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001 プロローグ

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「ふ~、今日も定時で帰れたぜ。さてっと、早速アプリ起動っと!」

国民の半分がプレイしていると言われている『ピカゴロ歩き』を起動する。
これはスマホのマップと繋がっていて、歩いて従魔を探すアプリだ。

「ん~、今日はこっちの道に行ってみるかな」

前は有名所にばかり従魔が出現していたが、アップデート後はマイナーな場所にも出没するようになった。
時間帯でも出没する従魔が変わるので、子供が夜間出歩く事が問題になっている。
ま、大人の俺には関係無いけどね。

今日は人がすれ違う事が出来るかくらいの細道に入ってみた。

うん、やっぱりスマホ持った人が居るね。
この道もダメか~。

誰かに従魔を取られると、その場には24時間は出没しないらしいからね。
ネットの攻略掲示板に書いてあった情報だ。

どうすっかな~。
あっ、そうだ。マイナーな道が有名になったけど、メジャーな所に出なくなった訳じゃないはず。
確か近くに公園があったな。行ってみるか。



公園に到着すると、俺の予想通り人は居なかった。
アップデートしたばかりだし、皆マイナーな道での探しに夢中っぽい。

よし! ウロウロしてみっか!


歩き回る事30分。
全然見つからない……。
誰かが先に来てたのか?
う~ん、もう30分歩いてダメだったら今日は帰るか。


30分経ったので帰ろうとしたら、スマホ持った人発見。
あ~、この人が先に来てたのか。って、子供じゃないか!
まだ19時くらいだけど、もう真っ暗だぞ?

……そう言えばニュースで見たな。
こういう子供に従魔が居る場所を知ってると言って声を掛けた変質者が居たってのを。
逮捕されたらしいけど、その手の話題は多いしなぁ。
ん~~、しょうがない。帰るように言うか。
おっと、俺は変質者じゃないよアピールも必要だな。

「君、君。最初に言っておくけど俺は変質者じゃないからね?
 もう暗いから帰りなさい。子供には危ない時間だからね?」
「……?」

えっと、何でじっと見られてるのだろう?
おかしいな、変質者じゃないと言ったのに。

「帰った方が良いよ。変質者が出るってニュースでも言ってたし。勿論俺は違うけどさ。
 普通なら送っていくんだろうけど、変質者扱いされたくないから送らないよ?
 だから、自分で帰りなさい。ね?」
「……。俺に言ってるのか?」
「そうだよ。他に誰が?」
「見えてんのか?」
「は? あぁ、従魔の事か? この辺には居なかったね。君が集めたんだろ?」
「おいおい、会話まで出来るのかよ」

なんだこの子供。生意気だなぁ。
10歳くらいなのに、俺とか言っちゃって。態度も偉そうだし。

「会話くらい出来るさ。大人をバカにするんじゃないよ。
 帰らないなら警察呼ぶか? 補導されるぞ? ほら、帰れ」

ちょっと脅してやった。
大人に対して偉そうに言うような子供にはちょうど良いだろ。

「……ふん、面白いな。ちょっと来い」
「いやいや、何で君とどっか行かなきゃいけないんだよ。俺が変質者か誘拐犯に見えるだろ!
 おい、服を持つな! 引っ張るな!!」
「良いから、来い!」
「やめろって! おまわりさ~ん!!」
「うるさい。少し黙れ」
「止めろ! 美人局か?! 俺に冤罪を背負わせて、それで脅すのか?!
 って、ここはどこじゃーーーー!!」

ちょっと引っ張られただけなのに、周囲一面真っ白な空間に俺達は居た。
どこだよ、ここ!

「俺はお前らの言う所の神だ」
「あっ、宗教勧誘なら間に合ってますので」
「……お前、余裕があるな」
「テンパってんだよ! 何だよ神って! 日本人ナメるなよ、そんなもん信じてないんだよ!
 まだUFOに拉致られたって方が信憑性があるわ!!」
「じゃあそれで良いわ。ワレワレハウチュウジンダ」
「喉チョップしながら喋んな! それに我々って一人じゃねぇか!」
「じゃあどうすりゃ信じるんだよ」
「えっ? じゃじゃあ、明日の天皇賞の1~3着を教えてくれ」
「……いや教えても良いけど、意味無いぞ?」
「何でだよ! 知ったら貯金全部使って買うわ!」
「俺が言うのもなんだけど、インチキくさいヤツが言った買い目を買うのかよ」
「神が言うんだから間違い無いだろ」
「信じてるじゃねーか!!」

いや、だってさ。こんな空間?場所に連れて来れるって、神しかいないだろ。もしくは宇宙人。
神なら間違い無く当たるだろうし、宇宙人なら何らかの技術を使って当たるように出来ると思う。

ん? 意味無いって何?

「意味無いってどういう事?」
「お前、今から異世界転移するから」
「……はい?」
「お前の家の本棚に並んでるラノベと一緒だ。異世界転移だよ。判るだろ。行って来い」
「ちょいちょい! 何で?! 俺、死んだのか?!」
「転移だって言ってるだろ。死んでたら転生だ」
「あっ、そうなんだ…………じゃない! 何で行かなきゃいけないの?!」
「今な、神の世界でスマホゲームが流行っててな。
 各世界に1つだけアイテムが落ちてんだよ。それを回収するゲームなんだよ。
 本当は俺が行きたいんだけど、この後仕事でな。だからお前が行って来い」
「何で俺なの?!」
「俺が見えたから」
「……えっ?!」
「普通は見えないし、会話出来ないし、触れない。それが出来るお前は異世界への適正があるってこった。
 なら行かせない理由は無いだろ?」
「いやいや、適正があっても俺の意思ってものが……」
「この世界を管理してる神に逆らうのか? 別に死んで転生でも良いんだぞ?
 その場合は戻って来れないけどな。どうする?」
「…………行きます」
「そう言ってくれると思ってたよ。いや~、助かるわ~。後1個でコンプリートだったんだよな~。
 諦めてたけど、ラッキーだったぜ」

思って無かったくせに! ってか脅迫だったけどな!

「そうそう、ラノベ読んでたんだ。判るだろ。ほれ、欲しい物言えよ」
「……チートですか?」
「そういう事。発見する前に死なれても困るしな」
「何でも良いんですか?」
「おう、良いぞ。ただし、星を壊すほどの能力はダメだ。回収出来なくなる可能性があるからな。
 後、武力系の能力でも、当たり前だが神には勝てないぞ。自分の驚異になる力を与えるバカは居ないからな」

納得。
当たり前だよね。
しかし、俺の事よりも回収する物の方が比重が高いのがムカつく。

「じゃあ、まずは行く世界の情報をくださいよ。
 使い道の無いチート貰っても意味無いですからね」
「おっ、なかなか賢いじゃねぇか。じゃあ教えてやる。って言っても、語るのは長くなるから、脳に直接送ってやるよ」

こちとら社会人だぞ、なめんなよ。
しかし脳に直接送れるんだ。神、すげーな。
テストとか楽勝だな。もれなく異世界行きになるけど。

「あっ、何か知識が入ってきまし……た…………イデデデデデデデデデデ!!」
「無理矢理入れてるからな。頭痛くらいするだろ。破裂しないから安心しな」

そういう問題じゃない!! ムチャクチャ痛いんですけど!!


俺の頭痛は体感で1時間は続いたと思う。
神曰く、5分程だったそうだが。
頭痛・歯痛・耳鳴り・目の痛み・鼻に水が入った時の痛み、それらの最大級が同時に来た感覚と言えば分かりやすいかも。

「顔が鼻水や涙やヨダレでベチャベチャだぞ。近寄るなよ」
「あんたのせいでしょうが!!」

「知識は手に入っただろ? で、何が欲しい?」
「……もらえるのは1つだけですか?」
「ん~、まあそうだな。だが例えば『魔法全部』ってのも1つと考えてやろう」
「じゃあ、能力全……」
「『能力全部』ってのでも良いが、お前に入り切らなくて死ぬぞ?」

マジか?! 危なかったぜ。
限界があるのかよ。なら負担の無い方法が良いな。

少し落ち着いて考えよう。
さっきの神の言い方だと、俺はPCみたいなものか。
空いているHDDにソフトを入れるような物だと考えられる。
で、貰った知識から想像するに、異世界で能力は増えると思う。例えば魔法を覚えるとか。
そう考えると、神から貰った能力でHDDを限界近くにはしたくない。

……裏技的な方法が良いか?
HDDが一杯になるのなら拡張すれば良いのだ。
PCで言うなら、外付けHDDを接続すれば良い。

俺は手元を見る。
……能力で考えるなら、召喚士とかどうだろうか?
俺は召喚する能力だけあれば良い。後は呼び出したモンスターとかにやってもらえば良い。
丁度今やってるスマホアプリゲームがそんな感じじゃないか。

「決めました。『ピカゴロ』をください」
「……はぁ?」
「ピカゴロゲームみたいな能力をくださいって事ですよ」
「……あぁ、そういう事か。でも止めた方が良いぞ」
「何でですか?!」
「それ、自身で従魔を探して回り、戦って仲間にするゲームだろ?
 お前、戦うのか? 必ず勝てるのか?」

言われて見たら確かに。

「コンプリートした状態でスタートってのはダメですか?」
「う~ん……、今でも従魔が増え続けてるからなぁ。おっ、そうだ。それじゃなくてこっちのゲームにしろ」
「えっ?」

そう言って手渡されたのは50枚くらいのカードの束。
トランプ? いや、違う。こ、これは……!

「知ってるだろ。『ソロモンゲーム』だ」
「知ってますよ、TCGでしょ。小学生の頃、集めて遊んでましたよ」

いわゆるトレーディングカードって言われるやつだ。
有名なのは遊○王だね。同じ頃に流行ってた。懐かしい。

「それはお前の実家にあった、お前が集めてたやつだ。
 それならカードの意味も知ってるだろうし、最初からある程度集まってるだろ。
 それを使え。カードの能力も知ってるだろうからやりやすいだろ。もう発売終了してるから増える事は無いしな」

俺のやつかよ!
買取価格が上昇したら売ってやろうと思って持ってたんだよな。
人気が無くなって価値が下がるばかりだったから、もう持ってる事さえ忘れてたわ。

「よし、それを実際に使えるスキルって事で。
 カード紛失は困るだろうから、インベントリも付けてやるわ。そこに入れとけ。
 後、他人は使用不可、譲渡不可な」
「こ、これい決まりですか?!」
「おう。他に何かあったか? おっとそうそう、強力なのは使用可能時間制限付けとこう。
 ま、詳しくはカードを読んでくれ。じゃあ、行って来い」
「えっ?! ちょ?! 待って?!」

次の瞬間、俺は知らない部屋に居た……。
普通、人里離れた森の中じゃない?! ここ、どこですか? 俺、不法侵入?!
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