117 / 186
118 お悩み相談、その1
しおりを挟む
とうとう、その日がやってきてしまった。
抽選で選ばれたのは6名。
午前中に3人、午後に3人って事だって。
そんな少人数で良いのかと疑問に思ったんだけど、
「大勢の相手をさせて、聖人様を疲れさせるのか?」
と言ったら、皆納得したそうな。
この世界の人達は優しいなぁ……。
領主の館の庭に特設されたテントみたいな中に移動する。
テントじゃないな、陣幕?っていうの?
なんかそんな感じ。結構広い。
中の四隅には高さ1mくらいの氷が置いてあり、結構涼しい。
配慮ありがとうございます。
陣幕?の中央に1つ、入り口から一番遠い所に3つ、入り口に1つ、合計5つの椅子が用意されている。
中央の椅子にだけ背もたれがと肘掛けが付いている。
これに俺が座るのか?と思ったけど違った。
この椅子は相談に来た者が座るらしい。
「理由? 簡単だ。すぐに立ち上がったり武器を出せないようにする為だ。
俺達の椅子は何も無いだろ? これはいざという時にすぐに動けるようにだ。
この様に腰に帯剣してても座れるだろ?」
そう言いながらただの椅子に座って見せてくれる王太子。
そして次は相談者用の椅子に座ってくれる。
うん、確かに剣が邪魔だ。
剣を外して座ると、少し狭そう。これが行動を阻害するのか。納得。
「あれ? でも王様とか、こういう椅子に座ってるよね?」
「王が剣を持って戦う事は無い。必ず護衛が守るという信頼の証でもある。
それに王がただの椅子に座ってたら威厳が無いだろ?」
確かに。
国会の椅子が全部パイプ椅子だったら、笑えるし。
ま、中にはパイプ椅子がお似合いの議員も居るけどさ。
「もう良いだろう? 始めようじゃないか」
「……判ったよ。覚悟を決めるよ」
「気楽にな、気楽に」
そう言われてもなぁ。
どういう形式で始めるのかと思ったら、入り口から一人の男性が入ってきた。
この人が相談者かと思ったら違うようだ。
俺の前まで来て手にしてた書類を開き、話し始めた。
「これから来るのは、ハックル・ネダム、男性、31歳、独身です。
出身地・所在地共にこの街で、縫製業を営んでおります」
それだけ言うと、俺にその書類を渡して入り口の所の椅子に座った。
どうやら案内役というか、説明してくれる役のようだ。
護衛でもあるのだろう。よく見たら腰に短い剣を帯剣している。
「入りなさい」
その人の声で、誰かが入ってきた。
この人がハックルさんか。
「その椅子に座りなさい」
「は、はい……。しかし私のような者が、このような席に座って良いのですか?」
俺と同じ疑問を感じているようだ。
そうだよな! 庶民の考えだとそうなるよね!
「大丈夫です。それは聖人様が望まれているのです」
「そ、そうですか。で、では、失礼します」
……俺のせいにされた。
別に望んでなどいなかったのだけども。
口を挟んでも良い事は無いので、沈黙しておこう。
「では始めます。
貴方の悩みを打ち明けなさい」
うやうやしく始まった。始まってしまった。
しょうがない! 真摯に答えようじゃないか!!
抽選で選ばれたのは6名。
午前中に3人、午後に3人って事だって。
そんな少人数で良いのかと疑問に思ったんだけど、
「大勢の相手をさせて、聖人様を疲れさせるのか?」
と言ったら、皆納得したそうな。
この世界の人達は優しいなぁ……。
領主の館の庭に特設されたテントみたいな中に移動する。
テントじゃないな、陣幕?っていうの?
なんかそんな感じ。結構広い。
中の四隅には高さ1mくらいの氷が置いてあり、結構涼しい。
配慮ありがとうございます。
陣幕?の中央に1つ、入り口から一番遠い所に3つ、入り口に1つ、合計5つの椅子が用意されている。
中央の椅子にだけ背もたれがと肘掛けが付いている。
これに俺が座るのか?と思ったけど違った。
この椅子は相談に来た者が座るらしい。
「理由? 簡単だ。すぐに立ち上がったり武器を出せないようにする為だ。
俺達の椅子は何も無いだろ? これはいざという時にすぐに動けるようにだ。
この様に腰に帯剣してても座れるだろ?」
そう言いながらただの椅子に座って見せてくれる王太子。
そして次は相談者用の椅子に座ってくれる。
うん、確かに剣が邪魔だ。
剣を外して座ると、少し狭そう。これが行動を阻害するのか。納得。
「あれ? でも王様とか、こういう椅子に座ってるよね?」
「王が剣を持って戦う事は無い。必ず護衛が守るという信頼の証でもある。
それに王がただの椅子に座ってたら威厳が無いだろ?」
確かに。
国会の椅子が全部パイプ椅子だったら、笑えるし。
ま、中にはパイプ椅子がお似合いの議員も居るけどさ。
「もう良いだろう? 始めようじゃないか」
「……判ったよ。覚悟を決めるよ」
「気楽にな、気楽に」
そう言われてもなぁ。
どういう形式で始めるのかと思ったら、入り口から一人の男性が入ってきた。
この人が相談者かと思ったら違うようだ。
俺の前まで来て手にしてた書類を開き、話し始めた。
「これから来るのは、ハックル・ネダム、男性、31歳、独身です。
出身地・所在地共にこの街で、縫製業を営んでおります」
それだけ言うと、俺にその書類を渡して入り口の所の椅子に座った。
どうやら案内役というか、説明してくれる役のようだ。
護衛でもあるのだろう。よく見たら腰に短い剣を帯剣している。
「入りなさい」
その人の声で、誰かが入ってきた。
この人がハックルさんか。
「その椅子に座りなさい」
「は、はい……。しかし私のような者が、このような席に座って良いのですか?」
俺と同じ疑問を感じているようだ。
そうだよな! 庶民の考えだとそうなるよね!
「大丈夫です。それは聖人様が望まれているのです」
「そ、そうですか。で、では、失礼します」
……俺のせいにされた。
別に望んでなどいなかったのだけども。
口を挟んでも良い事は無いので、沈黙しておこう。
「では始めます。
貴方の悩みを打ち明けなさい」
うやうやしく始まった。始まってしまった。
しょうがない! 真摯に答えようじゃないか!!
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる