夜ご奉仕してます!」

 ざわっ!!

 オレは、妄想に沈んでいて、サナの奴がとんでもない自己紹介をした事に気付かなかった。

 ***  ***

「ほーい、それでは自己紹介も済んだな。 今日は午前自習、午後には課外活動(クエスト)の依頼が入ってるから、13時にはグラウンドに集合するように―。 じゃ、ウチは研究があるんで、後はよろしくー。 ういー」

 言う事だけ言うと、先生は出てってしまった。 特Aクラスというだけあって、座学より実践がメインのようだ……放任されてるとも言えるが……

「ねっねっ! せっかく新しい子が入ったんだから、みんな改めて自己紹介しよう! こっちにあつまってー!」

 ツインテールの子が、クラスメイトに声をかけ、一つの机にみんなで集まる。 ちょうどいい、攻略対象の事をよく知ることが大事だしな!

 ささっ、とサナがスナック菓子を取り出し、机の上に広げる。 おお、さすがオレの下僕。よく気が利くじゃないか。

「ありがとー、サナちゃん♪ それじゃー、私からだね!」

「私、ハンナ・バシュ! ハンナって呼んでね! 歳は14歳でーす! 得意魔法は水属性! おいしいジュースを飲みたいときは言ってね! 何でも合成しちゃうから!」

 朗らかに、ハンナが自己紹介し、パタパタとツインテールが揺れる。 なかなかカワイイ。 水系の合成魔法が得意なのか……長時間の探索を行うときに重宝しそうなスキルだ。

 ……くんくん。 オレの敏感・ノーズスキャンの結果は……レベルA、中流階級の出身……ふむ、そこそこやるじゃん。

「……じゃあ、次! クリスちゃん!」

「……ちょっとハンナ、先に人の名前を言わないでくださる? ……こほん! わたくしの名は、クリスティーネ。 クリスティーネ・アスマンですわ! 15歳で最上級生! かの高名な電撃魔法の大家の長女! アナタたちも当然ご存じでしょう?」

 自信たっぷりに自己紹介するクリス。 高笑いが聞こえてきそうだ。

「アゲマン? サナ、知ってるか?」

「リリ様、少しお待ちください……いまワキペディアで……えー、”900年前から王宮魔導士の家系、伝統的に高名な雷系魔導士を輩出する。 近年は優秀な魔導士を輩出できず、家の威光に陰りが出ており、投資の失敗から、財政難との噂も……”」

「……キー!! おふたりとも、アスマン家の事を知らないんですの!? しかもなんですか、そのワキペディアの記事! ゴシップネタ書いた奴は誰ですの!?」

 オレ達がアゲマン?家を知らなかったことがショックなのか、頭を抱えて叫ぶクリス。
 なかなかリアクションが面白い奴だ……速攻ワキペディアの記事を書き換えてやがる……マメだな。

「まあまあ、オレ達辺境の出身だから……よろしく、アゲマン先輩」

「アスマンですわ!」

 ぐぎぎ、と悔しがるクリス。 おっと、スキャンしないと……レベルはB? 名家の跡取りとして期待されるも才能は平凡……泥臭い努力を重ね、魔法学院の推薦を勝ちとった……か、

 意外に努力家じゃねーか。嫌いじゃねーぜ。

「じゃあ、最後は……グスタフ君!」

「初めましてっす! 僕、グスタフ・カール。 14歳っす。 得意魔法は防御魔法! 盾役は任せてほしいっす!」

 無害そうなモブが挨拶してくる……一応スキャンを……庶民階級、レベルS!?

 なんと! 防御に特化してるよーだが、コイツが一番レベル高いとか……そうか、モブにも多少の個性を……女神の粋な采配という事か。 防御魔法はSSSランクの使い手オレがいるから、用無しだろう。強く生きろよ……。

「よーし、これで全員だね! 短い間だけど、よろしくね、リリちゃん、サナちゃん!」

「ああ、よろしくだ」

「ふふ、よろしくお願いします、みなさん」

 テンポの良いハンナのしゃべりに、思わず笑顔になるオレ達。 ふふ、こういうのも才能だな……この無垢な笑顔が、どういうふうにオレ色に染まるのか……楽しみだぜ

「リリ様リリ様、最初くらい欲望は隠しましょう」

「んでんで、次に二人のこと聞きたいんだけどー、サナちゃんって本当に”愛人さん”なの?」

「……(顔を真っ赤にするクリス)」

 と、いたずらっぽい顔をして、とんでもないことを聞いてくるハンナ。 ちょ、まて、いつの間にそのことを!?

「はい。わたしが愛人1号になります! このように、リリ様は愛らしくかつ大変なイケメンですので、各地に愛人N号がおられます。 現時点で5人ほど……」

「きゃーーー! この愛らしい姿でハーレムとは! きゃーーーー!!」

「あ、アナタ! 不潔、不潔不埒ですわっ!!」

「(鼻血ぶー)」

 三者三葉の反応を示すクラスメイト達。 サナこの野郎! とんでもない紹介しやがって! 間違って……はいないけど、第一印象サイアクじゃねーか!

 オレはサナに飛び掛かると、お仕置きを始めた。

「ああん、リリ様! そこ、そこです。 もっと強くぅ!」

「んほおおお!? これが、これが愛のえすえむプレーだねっ! キャー! おっとなー!」

 じ、事態が悪化してる気がする……午前の教室に、オレ達の騒ぎ声がこだまするのだった……。
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