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第9話 メイド少女と貴族の陰謀編 その2 攻略はまずメイドから
しおりを挟む「わかったぞ! アーバンロリ攻略には、まず使用人から攻めるんだ!」
「はい?」
世の中の真理を発見し、興奮して叫ぶオレを、怪訝な顔で見つめるサナ。
ここは、オレ達が滞在してるシティホテル(断じて宿屋ではない。そこそこ高級)の一室。
昨日は街をめぐって、サナに高級香水と、魔導通信端末を買ってやった。今は暇つぶしに対戦ゲームで遊んでいたところだ。
オレのコンボ技がサナの操作キャラにヒットした瞬間、先程の真理が天から降りてきた。これはもう、神託といえよう。
説明しよう! オレはアーバンロリをゲットしたい! アーバンロリと言えば、そこそこ上流階級に違いなく、簡単には会えない。だが、金持ちは使用人を雇っているはず……使用人はおそらく純朴な小間使いの少女、オレの魅力で落とすことはたやすい。
……実は彼女は、小さな時から仲の良い、お嬢様が唯一心を許せる存在なのだ……そこをきっかけに、お嬢様であるアーバンロリを攻略する……おお、完璧だ!
「は、はあ、それは大変そうですね……いっそのこと、催眠魔法で誘惑して、ヤッちゃえばいいんじゃないですか? リリ様の催眠魔法なら一発ですよね」
「ばかもの!」
「あいたっ」
無粋なことを言うサナを、チョップで成敗する。
あのな、高根の花を徐々に攻略していく過程が最高なんだろうが……その先に待つ深窓の令嬢……誰にも見せたことのない、みずみずしい肢体が目の前に……リリちゃん興奮してきたぜ……
「……わたしのこと、妄想色ボケ巨乳清楚天才ヒロインといつも罵倒されますが、リリ様もたいがいじゃないですか?」
サナめ……自虐風自分上げを使ってきたな……あとだんだん地が出てきてるぞ……最初は清楚系おどおどヒロインを装っていたよーだが。
「それはともかく、街に出るぞ! 狙うのは……使用人少女が通ってそうな、大衆店だ!」
「あっ、リリ様、待ってください~」
うう、興奮してきたぞ……身支度を整えたオレは、外に飛び出した。
*** ***
リーベの街は、北にある元領主の屋敷(現在は知事を兼ねた、貴族が住んでいるらしい)を中心に、周囲にその他貴族、豪商などが住む高級住宅街がある。
それより南側が、庶民の街となっているのだが、まず攻めるべきは、高級住宅街に隣接する商店街だな!
地図を見ながら、目的の商店街に移動する。 上流階級もたまに来るんだろう。魔導灯が設置され、道路は舗装されており、水路まで整備されている。
……おお、きれいな水が流れる水路で、ロリが遊んでいるじゃないか……なかなかかわいいが、あの子たちからは庶民オーラが出ている。
今回の目的はアーバンロリなのだ!
「リリ様、意外に節操ないですよね……ほら、そこのカフェとかいいんじゃないですか? 小綺麗だけど、落ち着いてて親しみやすい感じです」
思わず本能でロリに引き寄せられるオレの腕を引っ張り、サナが適当なカフェを見繕ってくれた。
ほう……落ち着いた雰囲気の店先には、いくつかのテーブルと椅子が並べられ、パラソルで日よけが作ってある。
コーヒーと紅茶、付け合わせのケーキのいいニオイが漂ってくる。 お客も、普通の住民が多いようだ。
よし、この店にするか。
オレ達は店員に二人連れであることを告げ、店内が一望できる奥の席に案内してもらった。
「ほぅ……この紅茶とロールケーキ、絶品ですね……またわたしの胸が大きくなってしまいます……」
「……ケーキの栄養が全部胸に行くのか……?」
オレ達は、とりあえずケーキと茶を注文すると、客の観察を始めた。 時刻はそろそろ午後2時……昼食の準備と片付けが終わり、使用人(主にメイドさん)は、休憩時間のはずだ。
「……女の子をゲットするための、そのあくなき探求心、素直に感心します……」
お、それっぽい子が来たぞ……!
店先に、一人の女の子が現れ、エスプレッソとチーズケーキを注文すると、オレ達の隣のテーブルに座る。
ほほう……歳は大体13歳くらいか。 シックなスタイルのメイド服に身を包んだ少女。 艶やかな青髪をハーフアップにまとめ、化粧っ気の薄い頬は、とても柔らかそう。
ほのかな気品を感じさせる、大きな瞳は落ち着いた黒。何より、胸元が平坦だ……! 90点!!
なにかに困ったような、少しアンニュイな表情が素敵だ……ため息までついている。
「なるほど……胸は0.3サナくらいだな……実にいい!」
「リリ様……わたしを単位にしないでください……。 それにしても、かわいらしいメイドさんですね。わたしと同い年くらいでしょうか……でも、何か困っているような」
「うん、これはチャンスかもしれない! 早速行くぜ!」
ここは行くべきだ! オレの数千年に及ぶナンパ経験が大チャンスと叫んでいるぜ……オレは表情とキャラを一瞬で作ると、メイド少女の席に移動した。
「こんにちは! おねーちゃん! どうしたの、なにか元気ないね?」
オレは、メイド少女に話しかけると、コトリと首をかしげる。 リリちゃんの愛らしさ全開だぜ……
(……す、すごくかわいいですが、キャラづくりが別の意味で怖いです……)
褒めてくれてありがとう、サナ。 オレはもう一押しとばかり、隣に腰掛け、ん? と上目遣いでメイド少女の顔を見つめる。
「えっ!? アナタは……えっと……か、かわいい……ふわぁ (なでなで)」
いきなりで最初は驚いたみたいだが、すぐにリリちゃんの魅力に気付いたようだ。可憐な手で、オレの金髪を撫でてくれる。 き、気持ちいい……
「んふふ~~、くすぐったいよ、おねーちゃん」
「ふふっ……どうしたの? お母さんとはぐれたの?」
おお、なんだ? 気品あふれるこの慈愛に満ちた微笑みは……オレ、アーバンロリじゃなくて、この子でいいかも……
(リリ様、本題本題!)
はっ!? サナの叱咤で目が覚めた……そうだな、アーバンロリお嬢様攻略のため、このメイド少女を落とすんだった。
「ううん。 ワタシは、そこの緑の子と一緒に旅をしているんだ。 なんか、おねーちゃんが困っているみたいだから気になって。 こう見えてもわたしたちは冒険者だよ? 何でも言ってみて」
オレが目配せすると、ぺこりとサナも挨拶する。 女の子パーティであることに安心したのか、メイド少女は自分のことを話し出した。
「ふふ、小さいのに凄いのね……。 わたしの名前は、エルナ。 この街の知事様のお屋敷にお勤めしてるんだけど、お嬢様から困ったことを申し付けられてしまって……」
「ん~、困ったことって?」
「知事様……ヨーゼフ家はこの地域の元領主で貴族様なんだけど、一人娘である、お嬢様の生誕祭が来週開かれるの。そこで、お嬢様がお召しになるドレスを飾る”精霊の花”を探してきなさいと言われてしまったのだけれど」
精霊の花……この世界の魔導の根幹をなす、7種の魔法力……それを取り込み、100年に一度咲くと言われる、奇跡の花である。
普通に買おうとすれは、100万公国マルクはくだらないだろう……なかなかの無茶ぶりだな……
「いろいろ情報を集めた結果、この街の北に広がる山脈に咲いてるらしい……でも、よりにもよって、咲いている場所が霊峰の頂上近く、しかも守護者が守っている洞窟みたいで……」
「何人かの冒険者に提案したんだけれど、危険すぎると断られてしまって……このままでは私、お暇を申し渡されるかも……そうなると、どうやって生きていけばいいか」
よほど困っているのか、すべての事情を教えてくれるエルナ。
なるほど、お嬢様の無茶ぶりに困っていると……その”精霊の花”さえとってくれば、エルナちゃんをゲットしたうえに、お嬢様にも接触可! 完璧だ。
「わかったよ、おねえちゃん! ワタシたちが取ってきてあげる。任せて!」
「え、でも危険なんじゃ……」
「だーいじょうぶ! ワタシたちは凄腕なんだから。 あ、お代は後でいいよ。 よっし、サナちゃん、行こう!」
「あっ……」
オレ達は、反論の隙を与えず、店を出た。 サナもエルナの連絡先を聞いてから、追いかけてくる。 お、助かる。まめな奴だ。
「ああ、先程のぶりっ子リリ様……なんと天使なんでしょう……ぜひ次のプレイではあのキャラづくりで……」
「プレイとか言うな(ぺしっ)」
あいかわらず妄想全開なサナの暴走を止めておく。
「でもリリ様、リーベの街北方の霊峰と言えば……標高6,500メートル、ベテランの冒険者でも容易に近づけない、難易度Sランクダンジョンと書いてありますが、どうやって登るおつもりですか?」
サナが、魔導通信端末(アルカディア)で調べた情報を教えてくれる。 そんなの……
「飛んでいけばいいじゃん」
「はいっ?」
「オレ、元ドラゴン。 羽根出せる。オールオッケー」
「……なんか、ずるくないですか?」
スキルだ、スキル。
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