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046 剣術と冒険者

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「兄様だけなんてズルい!」

全員がこうなると想像出来た。
現在姫様は王様に猛抗議中。

その間に俺は王太子に近づく。

「妹さんは、外に出してもらえないのか?」
「それは今までの話か? それともこれからの話か?」
「今までの話」
「出てるぞ。私のように国境近くの街まで、みたいでは無いけどな。
 私の知っている限りでは、王都周辺くらいは行っているはずだ」
「一人で、じゃないよね?」
「当然護衛付きだね」

王太子もゾロゾロと連れてたもんな。
逆に言えば、これから護衛はアイザックさんだけになるって、危なくない?

「これからはアイザックさんだけだろ? 王太子はそれで良いのか?」
「前にも言っただろ? 俺達はリョーが悪魔を呼ぶ時間だけ稼げれば良いんだ。
 危険を感じたら、先んじて召喚しておいてもらっても良い。
 逆にゾロゾロ連れている方がヤバい」
「えっ? 何で?」
「重要人物が居るって簡単にバレるだろ?」

あ~、確かに。
しかもそれらが守っている人は、大概中央に居る。
望遠鏡とかで顔を確認してしまえば、後は護衛が薄くなった時に狙える。
行動範囲が決まってるならそれでも良いけど、自由行動なら危険だね。

「アイザックさんは近衛兵だから強そうだけど、王族の二人はどうなの?」
「私と妹か? 当然剣術は習っている。近衛兵まではいかないが、そこそこのレベルだぞ。
 それと魔法も使えるからな。もっとも、妹の方が魔法が得意だが」
「へ~、そうなんだ」

確かに王様に詰め寄る姫様は、「魔法が得意だから!」と言っている。
それを理由に許可をもらうつもりらしい。

「ま、あまり意味無いけどな」
「は? あ、話の続きね。どういう事?」
「剣術の意味を知らないのか?」
「意味? 剣の技って事だろ?」
「違うんだ。剣術ってのは対人間用の技なんだよ」
「うん」
「だから近衛兵は剣術のレベルが高い」
「何が“だから”なのか判らない」
「王族を襲うなんてのは同じ人間だからだよ。動物や魔物が王族だからって狙って来ないだろ?」

そう言われてみれば。
王族や城を襲うなんて、戦争かクーデターくらいだろ。他国の暗躍もあるかな?
その場合、襲ってくるのは人間だね。

「解りやすく言えば、対動物や対魔物に強いのは冒険者。それで生計を立てているんだから当然だ。
 辺境を守る兵士はオールマイティーだな。だが、熟練度は冒険者や近衛兵には劣る」

本当に解りやすい。
特化してない分だけ、兵士は弱いと。その代わり相手が何でもある程度は対処出来る。
人間が倒せる剣術を極めていても、四本脚で歩くクマとか倒せるか?って事だ。
そこには倒す為の知識も必要。弱点とか特性とか知らないといけないよね。

「あっ、質問」
「なんだ?」
「近衛兵とか貴族とか王族の人って、冒険者を下に見てたりバカにしてたりしてないの?」
「はぁ?! 何だぞれ? 誰から聞いた? そんなバカな話があるか」
「誰から聞いたって……う、噂でさ」
「軍に出来ない迅速な行動で、魔物や動物の退治をしてくれているのが冒険者だぞ?
 そして彼らのお陰で肉や薬草が入手出来ている。それを知っていて見下す訳が無いだろ。
 貴族でも欲しい物があれば、冒険者に依頼を出すんだぞ」
「貴族も依頼を出すんだ……。雇ってる兵士を使って取りに行かせるんじゃないんだ」
「中央で雇っている兵は国に所属している。私用では王族でも使えない。
 辺境で雇っている兵はそこの領主に権限があるが、これも私用では動かせない」
「なんで?」
「私用で簡単に兵なんか動かしてみろ。反乱と思われるのが当然」
「数人でも?」
「数人動かしたら斥候と思われるのが普通」

意外に厳しい。
でも当たり前なのかもしれない。
勝手に兵を動かしたりされれば、隣国なら軍行動と思ってもしょうがない。
攻め込む準備に見えるもんね。

現実はラノベのような世界じゃありませんでした。
ま、あれはそういう風にして、主人公を公平な人物と思わせる為の方法って事だね。


あっ、こっちで話している間に進展があったようだ。
姫様がバンザイしてるよ。逆に王様がグッタリしている。
もしかして説得出来たんだろうか?
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