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052 魔法の不思議

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魔法。
それは異世界では当たり前のようにある、神秘的な力。
ゲームの世界でも当然のように存在する。

そして、この世界にもあるって事は貰った知識で判明している。
だが、どんな物なのか、魔力やその運用方法、そういった事は判らない。

折角説明出来る人が居るのだから、聞いておいて損は無い。
詳しく専門的に説明されると理解の範疇を超えるけど。

「魔法について教えてくれない?」
「えっ? あれだけの魔法を使っておいて、何が聞きたいの? 嫌味?」
「いやいや違うって。
 あの魔法はカードの力で起こした事だから。俺の力じゃないんだよ。
 判りやすく言えば、神の奇跡って感じかな?
 俺自身は、魔法を使えないんだ。いや使えるかもしれないけど、使い方とか知らない。
 だから教えて欲しいな~と」
「へ~、そうなんだ」
「うん、そう」
「何が聞きたいの?」

そう言われると困る。
なんせ、ある意味、何も知らないんだから。
貰った知識で言えば「魔法のある世界」ってくらいだ。
これでは魔法について何も判らないのと同じでしょ?

日本に居た時の知識で言えば、マンガ・アニメ・ラノベ・ゲーム、この辺で出てくる魔法しか知らない。
とりあえず、その辺を基準にして聞いてみるか。

「魔法って、発動させるのに詠唱するの?」
「ほとんどが無詠唱よ。使う魔法名を言うだけ」

マジで? 黄昏よりも暗きモノ……とか言うんじゃないの?
後、無詠唱って、ラノベの主人公がやって、周囲から注目されるイベントじゃないの?

「本当に?!」
「本当よ。え~と、魔法の作り方から考えた方が分かりやすいかな?
 最初は長い詠唱で魔法が作られるの。戦闘中に唱える時間は無いから、それを簡略化するのは当然よね?」
「うん、まあ、確かに」
「それを研究して行ったら、最終的に無詠唱になるの。
 脳内に発動時のイメージを残しておいて、魔法名を言う事でそれが発動する感じかな?」

出た! 魔法はイメージ!!
あっ、でも、よくあるパターンとは違う感じだね。

「あのね、世の中に魔法が出て来てから、新しい魔法を生み出したりと長年研究されているの。
 なのに、効率を求めない訳が無いでしょ? 同じ威力でも使う魔力を減らすとか、詠唱を無くすとか」

そりゃそうだよな。
普通は研究する人が居るはずだ。

文明の発達だって、同じ事。
家だって、最初は竪穴式住居だった。
それがいつの間にか木を加工して建てるようになり、石を利用するようになり。
コンクリートを発見?開発?して利用したり、鉄筋コンクリート構造にしたり。

魔法の効率化を研究しない文明なら、未だに竪穴式住居に住んでても不思議じゃない。

「今、脳内に発動時のイメージを残しておくって言ってたけど、魔法はイメージで効果が変わったりしないの?」
「どういう事?」
「えっと、発動時のイメージをさ、想像でもっと強い感じにしたら、そうならないのかな~と」
「ならないわよ。魔法名を言う時にそこにどういう物を生み出すか埋め込まれているようなものだから。
 そもそもイメージで魔法が変わるなら、誰もが行動するわよ。
 強いイメージを求めて、実物を見に行くでしょうね。
 火山に登り溶岩を見学するとか、台風の日に外に出るとか、河川の氾濫を見に行くとか、硬い鉱物に殴りかかるとか」

そりゃそうだよな。

「と言うかね、過去にそういう人物が居たから、今の魔法が存在するのよ?」
「えっ? どういう事?」
「~~な効果の魔法を作りたいって考えるのって、その~~の部分は大体が自然現象なのよ」
「え~と、理解出来ません。もう少し判りやすく」
「……だからね。無から想像は出来ないでしょ?
 それよりも地震って自然現象を目撃したとして、地震を起こす魔法って作れないかな~って考えるって事。
 夜に火を付けて明るくする、これを魔法で代用出来ないかな?って考える。
 さっきの例えで言うならば、台風の時の強風を受けて、同じ事が魔法で出来ないか考えた人が居るの。
 そしてそれを研究して、魔法が出来る」

え~と……つまり、昔からラノベの主人公みたいな考えをする人が沢山居たと。
で、既に研究されて実用化されてると。
そういう事ですね? 違うかな?
俺の頭では理解出来ないな。そういう事にしておこう。

「他に質問は?」
「頭が痛くなってきたので、もう魔法については良いや」
「……もうちょっと考えようとしなさいよ」
「いやぁ、ははは」
「そう言えば、カードでありえない魔法を使ってたけど、カードじゃない普通の魔法は使わないの?」
「さあ? 使い方を知らないし」
「ふ~ん。じゃあ今度教えてあげるわ。使えた方が便利だから」
「マジ? ありがとう。やってみるよ」

俺も魔法使いデビューか?!
頑張ろう。

……難しくなければ良いな。
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