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121 お悩み相談、その4

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「次が午前中最後になります。三人目、ハ、神……デ、ス。
 シュッシンチトウ、ハ、フメイ、デス…………」
「へ? 神? ってかバグったロボットみたいな喋りになってるけど?!」
「よう。久しぶり」

本当に神様がやってきた!
周囲を見ると、時間が止まったように誰も動いていない。

「時間なら止まってないぞ。一時的に付加をかけて処理を遅くしてるだけだ。
 いわゆる裏技ってやつだ」
「そんな事して良いんですか?!」
「当然良くないに決まってるだろ。だから要件が済めばすぐに戻る」

要件?!

「俺を帰してくれるとか?」
「そんな訳無いだろ」
「ですよね!」
「要件は1つだけ。他の奴が送り込んだ異世界人が居るだろ」
「は、はい。会いました」
「それだ」

ヒジリの事だな。

「ありゃズルい。チートじゃない、ズルだ。
 お前に分かりやすく言えば、プログラムを解析してパラメータをいじっているって感じだ」
「それは貴方も同じでは?」
「アホか。俺はちゃんと守ってるわ。
 処理を遅くするのは公式も把握しているが放置している。なら暗に認められているという事だ。
 お前にカードを持たせたのも『アイテム作成』という公式が用意したコマンドでやっている」

認められてる……のかなぁ?
ギリギリセーフ? アウトな気もするけど。

「時間が無い。要件を言うぞ。
 アレと戦っても絶対に負ける。戦うな」
「はぁ。元々そのつもりですけど」
「だが、ブツを見つけた場合、帰るまでに奪いに来る可能性は高い。
 そこで『アイテム作成』を使って新たなカードを作った」
「それを探して入手しろと?」
「いや。今ここで渡す。本来は探さないといけないんだがな。
 だから処理を遅くしてここに来た。元からここに有ったように細工する」

いや、それもズルなのでは……なんでもありません。

「午後から相談しに来るヤツの一人目に持たせた。
 相談に納得すれば貢物として渡してくるだろう」
「そ、そうですか。それで、どのようなカードです? 強力な悪魔カード?」
「違う。罠カードだ。『神速』のカード」
「『神速』? そんなの無かったと思いますけど」
「第二弾で出す予定だったカードだ。作られていたんだが、チートくさいって事で封印された」
「それってアリですか?」
「構想段階ではなく、販売予定で作られていたんだ。問題無い」

ズルだろ。まぁ良いけど。
俺の助けになるのなら、文句は言わない。
他人が使ったら文句言うけどね!

「『神速』のカードは、相手の手番を一度だけ無効化するカードだ。
 UNOで言えばスキップのような感じだ。
 決定はコインで決める。表なら成功、裏なら失敗って感じで」
「トレーディングカードゲームでそれは確かにチートくさいですね」
「そういう事」
「そのカードを貰えるとして、どのような能力なんです?」
「チートギリギリを攻めて作ったぞ。
 『このカードを相手に触れて早口言葉のような呪文を唱えると、相手を違う世界に送る』という能力だ」
「ムチャクチャチートじゃないですか!」
「だから制限を沢山付随したんだ。
 『相手に触れていないと発動しない』『呪文が早口言葉』『倒すではなく、違う世界に送る』。
 更に『一度使うと、成功失敗関係無くカードは消滅する』。早口言葉を噛んでも失敗だ。練習しろよ?」

マジか?!
俺、苦手なんだけど……。

「とにかく、なんとかチャンスを作って他の世界に送ってしまえ。
 相手の神が気づけばすぐにまた送り込んでくるだろう。それまでに探し当てろ」
「どれくらい猶予があると思います?」
「平日なら結構余裕があるだろう。休日なら監視してるかもしれないから、すぐ戻ってくるかもな」
「その平日休日って、神様の世界の話ですよね?!
 それがこの世界で判る方法は?!」
「無い!」

無いのかよ!

「おっと時間だ。頑張れよ」
「ちょっと待って!!」

俺の静止も無視して神様は帰っていった。
……早口言葉を練習しよう。

って、唱える呪文はなんですか、神様!!
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