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016 ウィネ

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「さ、金も手に入ったし、今日はもう宿にでも行こうか」
「主殿、それよりも身分証も得た事ですし、外に出られてはいかがでしょうか?」
「外?」

何しに? もう狩りは十分だよ?

「この街にいつまでも滞在する必要がありません。
 カードも探し物も無いのであれば、他の地を目指す方がよろしいかと」
「それは分かる。でももうすぐ日が暮れるよ?
 野宿なんてお断りなんだけど。現代っ子だぞ? キャンプの経験すら無いぞ?」
「大丈夫でございます」

なんだろう、その根拠の判らない自信は。
まぁ、俺は悪魔に頼るしか生きる方法が無いから、信用するけどさ。

「アンドロマリウスがそう言うなら、そうするけど……。本当に大丈夫なのね?」
「大丈夫です」

言われるままに街の門を出た。
出る時に「もうすぐ閉門だぞ? 閉門したら入れないぞ? 明日にしないか?」と言われた。
俺もそう思うんだけど、アンドロマリウス大丈夫って言うんだもん。

少し歩き人目が無くなったら、木陰に呼ばれた。

「何?」
「ここらでよろしいでしょう」
「何が?」
「悪魔の召喚でございます」
「まぁ、そうだろうね。でも誰を呼ぶのさ」
「ウィネでございます」

ウィネね。どっかで聞いたな。
あっ! 思い出した! ザガンと同じカードに書いてあった名前じゃないか。

「ザガンを呼んだから、もう呼べないんじゃね?」
「私が調べましたところ、召喚はどちらか1柱限定で同時召喚は出来ません。
 しかし片方を呼んだとしても、もう片方を呼べないという制限は無いようです。
 なので2柱書かれているカードは“お得”という訳でございます」

マジで?!
カードゲームやってる時も、どちらか片方の能力しか使えない縛りだったんだけど。
それなら呼んでも良いかな。

ウィネの能力はどんなんだったっけ?

---------------------------------------------------------------------------

ウィネ(双児宮)&ザガン(人馬宮)
 姿:ウィネ→馬に乗ったライオン ザガン→翼を持った牛(人間にもなれる)
 能力:ウィネ→先読み、塔建設破壊、城壁破壊 ザガン→金属をその地域の硬貨に変える

---------------------------------------------------------------------------

何? 馬に乗ったライオンって。
馬、食われるんじゃね?
しかもどうやって乗ってるんだよ。ブレーメン状態ってか?

ま、呼んでみれば判るか。
ウィネ召喚!



驚きです。
まさかライオンが人間のように騎乗してるなんて。
馬の手綱を咥えてました。前足は馬の首を持ってました。

そして、想像してみてください。動物園で見たライオンの大きさ。
あれが乗る程の馬です。デカいです。
世紀末覇者が騎乗しそうです。ばんえい競馬です。

「呼ばれて飛び出てジャジャーン! ウィネ登場ジャン!」

軽い! 口調が軽い! どこのチャラ男かと思ったわ!

「ウィネ、主殿は移動と休息をお望みだ」
「分かったジャン! 任せるジャン!!」

そう言うと俺を後ろに乗せてくれるウィネ。

「じゃあ、行くジャン」
「待て待て! アンドロマリウスとグラシアはどうすんだよ!」
「問題無いジャン」
「は?」

言うなり走り出すウィネ。
そして何の苦も無さそうに、走って追いかけてくるアンドロマリウスとグラシア。
グラシアは羽出して飛んでる。アンドロマリウスは手を振らずに走ってる。怖い。

って言うかさ、もう辺りは暗い訳よ。
そんな中、どこに向かってるのかも判らない状態で猛スピードで走られる。
これがムチャクチャ怖い!!
暗闇の中のジェットコースターと言えば分かりやすいだろうか?



「ウィネ、どうですか?」
「やっぱり当たりジャン。この辺ジャン」
「反応がありましたか。では今日はこの辺にしましょう」
「反応って何の?」

何時間走ったのか判らないけど、何かの反応があったようだ。
よく考えたらウィネは王カードなので、1時間しか持たないんだった。
って事はまだ1時間も経って無いのか。体感では3時間くらい経ったと思ってたんだけど。

「ウィネには先読みの能力がございます。それを利用し捜し物やカードの場所を先読みしてもらいました」
「えっ、じゃあ反応って……」
「はい。主殿の指輪に反応が無いようなので、どうやらカードがあるようですね」

新しいカードか!
俺の強化になるので、是非とも発見したいな。

「でも、周囲は真っ暗だけど?」
「問題ありません。ウィネをご覧ください」
「ウィネを?」
「やったろうジャン!!」

ウィネが前足を持ち上げ一吠えすると、目の前に明かりの灯った家が出来上がった。

「何これ?!」
「ウィネの能力でございます」
「俺、塔を作る能力があるジャン。それを利用して、主様の寝所を作成したジャン」

平屋なのに、塔扱いなのか。
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