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060 第一回閉店停止緊急会議

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俺はまだ食べているグランを店に残し、外に飛び出した。
勿論、ザックとファーを連れてくる為である。

4件回ってやっと発見し、無理矢理連れてきた。
そして、はい!

「第一回、閉店停止緊急会議!!」
「何事なの?」
「さぁ?」
「そもそも会議の名前が意味不明だ」

うるさいな。
動転して良い名前が出なかったんだよ!

「はい、注目! この店を店主が閉めようとしています。それを阻止する為の会議です!!」
「それって店主の意向を考慮してないんじゃない? やめたくてやめるのかもよ?」
「その通り。強要は良くないぞ?」

むむっ! そう言われると考えてなかった。
ラノベ脳で勝手に、客足が落ちて赤字だから泣く泣く閉店にする、って考えてたわ。
もしかしたら、王都に新しい店舗が出来たからそっちで新規オープンする、って可能性もあるよね。
目標額まで稼いだから、引退してのんびり暮らすという考えかもしれないし。

「ててて店主さん……どうしてやめるんですか?」
「今更聞くんですね……」
「ザック、ちょっと黙ってて。こんなに美味しいのにやめるんですか?」
「さっきも言った通り、食べにくいし下品だと言われる盛り付けだ。それで客足が遠のいてな。
 ただでさえ立地も悪いし。だから大赤字になる前に閉店するんだよ」

やっぱ合ってたじゃないか。
いや、喜ぶところじゃないけどさ。

「でも、立地が悪いですか? 大通りに出てるし、隣には馬車を預ける所もありますよ?」
「立地ってのはそこじゃなくて、この町の事だ。
 ケルンとクラインの間にあるだろ? どちらからも半日の場所に。
 ここに立ち寄ると、それらの街に着くのが暗くなってからになってしまう。
 だから寄らずに通過されてしまうんだよ」

クラインって街は昨日泊まった街だ。
確かに、急ぐならカラーブを通過するけど?と言われたような覚えがある。
ヒントやカードや捜し物の手がかりがあるかもしれないので、立ち寄る事にしたんだけど。

「つまり、やめたくてやめるんじゃ無いですよね?」
「そりゃ続けられるならやりたいさ。折角修行して覚えた味や料理が無駄になるからな」
「修行?! どこでです?」
「ケルンから船で南に進んだ所にある大陸だよ」

あれっ?
和食とかって、東に進んだ所じゃないの?
大陸じゃなくて島国じゃない? 変だな?
……いや、変なのは俺の脳みそか。東って決めつけるなよ、俺。

「という事なので、集客する方法を考えましょう!!」
「いやいや、俺達素人が考える事なんか、もう実践してるだろ」
「してないかもしれないじゃないか!」
「店主、どのような努力をされたのか、聞いても?」
「えっと、店前で試食を配る、セールをする、店前で料理する、チラシを作って配る、くらいかな?」

おぅふ。思ったよりも色々実践してた。
俺は、店前でウナギを焼けば匂いで釣れると考えてたんだけど。
実践済みでしたか。

「では、それ以外に何かありますか?」
「う~ん……、思い浮かばないなぁ」
「美味しいなら勝手に売れると思ってました」
「くっ、これだから族ってつく人達は! ザック! 何か無いか?!」
「そうですねぇ……一つにまとまっているので、弁当にして販売するというのはどうでしょう?」
「おっ! なかなかのアイデア! 即採用だね!」

カツ丼弁当やうな丼弁当。良いじゃないか。
大量に買ってインベントリに入れておこう。

とりあえず、頼んで作ってもらった。
さすがプロ。見事な弁当だ。
って、妹! 早速食べるんじゃない!

「だって、注文した料理が出てくる前に連れ出されたのよ? ほら、ザックも食べなさいよ」
「むむむ……。しょうがない、ザックもどうぞ」
「あ、はい」

食べた事で良いアイデアが出るかもしれないしね。

「美味しいけど、食べにくいわ。上に乗っている魚をもう少し細かく切って欲しいわね」
「なるほど。食べやすいようにしておくのか。採用だね。
 でも、それって買ってもらった後の事だよなぁ。買ってもらえるようにしたいんだよ」
「聞くばかりじゃなくて、自分もアイデア出しなさいよ!」

正論が出た。
議長だからまとめ役なんだ、ってのは通用しないだろう。

「俺のアイデアか。1つだけある」
「ほほぅ。聞こうじゃないか」
「それはな…………悪魔を召喚してアイデアを出してもらう事だ!」
「まさかの他人任せ!!」

俺のカードだし。だから、カードで呼び出した悪魔のアイデアも俺のアイデアだし。
俺よりも頭の良い悪魔達だし。たまにエゲツない事言うけどさ。
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