上 下
9 / 27

第9話 メイド少女と貴族の陰謀編 その2 攻略はまずメイドから

しおりを挟む
 
「わかったぞ! アーバンロリ攻略には、まず使用人から攻めるんだ!」

「はい?」

 世の中の真理を発見し、興奮して叫ぶオレを、怪訝な顔で見つめるサナ。
 ここは、オレ達が滞在してるシティホテル(断じて宿屋ではない。そこそこ高級)の一室。

 昨日は街をめぐって、サナに高級香水と、魔導通信端末アルカディアを買ってやった。今は暇つぶしに対戦ゲームで遊んでいたところだ。

 オレのコンボ技がサナの操作キャラにヒットした瞬間、先程の真理が天から降りてきた。これはもう、神託といえよう。

 説明しよう! オレはアーバンロリをゲットしたい! アーバンロリと言えば、そこそこ上流階級に違いなく、簡単には会えない。だが、金持ちは使用人を雇っているはず……使用人はおそらく純朴な小間使いの少女、オレの魅力で落とすことはたやすい。

 ……実は彼女は、小さな時から仲の良い、お嬢様が唯一心を許せる存在なのだ……そこをきっかけに、お嬢様であるアーバンロリを攻略する……おお、完璧だ!

「は、はあ、それは大変そうですね……いっそのこと、催眠魔法で誘惑して、ヤッちゃえばいいんじゃないですか? リリ様の催眠魔法なら一発ですよね」

「ばかもの!」

「あいたっ」
 無粋なことを言うサナを、チョップで成敗する。

 あのな、高根の花を徐々に攻略していく過程が最高なんだろうが……その先に待つ深窓の令嬢……誰にも見せたことのない、みずみずしい肢体が目の前に……リリちゃん興奮してきたぜ……

「……わたしのこと、妄想色ボケ巨乳ヒロインといつも罵倒されますが、リリ様もたいがいじゃないですか?」

 サナめ……自虐風自分上げを使ってきたな……あとだんだん地が出てきてるぞ……最初は清楚系おどおどヒロインを装っていたよーだが。

「それはともかく、街に出るぞ! 狙うのは……使用人少女が通ってそうな、大衆店だ!」

「あっ、リリ様、待ってください~」

 うう、興奮してきたぞ……身支度を整えたオレは、外に飛び出した。


 ***  ***

 リーベの街は、北にある元領主の屋敷(現在は知事を兼ねた、貴族が住んでいるらしい)を中心に、周囲にその他貴族、豪商などが住む高級住宅街がある。

 それより南側が、庶民の街となっているのだが、まず攻めるべきは、高級住宅街に隣接する商店街だな!

 地図を見ながら、目的の商店街に移動する。 上流階級もたまに来るんだろう。魔導灯が設置され、道路は舗装されており、水路まで整備されている。

 ……おお、きれいな水が流れる水路で、ロリが遊んでいるじゃないか……なかなかかわいいが、あの子たちからは庶民オーラが出ている。
 今回の目的はアーバンロリなのだ!

「リリ様、意外に節操ないですよね……ほら、そこのカフェとかいいんじゃないですか? 小綺麗だけど、落ち着いてて親しみやすい感じです」

 思わず本能でロリに引き寄せられるオレの腕を引っ張り、サナが適当なカフェを見繕ってくれた。

 ほう……落ち着いた雰囲気の店先には、いくつかのテーブルと椅子が並べられ、パラソルで日よけが作ってある。
 コーヒーと紅茶、付け合わせのケーキのいいニオイが漂ってくる。 お客も、普通の住民が多いようだ。
 よし、この店にするか。

 オレ達は店員に二人連れであることを告げ、店内が一望できる奥の席に案内してもらった。

「ほぅ……この紅茶とロールケーキ、絶品ですね……またわたしの胸が大きくなってしまいます……」

「……ケーキの栄養が全部胸に行くのか……?」

 オレ達は、とりあえずケーキと茶を注文すると、客の観察を始めた。 時刻はそろそろ午後2時……昼食の準備と片付けが終わり、使用人(主にメイドさん)は、休憩時間のはずだ。

「……女の子をゲットするための、そのあくなき探求心、素直に感心します……」

 お、それっぽい子が来たぞ……!

 店先に、一人の女の子が現れ、エスプレッソとチーズケーキを注文すると、オレ達の隣のテーブルに座る。
 ほほう……歳は大体13歳くらいか。 シックなスタイルのメイド服に身を包んだ少女。 艶やかな青髪をハーフアップにまとめ、化粧っ気の薄い頬は、とても柔らかそう。

 ほのかな気品を感じさせる、大きな瞳は落ち着いた黒。何より、胸元が平坦だ……! 90点!!
 なにかに困ったような、少しアンニュイな表情が素敵だ……ため息までついている。

「なるほど……胸は0.3サナくらいだな……実にいい!」

「リリ様……わたしを単位にしないでください……。 それにしても、かわいらしいメイドさんですね。わたしと同い年くらいでしょうか……でも、何か困っているような」

「うん、これはチャンスかもしれない! 早速行くぜ!」

 ここは行くべきだ! オレの数千年に及ぶナンパ経験が大チャンスと叫んでいるぜ……オレは表情とキャラを一瞬で作ると、メイド少女の席に移動した。

「こんにちは! おねーちゃん! どうしたの、なにか元気ないね?」

 オレは、メイド少女に話しかけると、コトリと首をかしげる。 リリちゃんの愛らしさ全開だぜ……

(……す、すごくかわいいですが、キャラづくりが別の意味で怖いです……)

 褒めてくれてありがとう、サナ。 オレはもう一押しとばかり、隣に腰掛け、ん? と上目遣いでメイド少女の顔を見つめる。

「えっ!? アナタは……えっと……か、かわいい……ふわぁ (なでなで)」

 いきなりで最初は驚いたみたいだが、すぐにリリちゃんの魅力に気付いたようだ。可憐な手で、オレの金髪を撫でてくれる。 き、気持ちいい……

「んふふ~~、くすぐったいよ、おねーちゃん」
「ふふっ……どうしたの? お母さんとはぐれたの?」

 おお、なんだ? 気品あふれるこの慈愛に満ちた微笑みは……オレ、アーバンロリじゃなくて、この子でいいかも……

(リリ様、本題本題!)

 はっ!? サナの叱咤で目が覚めた……そうだな、アーバンロリお嬢様攻略のため、このメイド少女を落とすんだった。

「ううん。 ワタシは、そこの緑の子と一緒に旅をしているんだ。 なんか、おねーちゃんが困っているみたいだから気になって。 こう見えてもわたしたちは冒険者トレジャーハンターだよ? 何でも言ってみて」

 オレが目配せすると、ぺこりとサナも挨拶する。 女の子パーティであることに安心したのか、メイド少女は自分のことを話し出した。

「ふふ、小さいのに凄いのね……。 わたしの名前は、エルナ。 この街の知事様のお屋敷にお勤めしてるんだけど、お嬢様から困ったことを申し付けられてしまって……」

「ん~、困ったことって?」

「知事様……ヨーゼフ家はこの地域の元領主で貴族様なんだけど、一人娘である、お嬢様の生誕祭が来週開かれるの。そこで、お嬢様がお召しになるドレスを飾る”精霊の花”を探してきなさいと言われてしまったのだけれど」

 精霊の花……この世界の魔導の根幹をなす、7種の魔法力……それを取り込み、100年に一度咲くと言われる、奇跡の花である。

 普通に買おうとすれは、100万公国マルクはくだらないだろう……なかなかの無茶ぶりだな……

「いろいろ情報を集めた結果、この街の北に広がる山脈に咲いてるらしい……でも、よりにもよって、咲いている場所が霊峰の頂上近く、しかも守護者が守っている洞窟みたいで……」

「何人かの冒険者に提案したんだけれど、危険すぎると断られてしまって……このままでは私、お暇を申し渡されるかも……そうなると、どうやって生きていけばいいか」


 よほど困っているのか、すべての事情を教えてくれるエルナ。
 なるほど、お嬢様の無茶ぶりに困っていると……その”精霊の花”さえとってくれば、エルナちゃんをゲットしたうえに、お嬢様にも接触可! 完璧だ。

「わかったよ、おねえちゃん! ワタシたちが取ってきてあげる。任せて!」

「え、でも危険なんじゃ……」

「だーいじょうぶ! ワタシたちは凄腕なんだから。 あ、お代は後でいいよ。 よっし、サナちゃん、行こう!」
「あっ……」

 オレ達は、反論の隙を与えず、店を出た。 サナもエルナの連絡先を聞いてから、追いかけてくる。 お、助かる。まめな奴だ。

「ああ、先程のぶりっ子リリ様……なんと天使なんでしょう……ぜひ次のプレイではあのキャラづくりで……」

「プレイとか言うな(ぺしっ)」
 あいかわらず妄想全開なサナの暴走を止めておく。

「でもリリ様、リーベの街北方の霊峰と言えば……標高6,500メートル、ベテランの冒険者でも容易に近づけない、難易度Sランクダンジョンと書いてありますが、どうやって登るおつもりですか?」

 サナが、魔導通信端末(アルカディア)で調べた情報を教えてくれる。 そんなの……

「飛んでいけばいいじゃん」

「はいっ?」

「オレ、元ドラゴン。 羽根出せる。オールオッケー」

「……なんか、ずるくないですか?」

 スキルだ、スキル。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...