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第36話 アリスの謝罪
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「ほんとうに、ごめんなさいっ!」
ばっ!
リビングに入るなり、深々と頭を下げるアリス。
「アリス、どうかしていたの!」
「アリスのせいで、ゆゆにめいわくを掛けて。
タクミにも大けがを……」
アリスの双眸からこぼれた涙が床に水たまりを作る。
「俺はもう、全く問題ないから!」
彼女か元に戻ってくれただけで充分である。
俺のケガを直してくれたのはアリスだしな。
「ほら、顔を上げて。
せっかく来てくれたんだからお茶でも飲もう」
「タクミ……」
優しくアリスの頭を撫でてやる。
「Wow!?」
不意打ちだったのか、顔を真っ赤にするアリス。
「最終的にみんな無事だったんだから、万事オッケーだよ。
それより、アリスちゃんは大丈夫だったの?
レイニさんは、魔力を使い過ぎたって言ってたけど……」
ユウナの話では、俺に回復魔法を掛けた後、アリスは呆然とその場に座り込んでいたらしい。救援部隊と一緒に到着したレイニさんが彼女を背負ってダンジョンを脱出したとのことだが……。
「そう、そのレイニよ!」
レイニさんの名前が出た途端、形の良いアリスの眉が吊り上がる。
ぷくりと頬を膨らませ、たいへんご立腹のようだ。
「マジェになんかヘンなモノを取り付けていたのよ!
そのせいでマジェは丸2日寝込んじゃったし!」
ちゃり
アリスがポーチから取り出したのは、小さな宝石のついたアクセサリ。
「これは……」
アリスからアクセサリを受け取り、まじまじと観察する。
一見ただの装飾品のようだが、宝石がはめられた台座はミスリル銀で出来ており、青い宝石にも魔法的な仕掛けがされていそうだ。
少なくとも、愛玩用モンスター向けグッズを扱うペットショップで売られているようなものじゃない。
「タクミ君、僕にも見せてくれるかな?」
俺はアクセサリをマサトさんに手渡す。
「これは!」
アクセサリを一目見た途端、マサトさんの顔色が変わる。
「兄貴、ヤバいアイテムなの?」
「ヤバいも何も……」
かぶりを振るマサトさん。
「強力なティム効果を持ったアイテムだ」
「それって!」
モンスターを操る効果があるという事だ。
それがピンクカーバンクルのマジェに着けられていたという事は……。
「ピンクカーバンクルは、強力な夢幻の力を持つと言われている。
マジェをティムしその力を使い、アリス嬢の感情を操作していたということか?」
「え? 一体何のためにそんなことを?」
困惑気味なユウナの言葉に同意する。
アリスとゆゆを仲たがいさせ、ファンを対立させる。
そうすることで一体レイニさんたちに何の得があるのだろうか?
「もしかして……」
「うむ……」
信じたくない話ではあるが、もしライバルであるゆゆが邪魔ならスキャンダルを流すとか配信中の事故に見せかけて怪我をさせる、などの策が考えられる。
「とはいえ」
先日の配信の様子はすべて公開されており、今もSNS上で物議をかもしている。
ゆゆだけでなくアリスの公式ちゃんねるも荒れており、フォロワーもあまり増えなくなっていた。
「タクミ君の考えは分かるが、さすがに悪手だろう」
「ですよね」
アリスのフォロワーを増やすのが目的なら、まったく逆効果だ。
「そんな……」
俺たちの話を聞いて、ぷるぷると震えるアリス。
「あ……」
アリスの前でする話ではなかったかもしれない。
「マジェを使って、アリスを操ってたの!?
アリスはそんなレイニの陰謀にのって、ゆゆを傷つけそうになって、タクミに大けがを……」
アリスの目には涙が溜まり、顔面は蒼白になっている。
「ご、ごめん!
これはただの推測だから!」
「うええん……」
「そ、そうだよアリスちゃん!
ゆゆとアリスは仲良し、なかよし、だよ!」
慌ててユウナとふたりでアリスを慰める。
きゅうん?
もきゅっ?
泣きだしたアリスを心配したのか、庭で遊んでいたホワくんとマジェもやってくる。
ていうかホワくんめ、すっかりマジェと仲良くなっている。
女の子であるマジェのホワくんを見る目が、すっかり恋する乙女である。
「ぐすん、ありがとう!」
ホワくんとマジェのお陰もあり、ようやく笑顔になってくれたアリス。
「ふぅ……それにしても、レイニさんらミウス・プロモーションの考えがよく分かりませんね」
「あ、そういえば」
アリスが何か思い出したようだ。
ぱちんと両手を合わせる。
「一度目の対決が終わった後、もっとめーわく配信をしなさいって言われたの!
ダンジョンを壊して、モンスターをいっぱい殺せって……。
それに、”バランス”を変えるとも言ってたかな、じょーしのオジサンが」
「え?」
「ふむ……」
よく分からない事を言い出したアリス。
思わず困惑してしまう。
「ニホンではそういうめいわく配信が大人気でじょーしきなんでしょう?
アリス的には気がNoだったんだけど……」
「ちょ、ちょっと待った!!」
アリスの語る常識とやらに、大きく間違いがあるようだ。
俺は慌ててアリスの言葉を遮り、日本のダンジョン配信の常識を教えてあげた。
*** ***
「え~~~!?
それなら、アリス騙されてたの!?」
髪の毛を逆立てて驚くアリス。
彼女は善良で純真だし、ダンジョンがあるのは日本だけだ。
断片的な情報を信じてしまったのも仕方ないかもしれない。
「アリスの方が正しかったんだわ!
それなのにレイニはマジェまで使ってアリスを操って……許せない!」
全てを理解したアリスはぷんぷんと怒っている。
”良い子”なアリスである。
自分が悪いことをさせられていたとあっては怒るのも当然だろう。
「こーなったらもう、けいやくはきよ! Cancelよ!」
契約破棄を主張するアリスだが、相手は会社組織。
彼女一人の力では難しいと思われる。
「それなら……」
そう、こちらには頼りになるマサトさんがいる。
「え? マサト、助けてくれるの?」
「ほほう、兄貴……やる気だね!」
「大切な妹に危害を加えられそうになって、黙ってはいられないからね」
「もちろん俺も手伝います!」
「兄貴、タクミおにいちゃん……!」
「まずはもう一度配信対決をするんだ」
「「「ふむふむ」」」
そうして俺たちは、ひそかに反撃の策を練るのだった。
ばっ!
リビングに入るなり、深々と頭を下げるアリス。
「アリス、どうかしていたの!」
「アリスのせいで、ゆゆにめいわくを掛けて。
タクミにも大けがを……」
アリスの双眸からこぼれた涙が床に水たまりを作る。
「俺はもう、全く問題ないから!」
彼女か元に戻ってくれただけで充分である。
俺のケガを直してくれたのはアリスだしな。
「ほら、顔を上げて。
せっかく来てくれたんだからお茶でも飲もう」
「タクミ……」
優しくアリスの頭を撫でてやる。
「Wow!?」
不意打ちだったのか、顔を真っ赤にするアリス。
「最終的にみんな無事だったんだから、万事オッケーだよ。
それより、アリスちゃんは大丈夫だったの?
レイニさんは、魔力を使い過ぎたって言ってたけど……」
ユウナの話では、俺に回復魔法を掛けた後、アリスは呆然とその場に座り込んでいたらしい。救援部隊と一緒に到着したレイニさんが彼女を背負ってダンジョンを脱出したとのことだが……。
「そう、そのレイニよ!」
レイニさんの名前が出た途端、形の良いアリスの眉が吊り上がる。
ぷくりと頬を膨らませ、たいへんご立腹のようだ。
「マジェになんかヘンなモノを取り付けていたのよ!
そのせいでマジェは丸2日寝込んじゃったし!」
ちゃり
アリスがポーチから取り出したのは、小さな宝石のついたアクセサリ。
「これは……」
アリスからアクセサリを受け取り、まじまじと観察する。
一見ただの装飾品のようだが、宝石がはめられた台座はミスリル銀で出来ており、青い宝石にも魔法的な仕掛けがされていそうだ。
少なくとも、愛玩用モンスター向けグッズを扱うペットショップで売られているようなものじゃない。
「タクミ君、僕にも見せてくれるかな?」
俺はアクセサリをマサトさんに手渡す。
「これは!」
アクセサリを一目見た途端、マサトさんの顔色が変わる。
「兄貴、ヤバいアイテムなの?」
「ヤバいも何も……」
かぶりを振るマサトさん。
「強力なティム効果を持ったアイテムだ」
「それって!」
モンスターを操る効果があるという事だ。
それがピンクカーバンクルのマジェに着けられていたという事は……。
「ピンクカーバンクルは、強力な夢幻の力を持つと言われている。
マジェをティムしその力を使い、アリス嬢の感情を操作していたということか?」
「え? 一体何のためにそんなことを?」
困惑気味なユウナの言葉に同意する。
アリスとゆゆを仲たがいさせ、ファンを対立させる。
そうすることで一体レイニさんたちに何の得があるのだろうか?
「もしかして……」
「うむ……」
信じたくない話ではあるが、もしライバルであるゆゆが邪魔ならスキャンダルを流すとか配信中の事故に見せかけて怪我をさせる、などの策が考えられる。
「とはいえ」
先日の配信の様子はすべて公開されており、今もSNS上で物議をかもしている。
ゆゆだけでなくアリスの公式ちゃんねるも荒れており、フォロワーもあまり増えなくなっていた。
「タクミ君の考えは分かるが、さすがに悪手だろう」
「ですよね」
アリスのフォロワーを増やすのが目的なら、まったく逆効果だ。
「そんな……」
俺たちの話を聞いて、ぷるぷると震えるアリス。
「あ……」
アリスの前でする話ではなかったかもしれない。
「マジェを使って、アリスを操ってたの!?
アリスはそんなレイニの陰謀にのって、ゆゆを傷つけそうになって、タクミに大けがを……」
アリスの目には涙が溜まり、顔面は蒼白になっている。
「ご、ごめん!
これはただの推測だから!」
「うええん……」
「そ、そうだよアリスちゃん!
ゆゆとアリスは仲良し、なかよし、だよ!」
慌ててユウナとふたりでアリスを慰める。
きゅうん?
もきゅっ?
泣きだしたアリスを心配したのか、庭で遊んでいたホワくんとマジェもやってくる。
ていうかホワくんめ、すっかりマジェと仲良くなっている。
女の子であるマジェのホワくんを見る目が、すっかり恋する乙女である。
「ぐすん、ありがとう!」
ホワくんとマジェのお陰もあり、ようやく笑顔になってくれたアリス。
「ふぅ……それにしても、レイニさんらミウス・プロモーションの考えがよく分かりませんね」
「あ、そういえば」
アリスが何か思い出したようだ。
ぱちんと両手を合わせる。
「一度目の対決が終わった後、もっとめーわく配信をしなさいって言われたの!
ダンジョンを壊して、モンスターをいっぱい殺せって……。
それに、”バランス”を変えるとも言ってたかな、じょーしのオジサンが」
「え?」
「ふむ……」
よく分からない事を言い出したアリス。
思わず困惑してしまう。
「ニホンではそういうめいわく配信が大人気でじょーしきなんでしょう?
アリス的には気がNoだったんだけど……」
「ちょ、ちょっと待った!!」
アリスの語る常識とやらに、大きく間違いがあるようだ。
俺は慌ててアリスの言葉を遮り、日本のダンジョン配信の常識を教えてあげた。
*** ***
「え~~~!?
それなら、アリス騙されてたの!?」
髪の毛を逆立てて驚くアリス。
彼女は善良で純真だし、ダンジョンがあるのは日本だけだ。
断片的な情報を信じてしまったのも仕方ないかもしれない。
「アリスの方が正しかったんだわ!
それなのにレイニはマジェまで使ってアリスを操って……許せない!」
全てを理解したアリスはぷんぷんと怒っている。
”良い子”なアリスである。
自分が悪いことをさせられていたとあっては怒るのも当然だろう。
「こーなったらもう、けいやくはきよ! Cancelよ!」
契約破棄を主張するアリスだが、相手は会社組織。
彼女一人の力では難しいと思われる。
「それなら……」
そう、こちらには頼りになるマサトさんがいる。
「え? マサト、助けてくれるの?」
「ほほう、兄貴……やる気だね!」
「大切な妹に危害を加えられそうになって、黙ってはいられないからね」
「もちろん俺も手伝います!」
「兄貴、タクミおにいちゃん……!」
「まずはもう一度配信対決をするんだ」
「「「ふむふむ」」」
そうして俺たちは、ひそかに反撃の策を練るのだった。
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