上 下
40 / 186

040 褒美

しおりを挟む
アンドロマリウスが素早く書いた紙と共に、犯人らしい2人は連れて行かれた。
他にも仲介した者とか共犯者が居るっぽいけど、それらは呼ばなくて良いらしい。
どうも尋問して真偽を調べ、供述を元に逮捕するみたいだ。
とりあえず主犯格が逮捕出来れば良いんだろう。
ところでアンドロマリウス、どこから紙とペンを取り出した?

まぁ、いくら目の前で悪魔の力を見たからって、簡単には信用出来ないだろうね。

悪魔が近くに居る事で安心した俺は、改めて周囲を見回して見る。
スーツっぽい格好の人達は、顔色の悪い人が多い。
やはり悪魔が怖いのだろう。

って、思ってたら王様からの一言で違うという事に気づいた。

「他にも顔色の悪い者が居るが……まあ良い。あえて罪を追求はせずにおいてやろう」

顔色の悪い人達は、アンドロマリウスに悪巧みや過去の罪を暴かれるのを恐れてるみたいだ。
おいおい、半分くらい居るぞ? この国大丈夫か?
まぁ、中には本当に悪魔が怖いだけの人も居るかもしれないけど。

あっ、でも、過去の全ての罪をバラされるって事なら、俺もビビるかもしれない。
だってさ、誰も生まれてから今までで何の罪も無い人なんか居ないでしょ。
例えば、立ちションしたとか、親にウソ言って遊びに行ったとか。
もう時効でしょって事まで詳細にバラされるとなれば、嫌だ。恥ずかしい。
しかもそれが、放課後に好きな女の子の笛を咥えたとか、その手の罪だったら死にたくなるだろう。

「“聖人様”の力と、呼び出した悪魔の力は見させてもらった。
 過去を見通す力、短距離及び長距離の転移、どれも驚愕の力だ。
 この場に居る者で“聖人様”を疑う者はまだ居るか?」

誰もが下を向いている。
そりゃそうだろうね。
これで「自分はまだ信用していません」なんて言えば、アンドロマリウスの能力が自分に飛んでくるのは予想出来る。
その場合、過去に行った軽犯罪がバレてしまう。
ある意味脅しですよ、王様。

「……ふむ。皆納得したようだ。
 では改めて。我が国を救っていただき、ありがとうございます“聖人様”」
「い、いえいえ! 偶然ですので!!」
「そこで何か褒美を与えようと思うのだが、どうかね?」

俺が断ろうとしたら、王太子が挙手した。

「それは自分が事前に聞いています。
 まず、国内の自由行動の許可。次に我が国民となるが国外にも自由に出国出来る許可。
 それから他の国に“聖人様”を広める事。最後に王族を護衛に付かせる事です」

そんな話をしたっけ?
まぁ自由に移動出来るようにしてくれるのはありがたい。
他国にも入れるように王様が保証してくれるのは、大金貰うよりも助かる。

最後の王族が同行だけが理解出来ない。
王太子、付いて来る気マンマンだね。
王族じゃなくても良いんですよ?

ここに口を挟んでも俺では勝てないので黙ってたけど、アンドロマリウスが発言し始めた。

「私からも意見があります。
 まず、主殿に報酬を。これは街の被害を抑えた事、そしてここで犯罪者を白日の下に晒した事への報酬です」
「勿論だ。それは払わせて頂きたい」
「それと……シトリがこれから言う事を実行させて頂きたい」

シトリが言う事を実行?!
おいおい、この中に相思相愛の人でも居るのか?
この国の法律とか宗教観には詳しくないけど、もしかしたら同性婚は禁止だから密かに会ってるとでも?
で、それを認めさせるつもりなのか?
さすがにそれは大事過ぎるんじゃない?

俺が止めようと動いたけど、アンドロマリウスに静止させられた。
そしてゆっくりと頭を左右に降る。
どうやら俺が思っているような事では無いようだ。

ま、この悪魔達が、俺が困るような事をするはずが無いか。多分。きっと。そうだと良いな。

「シトリ」
「はい~。この城の宝物庫に眠っている、ある物を頂きたいですわ~」
「……ある物とは?」
「判ってるくせに~。まぁ良いです~。王太子~、こちらに~」

何を欲して居るのだろう?
シトリの元に来た王太子は耳打ちされ、それを王様に耳打ちした。
王様は「何故知っている?!」と言わんばかりの顔になった。
それを見て王太子もビックリしている。知らない話だったんだろう。

皆の視線が俺とシトリに集まっている。
俺は何も知りませんよ。見られても何も出ません。出せません。出るのは冷や汗くらいです。

「……了解した。
 宝物庫には限られた者しか入る事が出来ん。
 別室で対応しよう。息子よ、案内を命ずる」
「はい、判りました」
「これでこの場は終了する! 皆の者、“聖人様”の要求通りになるように動け!」
「「「はっ!!」」」

俺は何一つ要求してないんですけどー。
もし俺が要求するとしたら、何か食材を買いに行きたいな~くらいですけどー。
って言うか、自由にさせてください、ってのが本音ですけど!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...