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081 怒られる兵隊長と心が痛い俺
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さて、残ったのは兵隊長だが。
一応まだ味方である。
ここは領主さんにどうするべきか聞いてみよう。
「すみません。まだ続けた方が良いですか?」
「そ、そうですね。……ところで何で兵隊長が味方になっているのですか?」
「え~~と、魔法です」
「こ、効果を聞いても?」
「いえ、それは勘弁してください」
さすがにそれはマズい事くらいは判る。
教えても良いんだけど、兵士達も聞いているし実際にカードの効果を受けている。
秘密にしても多分広まるだろう。
それなら謎な部分を沢山残しておいた方が、伝わりにくいと思うんだよ。
「~~な効果で負けた」よりも「よく判らない事されて負けた」の方が相手にしようと思わないだろ?
「わ、判りました。聞きません」
「それで、どうしましょうか?」
「……兵隊長は魔法によってそちら側に付いたようなので、兵は全滅とみなします。
終了としましょう」
「ありがとうございます」
続けると言われたら、時間を止めて兵隊長を前回と同じ穴に放り込むしかなかった。
助かったよ。
「兵隊長は……戻るのですか?」
「はい、戻りますよ」
今頃気づいたんだけど、兵隊長の額に秒数が表示されているんだよね。
思わず凝視してしまった。
現在は「24」となっているので、後24秒後には解除されるだろう。
しかしその数字は俺以外には見えてないらしく、誰も何も言わない。
なので、24秒後に自動解除するんだけど、俺が解除したように振る舞っておこう。
「ではお願いします」
「判りました」
俺は兵隊長の背後に回る。
正面だと、解除した瞬間に襲ってくるかもしれないからね。
背後に回る前には残り5秒だった。
俺は心の中でカウントして、残り1秒の時に背中を軽く押す。
これで解除したように見えるだろう。
「……うん?」
「兵隊長、勝負は終わりです」
「え?! な、なぜ領主様が目の前に?!」
「良いから武器を下ろしなさい」
「え、あ、はい! 失礼しました!」
「貴方は聖人様の魔法にかかり、聖人様の味方になりました。そして勝負は貴方達の負けで終わりました。
今魔法を解除してもらったのですよ」
「な、なんと?!」
驚いてキョロキョロする兵隊長。
背後に居る俺にも気づいたようだ。
うわ~、めっちゃ睨んでくる~。
あれ? これってどれだけ勝負しても認めてもらえないパターンじゃないの?
認めさせるには、剣のみでの一騎打ちしかないんじゃないか?
勿論無理だけど。秒で殺されるわ。
「し、しかし! 私はまだ立っています! 負けていません!」
やっぱり。認められないか~。
どうしようかなぁ。
「見苦しいですよ! 敵兵を前にし背後に市民が居る状態でもそのように言うのですか!
その言い分では、背後の市民が殺されても自分は負けていないと言っているのと同じ!
それでも領を守る兵ですか!」
まさかの領主さんの叱咤。
「し、しかし、相手は未知の魔法という卑怯な手を……」
「黙りなさい! 未知の魔法だから卑怯? 他の者も聞きなさい!
相手の実力が理解出来ないから卑怯と貶めるのは、自分の実力が足りないと言っているようなものです!
相手を貶めるよりも、自分の力の無さを怒りなさい!
そして、そのようにならぬよう、努力しなさい!」
う~ん、居心地が悪い……。
だって神様が作ったカードだよ?
チートですよ? ズルいですよ?
これなきゃ俺なんて村人Cですよ?
うん、見てられない。止めよう。
「領主様、もうその辺で。
俺が強いのではなく、神様の力なので。
俺はザコ中のザコ。神様の力に頼りっぱなし。はっきり言ってズルです。
なので、兵隊長さんを怒られると、居心地が悪いんです……」
そう言って頭を下げた。
「お、おやめ下さい、聖人様!
私が試すような事を言ったのが悪いのですから!」
「私も大人げありませんでした! すみませんでした!」
領主さんが頭を下げ、それに続いて兵隊長も頭を下げた。
結局、全員が頭を下げて、より一層居心地が悪くなってしまった。
一応まだ味方である。
ここは領主さんにどうするべきか聞いてみよう。
「すみません。まだ続けた方が良いですか?」
「そ、そうですね。……ところで何で兵隊長が味方になっているのですか?」
「え~~と、魔法です」
「こ、効果を聞いても?」
「いえ、それは勘弁してください」
さすがにそれはマズい事くらいは判る。
教えても良いんだけど、兵士達も聞いているし実際にカードの効果を受けている。
秘密にしても多分広まるだろう。
それなら謎な部分を沢山残しておいた方が、伝わりにくいと思うんだよ。
「~~な効果で負けた」よりも「よく判らない事されて負けた」の方が相手にしようと思わないだろ?
「わ、判りました。聞きません」
「それで、どうしましょうか?」
「……兵隊長は魔法によってそちら側に付いたようなので、兵は全滅とみなします。
終了としましょう」
「ありがとうございます」
続けると言われたら、時間を止めて兵隊長を前回と同じ穴に放り込むしかなかった。
助かったよ。
「兵隊長は……戻るのですか?」
「はい、戻りますよ」
今頃気づいたんだけど、兵隊長の額に秒数が表示されているんだよね。
思わず凝視してしまった。
現在は「24」となっているので、後24秒後には解除されるだろう。
しかしその数字は俺以外には見えてないらしく、誰も何も言わない。
なので、24秒後に自動解除するんだけど、俺が解除したように振る舞っておこう。
「ではお願いします」
「判りました」
俺は兵隊長の背後に回る。
正面だと、解除した瞬間に襲ってくるかもしれないからね。
背後に回る前には残り5秒だった。
俺は心の中でカウントして、残り1秒の時に背中を軽く押す。
これで解除したように見えるだろう。
「……うん?」
「兵隊長、勝負は終わりです」
「え?! な、なぜ領主様が目の前に?!」
「良いから武器を下ろしなさい」
「え、あ、はい! 失礼しました!」
「貴方は聖人様の魔法にかかり、聖人様の味方になりました。そして勝負は貴方達の負けで終わりました。
今魔法を解除してもらったのですよ」
「な、なんと?!」
驚いてキョロキョロする兵隊長。
背後に居る俺にも気づいたようだ。
うわ~、めっちゃ睨んでくる~。
あれ? これってどれだけ勝負しても認めてもらえないパターンじゃないの?
認めさせるには、剣のみでの一騎打ちしかないんじゃないか?
勿論無理だけど。秒で殺されるわ。
「し、しかし! 私はまだ立っています! 負けていません!」
やっぱり。認められないか~。
どうしようかなぁ。
「見苦しいですよ! 敵兵を前にし背後に市民が居る状態でもそのように言うのですか!
その言い分では、背後の市民が殺されても自分は負けていないと言っているのと同じ!
それでも領を守る兵ですか!」
まさかの領主さんの叱咤。
「し、しかし、相手は未知の魔法という卑怯な手を……」
「黙りなさい! 未知の魔法だから卑怯? 他の者も聞きなさい!
相手の実力が理解出来ないから卑怯と貶めるのは、自分の実力が足りないと言っているようなものです!
相手を貶めるよりも、自分の力の無さを怒りなさい!
そして、そのようにならぬよう、努力しなさい!」
う~ん、居心地が悪い……。
だって神様が作ったカードだよ?
チートですよ? ズルいですよ?
これなきゃ俺なんて村人Cですよ?
うん、見てられない。止めよう。
「領主様、もうその辺で。
俺が強いのではなく、神様の力なので。
俺はザコ中のザコ。神様の力に頼りっぱなし。はっきり言ってズルです。
なので、兵隊長さんを怒られると、居心地が悪いんです……」
そう言って頭を下げた。
「お、おやめ下さい、聖人様!
私が試すような事を言ったのが悪いのですから!」
「私も大人げありませんでした! すみませんでした!」
領主さんが頭を下げ、それに続いて兵隊長も頭を下げた。
結局、全員が頭を下げて、より一層居心地が悪くなってしまった。
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