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045 サイファ王女

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三発もゲンコツを食らったせいか、やっと大人しくなった姫様。
そして周囲の異常さを感じたようだ。

「えっと……な、なんか、ヤバい所に来た感じ?」
「今になって気づいたのか」
「えへへへ」
「褒めてないぞー」

王太子からのツッコミ。
仲良いな、この兄妹。

さすがに王様も諦めたようだ。
近衛兵に処分無しと告げている。
ま、処分されるなら姫様の方だしね。

「サイファ、“聖人様”に挨拶しないか」
「えっ? 聖人様?」
「そうだ。この国の窮地を救っていただいたのだぞ?」
「へ? ホントに?」
「事実ですよ、サイファ王女」

宰相さんやアイザックさんにも確認を取っている。
信用出来ないみたいだ。
って言うか、窮地って言われるような事があったのを知らないのだろう。

「え~と、どの方が聖人様? こちらのカッコいい人?
 それともこちらの動物のマスクを被った女性? それともそちらの執事さん……は違うか」
「お前……意図的に避けてるだろ?」
「いや兄様、こちらの方は違うでしょ。聖人様って格好じゃないし、一般人って感じの見た目ですよ?
 って! カッコいい人は頭の上に輪っかが!! 背中に羽も!! って女性の方も羽が!!」
「今頃気づいたのか……」
「どどどど、どうしたんですか?! 今日は仮装パーティーですか?!」
「落ち着けぃ!!」

おっと王様から四発目が!
同じ場所だったらしく、床に転がり痛がってる。
スカート捲れてますよ。ズボン(パンツ)履いてるから大丈夫だけど。

「お前が失礼な事を言ったお方が“聖人様”だ! ちゃんと挨拶せんか!!」
「ううう……はい。判りました~。
 えっと聖人様、私はサイファ・ミカ・ストロングベリー。第一王女です。
 ピチピチの17歳です!」
「あっ、はい」

今どきピチピチなんて言う人、初めて見たわ。
ちょっと引いてしまった。

「聖人様のお名前は?」
「あっと、自分は、リョウスケって言います」
「リョウスケさんですか。お年は?」
「えっ? 年ですか? 29歳です」
「へ~、若く見えますね~」
「そ、そうですか?」
「ええ! それで、何をやったんですか? こちらの方々は? 今日は仮装パーティーですか?
 リョウスケさんは一般人の仮装ですか? 私も参加して良いですよね?」

一気に言われても対処出来ません。
それに何をやったかとか、話して良いんだろうか?

「え~と、詳しくは陛下に聞いてください」
「そうなの?」
「はい」
「じゃあそうするね。お父様?」
「……しょうがない。そこに座れ。説明してやる」
「は~い」

王様の説明が始まった。
途中悪魔の説明になった時、シトリに突撃していってたけど、また叩かれて戻っていったりしてた。
しかし結構聡明な娘らしく、事態が理解出来たようだ。


説明の最中に、ベリアルから声がかかった。

「リョウスケ様、時間が来てしまいました」
「えっ? あっ、そうか。ベリアルは王クラスだったね」
「はい。1時間しか一緒に居る事が出来ず、申し訳ありません」
「いや、今回は説明して欲しかっただけだから、大丈夫だよ」
「またお呼びくださいませ」

そう言ってベリアルはカードに戻った。
勿論、それを見ていた姫様は「消えた!」「すごい!」と大喜びして、王様に怒られてた。


全て(この国の成り立ち辺りは除く)を聞いた姫様。
考えるように顎に手を掛けて、王様に対し疑問を口にする。

「それで聖人様は、これからどうするんです?」
「国内を回って頂く事になるだろう。その為に色々な特権を与える」
「特権ですか」
「まぁ“聖人様”に直接特権を与えるのは難しいだろうから、息子に任務として与える事になるだろう」
「えっ?! じゃあ兄様は一緒に旅するって事ですか?!」
「そうなるな。護衛としてアイザックも同伴する。頼むぞ」
「はっ!」

以前に聞いてた通り、やっぱり王太子が同行するようだ。

そして……まぁ嫌な予感はしてたけどさ。
誰でも予想出来るような声が上がった。

「私も一緒に行く!!」

そう言うと思ってたよ、姫様。
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