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163 巡察

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という事で、巡察の旅に出る。

行程はこんな感じ。

半日程度で行ける範囲の村に行く。
話を聞いたり見回る。
すぐにどうにか出来る問題があれば、解決する。
解決した場合や問題が無い場合は王都に戻り、報告する。
時間がかかる物は村に残り、伝令を出す。


ほとんどの村は問題が無かった。
あってもせいぜい、橋が老朽化したとかその程度。
こういう公共物は、俺達にはどうしようもないので、報告して終わり。

で、今来てる村なんだけど。
この村はちょっと面倒な問題があった。
と言っても貴族関係では無い。
公共物の問題でも無い。

この村の問題。
それは場所。

この村は、王都と街の間にあるものの立地場所が悪く、王都からでは昼過ぎに、街からは昼前くらいに着く。
なので、休憩としては使えるが、飯を食う事も宿に泊まる事も少ないらしい。
昼前に着いた場合、ここで飯を食わずに出発して、途中で携帯食を食べるそうな。
昼過ぎに着いた場合も携帯食を食べ終わっている。もしくは、食わずに街まで向かうんだってさ。

要は通過地点になっていて、村にお金が落ちないって事。
現状やっている事は、パンとかの携帯食を露店で売るくらい。
これも大した成果を上げていない。王都か街にはそれよりも美味しい携帯食を売っているから。

昔は道が悪く、今ほどの移動速度が出せなかったから、この村で休憩したり泊まったりしてたらしいけど。
道や橋等が整備されてしまった……。
村にあった宿や飯屋は、今ではどちらも1件だけになってしまったらしい。


王太子はこの話を聞いてから悩んでいる。
解決策でもあるのだろうか?

「リョー、アイドルを持ってこれるか?」
「えっ? この村に?」
「そうだ。月に1度でも良いから、この村で舞台を出来るか?」

いや、俺は一応プロデューサーみたいになってるけど、詳しく無いですよ?

「出来るのかは、支配人か王様に聞かないと無理じゃない?」
「ふむ……」
「いや、無理でしょ」

突然、姫様からの否定意見。
何で無理と思ったんだろ?
その疑問は王太子も思ったようで。

「何故無理なんだ?」
「可能で即効性がある手だけど、一番の問題があるのよ」
「それは?」
「人気過ぎるって事」
「……なるほど」

いやいや、兄妹で納得してないで教えろよ!

「だからね。今この国で一番人気があるじゃない?」
「なんかそうらしいね」
「なのに、ちょっと過疎化してるからって、この村に劇場を作って優遇するの?
 絶対に他の村や街から苦情が来るわよ? 自分の住んでいる所にも作ってくれ、ってね」

そういう事か。
確かに、村おこしとしては強力過ぎるね。

日本のトップアイドルが、突然地方の片田舎で定期的にライブするようなものだ。
しかもその場を選んだ理由が「村おこし」。
そうなれば、各地から来てくれって言われるわな。
ズルいとか卑怯とか言われそうだ。
下手すりゃ「袖の下を受け取ったんじゃないか?」とか邪推されそう。

各地に同時に作って、持ち回りでやれば良いかもしれないけど。
でもその場合は、アイドルの負担が大きい。
練習時間が削られるだろうし、王都での公演も減る。
うん、手を広げすぎて失敗するパターンになりそうだね。

「リョー、何か良い手は無いか?」

そこで俺に聞く?!

しょうがない、ラノベの知識でも流用しますか。
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