上 下
96 / 186

096 ラノベを説明する

しおりを挟む
少し待つと、兵士に連れられ王太子とアイザックさんがやってきた。

「間違いなく自分の妹と“聖人様”です。
 そちらに居る執事のような者は“聖人様”が使役している悪魔です」

身元の保証をしてもらった。
お陰で開放される……とはならなかった。

「さて、何で後をつけたりしなのかな?」

王太子による尋問が始まったのだ!
取調室だから、逃げられない!
さっきまで取り調べをしていた兵士さんも聞きたそうだ!

これは、観念するしかないようだね。

「えっとね。俺の居た世界にはラノベという小説、え~と物語を書いた本が執筆されているんだ。
 本は安く作られているので、庶民でも簡単に購入出来る。
 しかも子供の時から学校に入り勉強しているので、読み書きも出来る」

ここは説明しておかないとね。
こっちでは本が流通はしているが、決して安くはない。
安い本で、日本円で5万くらいする。
印刷技術が発展していないので、しょうがないのだが。

ちなみに印刷は、誰かが書いた物を魔法で転写しているそうな。
元になる文書を、魔石とか呼ばれる物を砕いてインクと混ぜ、それで書くのだとか。
そうすると、魔法に反応して転写が出来るようになるらしい。

ちなみにちなみに……、濃淡は関係無いそうなので、水に混ぜて書くと見えない文書の出来上がり。
転写出来る魔法使いのみが読むように出来る。スパイみたいだ。

閑話休題

「で、そのラノベって作品というかジャンルなんだけど。
 最近流行りなのが、異世界の話なんだよ」
「ほう。それで?」
「その中で結構頻繁に出てくるのが孤児院なんだ」
「それで興味を持って、後をつけたと?」
「そうです。私が変な人です」
「開き直るな」

ギャグはスベったが、少しは理解してもらえたようだ。

「何で頻繁に孤児院が出てくるんだ?」
「え~? そこは察してよ」
「いや、世界が違うんだから無理だ」
「ちぇ。だからね? 孤児院に主人公が行くだろ?
 そうすると大体孤児院は何か問題を抱えてる訳。貧乏だとか、シスターが美人だから迫られてるだとか。
 それを主人公が解決する訳。するとどうでしょう?
 そうです! 主人公の好感度が上がるんです!
 ついでに子供キャラが出てきて読者を引きつける! 美人シスターも何故か主人公に惚れてハーレム要員に!」
「判った判った。判ったから熱く語るな」

止められた。
ちぇ。ここからだったのにな。

「話をまとめるとだな。
 つまり、孤児院が困っているだろうから、助けに行った、と」
「その通りです」
「……最後の質問だが、どうして孤児院が困っていると思った?
 本ではそうだから、ってのは無しだぞ?」

先に釘を差されてしまった。
まぁ、事実を話せば判ってもらえるだろう。

「通りで子供にぶつかりそうになったんだ。
 アンドロマリウスが助けてくれて、ぶつかる事は無かったんだが。
 あれは多分スリをしようとしたんじゃないかな、と思った訳。
 そうなると、孤児院の子供はスリをしないと生きていけないくらい困窮しているのでは?という結論に達する訳」

どうですか、この推理。
某、高校生の子供が小学生の子供になった探偵並の推理じゃね?!
結局子供じゃないかよ!

「…………ファーはどう思った?」
「ぶつかりそうになったのは事実。見てたから。
 でも、その子供も、リョーも、どちらもよそ見してたからぶつかりそうになったんだと思う」
「アンドロマリウスさんはどうです?」
「とても心苦しいのですが……あの子供はスリではありません」

なんと! ここに来て味方が裏切るだと!
それも王道と言えば王道だけど!

「アンドロマリウス、それは本当か? ウソだと言ってくれ!」
「すみません、主殿。私の能力を使っても、あの子供は何も企んでいませんでした」
「そ、そんな……」
「つまりリョーは、勘違いしたただの不審者だという事だな」

そんなオチは止めて!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

処理中です...