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第2話 夢見がちな獣人少女、最強幼女の下僕となる

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 はい、わたしの名前、サナです。苗字はありません。獣人族の女の子です。年齢は13歳。

 辺境の村に住んでいたのですが、村長たちが秘密の畑で……あの、ケシの花を育てているところ、サナ見ちゃいました。

 たぶん、貴族マフィアに卸す、危ない薬の材料でしょう。サナ、知っています。

 これは、いけません……村の駐在さんに通報しなければ……わたしは駐在さんの家に向かったのですが、何という事でしょう。

 村長と駐在さんはグルでした……こんな山奥の村なのに、テンプレ的な腐敗をしているとは、驚きです。わたしはなすすべもなく捕まり、口封じとして、人身売買業者に売られてしまいました。

 あの、よく考えなくても酷くないですか……辺境の村とか、普通はスローライフだと思うんです。こんな、アングラな犯罪に巻き込まれてしまうなんて……ああ、サナちゃん、なんて悲劇的な女の子でしょうか……

 その後、色々と転売されたあげく、わたしは一人の奴隷商のおじさんの手に渡りました。不幸中の幸いだったのは、獣人女が趣味の人がいなかったので、えっちされなかった事です。わたしも清らかな乙女ですので、助かりました。

 ですが、この後には、お金持ちの変態貴族の元に売られ、調教されちゃうんでしょうか……ああでも、貴族ならもしかして……倒錯的な行為の果てに愛が芽生え、玉の輿という可能性も……?

 などど妄想していましたが、大筋では逃げることもできず、荷車で運ばれていたのです。

 その時、外で争うような声と、衝撃音が聞こえ、静かになりました。

 もしかして、助けが来たのでしょうか……サナちゃんは悲劇のヒロイン属性ですから、きっと王子様か勇者様だと思います!

 期待に胸を高鳴らせるわたしの前に現れたのは……態度のデカい女の子でした……。

 輝く金髪をポニーテールにまとめた、とってもかわいい女の子。 わたしより2つ、3つ年下でしょうか。

 あふれ出る生命力と、自信に満ちた魅力的な表情。 わたしはその女の子の立ち振る舞いに、一瞬で心を奪われてしまいました。

 感激で頬が紅潮するのを感じます。わたしは、震える声で尋ねました。

「あの、あなた様が……助けてくれたのですか……? わたし、サナって言います。 せめてお名前を……教えていただけないでしょうか」

「……えっ!? オレか? オレは……えーと、リリ・グレイト! ちゃんとおぼえとけよ!」

 鈴の音のような、かわいくも、はっきり通る声……ああ、これがいわゆる、”イケメンオーラ”という奴でしょうか……はい、このサナ! 一生忘れません!

 それなのに、次にリリ様が放った言葉は……

「だが、オレは巨乳が嫌いなんだ。 何もしないから、カエレ!!」

「……はっ?」

 ああ神様、助けてくれた女の子はイケメンでしたが、何もせずに帰れと言われました。
 流れ、おかしくないですか?

 ***  ***

 よう、えーっと、リリだ。

 名前を聞かれて、つい昔キャバクラで口説いたエンシェントドラゴン女の名前を言ってしまったぜ……まあいい、オレはリリ、リリ・グレイトだ!

 意外にかわいい響きだな……とっさに出たにしては、我ながらいい名前じゃんか。

 それにしても、この獣人族の女、サナとか言ったな……この巨乳以外は完ぺきなんだが……くそ。

 いきなり帰れと言われて驚いたのか、サナはぽかん、としている。

 ん、もしかして帰り道が分らないのか……? まあ、地元の村くらいまでなら、運んでやってもいいが……オレは女の子には紳士なのである。

「ああ、いきなりなのでびっくりしてしまいました……リリ様、なんとお優しいのでしょう……”本当はお前の豊満な肉体に惹かれるが、お前にも家族がいるだろう、家に帰るんだな”……こういう事ですよね」
「ご安心ください! わたしは村のビッチが、行きずりの男とワンナイトして出来ちゃった生まれですので、正式な両親は不明です! ぜひ気にせずにお連れ下さいませ」

 ……おいおい、コイツ、ヘビーな過去をそんな軽く言うとは……さらにオレが言ったことを物凄く曲解してないか?

「えーと、サナって言ったね……オレ、そんな意味で言ったんじゃないんだけど……文字通り、趣味じゃないから帰れって意味なんだけど……」

 オレは困惑しながら、サナを諭す。

「なるほど、”敵はさっきの奴隷商だけではない、キミがここにいては危険だ。すぐにこの場を離れなさい”、という事ですね! 大丈夫です。わたし、役に立ちます!」

 この女、人の話を全く聞く気がない……魔法で眠らせて、どっかの村に捨ててこようか……オレが今後の対処を思案していると……

「あっ!? リリ様、わたしを助けるときにお怪我を!? すみません、すぐ癒させていただきます!」

 え、この膝の傷? これはさっき空から落ちたときに付いたんだけど……すぐ治るし、大丈夫だ……

 オレは断ろうとしたものの、予想よりはるかに素早い動きでサナは近づいてくると、手のひらをオレの膝に当てた。

 フアアァァ……

 暖かな、オレンジ色の光がオレの膝を包む……これは、か?

 サナの魔法力に反応し、隠れていた光の翼と尻尾が現れる……これは、
 光が消えたとき、膝の傷とドラゴン・ブレスの使用で減ったオレの魔力は、すっかり回復していた。

「驚いた……これはハイ・プリーストクラスの回復魔法……これを、どこで?」

「はい、実は行きずりの男が、特Aクラスのプリーストだったようで、わたしにもこんな力が……今まで積極的には使わなかったんですけど」

 サナが優しく微笑む。なるほど、これは拾い物かもしれないな……

「…………あら、リリ様、この光輝く尻尾はいったい……まあ、なんて立派なんでしょう(すりすり)」

「!? えっ、サナ!? きゃうん!」

 いきなりサナが、オレの尻尾を撫でてきた……ちょっとまて、そこは敏感なんだ……

「もう、リリ様、かわいい声を出しちゃって……ああ、でも素晴らしい手触り……思わず抱きしめたくなってしまいます」

 むにっ

 おおっ!? こいつの巨乳が!? くっ……なんという柔らかさと弾力だ……だが、ここはロリコンの矜持にかけて、屈するわけには!

 むにむにっ、さわさわ、むにゅん!

「んんあああぁ……きゃああああああ!?(即落ち)」

 森の中に、リリのかわいい断末魔の悲鳴(意味深)が響き渡ったのだった……

 ***  ***

 ううう、凄かった、凄かったぞ……この女、危険だ……
 だが、あの回復魔法は魅力的だな……尻尾に触らせないように気を付ければ……。

「ふぅ、ふぅ……よ、よし、サナ。 しょうがないから、一緒に来るか? 下僕として、せいぜいオレの役に立て!」

「はい、リリ様! よろしくお願いします!」

 サナは即決し、輝くような笑顔をオレに向けてくる……その豊かな胸を揺らしながら。

 ……たまには挟まれるのもいいかも……

 リリが調教される日も近いかもしれない……

 リリ様ファンクラブ(ゴールド) 0→1人
 リリ様ファンクラブ(ブロンズ) 0→0人
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