上 下
68 / 82

ソーシャルゲーム式召喚術

しおりを挟む
遂にシンオオサカニウムの解析が完了した。

遅くない?数日で終わるって言ったじゃん。

マッドサイエンティスト達の言い分は、ダンジョン産のアイテムの解析の方が楽しかったかららしい。もうとにかく大量に持ち込まれる未知の資源、未知の生物。研究者としての好奇心を大いに刺激され、シンオオサカ二ウムのことなんて忘れていたようだ。

はぁー、ほんとこいつら。マジで自分勝手だな。まあ結果を出してるから別にいいけどさぁ。




俺がかつて簡易鑑定で得た情報は以下の通り。

●西暦2800年頃の新大阪駅下層エリアで発見された金属。オールトの雲より飛来した隕石と新大阪駅要塞前線指揮列車の電算室との接触により誕生したと推測される。
軽く、丈夫で、加工がしやすい点、さらに 膨張性と演算機能を備えているため、資源不足に悩まされた当時の大阪府民の間で広く流通した

相変わらず意味不明だ。西暦2800年では新大阪駅がなぜか要塞になっている。

だがそんなことはどうでもいい。俺が知りたいのは、この金属がどういった性質なのかということだ。


マッドサイエンティストは俺の期待に応え、この金属の性質を見事に解き明かした。
なんとこの金属は生きているらしい。しかも宇宙生物だとか。は?


オールトの雲より落下した何かは宇宙生物であり、物と融合する性質を持っていたらしい。

そしてそれが新大阪駅の電産室に使われた金属と融合した。それこそがシンオオサカニウム。

そしてこいつは生きている。つまり細胞分裂が可能なのだ。シンオオサカニウムは特定の手順で空気中の細菌や塵、水蒸気などを吸収し成長することが可能。


これが大阪府民の資源不足が解消された理由だろう。ほぼノーコストで無限に増えるのだ。

しかしシンオオサカ二ウムは落下の衝撃で記憶や人格などが吹き飛び休眠状態のようだ。自身だけでの回復の可能性は皆無。つまりこの宇宙生物は今はただの人間に使われる金属というわけだ。

さらにこの金属は細胞一つ一つが脳のような力を持っているようで、CPUのように使うことも出来るらしい。そして他の金属と混ぜれば未知の性質を発現させるのだとか。

この非常に使い勝手の良い金属にホムンクルスは工房の金属不足が解消されたと大喜び。


こうして我が王国の生産業は活発化するのであった。











今日のログインボーナスはゲーム確定ガチャコイン。

ガチャから排出されるゲームねぇ…まずまともなものではないだろう。

そもそもゲームが排出されるかも怪しい。ゲームに出てくるキャラクターやアイテムの可能性だってある。


それでは回そう。







ガタンッ









R『虹色結晶』





出現したのは、虹色に輝く立方体の形を小さな石だった。

既視感がある。これはあれだ、この前ガチャから出た少年Aの意思や解放結晶と同じ種類の気配がする。


………なんとなく、予想がつくぞ。






鑑定!







●虹色結晶

立方体の形をした綺麗な結晶です。一つ100円にてストアにて販売中。
5つ使うことで召喚システムを起動して、人気VRMMOゲーム『ファンタジーオンライン』にてキャラクターやアイテムを召喚することができます。

入手方法は『ファンタジーオンライン』内のデイリーミッションやログインボーナス、クエストのクリアなど!
これからも『ファンタジーオンライン』を楽しんでください。




VRゲーム内で使える課金アイテム。そして使うためには5つ必要。

足りないんだよなぁ。ストアって何処だよ。

俺はこのガラクタを倉庫に保管しようと虹色結晶を持つ。






「お困りのようですね」



「おっ、首無し」


「もしよければその結晶、譲って頂けませんか?」


この首無しは最近大忙しだ。今工房では多くのホムンクルスが首無しから教えを受けている。


首無しは芸術家なだけあって知識豊富で物を作る能力に長けている。そのため多くのホムンクルスがこいつから物作りについて教わっているというのが現状だ。

教えるのが非常に上手く、ホムンクルスからの人気は高い。

だが俺は、国内での生産業の活発化はこいつが扇動しているのでは無いかと考えている。
能力の使用は封じてあるが、その口やこいつが作る素晴らしい芸術品がホムンクルスを煽っているのではないか?

まあ別にデメリットもないしいいけど。




さて虹色結晶だが。どうせ使い道もないしいいよ!


そう言うと首無しは蜜柑ジュースで魔法陣を床に描き始めた、ほんと蜜柑ジュース好きだなこいつ。

魔法陣の中心に虹色結晶を置き、ブツブツと何かを唱え始める。


え、マジで召喚するの?一つしかないのに?そもそもここファンタジーオンラインのゲーム内でもないのに?



そんな不安をよそに、魔方陣が光り輝き虹色結晶が消滅する。

気がつくと一人の男が立っていた。




そこには、ホームレスのように小汚い男がいた。

………いや、ホームレスというより、旅人だ。
ボロボロのマント、砂埃に塗れた服。手入れされていない長い髪とひげ。
中年、いやそれ以上か。筋肉質で体格の良い男性だ。
背中には一本の剣を背負っている。特に装飾もない、飾り気のない無骨な剣。






●縺代s縺帙>が召喚されました!



読めない!
バグってんじゃねーか!



  







それでは、今日の無料ガチャ。

なんか今日は良いものが出そうな気がする。

さぁ、こいっSSR!







ガタンッ

排出されたのは金色のカプセル








うおおおおおおおお!SSRだ!中身は…?










SSR『惑星確定ガチャコイン』


実体化したのは、地球の絵が刻まれた金色のコイン。数秒だけあたりが宇宙空間のような光景になり、すぐにもとに戻る。









えっ?















中層暗黒騎士団 第61層派遣軍 一般団員視点


我々騎士団は、壊滅状態にあった。


今日は中層暗黒魔術師団との合同訓練だった。


流石にこの孤立現象について中層暗黒魔術師団も危機感を抱いたらしい。緊急で決められた合同訓練というわけだ。


元々の予定はこうだった。中層暗黒師団長がDPを使い野生の大量の魔物を誘導する。

そして騎士団が前衛として戦い、後方から暗黒魔術師団が支援するというもの。

だがそれは罠だった。


突如として発生した地割れ。多くの騎士がこれにより裂け目に落下し、その中には主力の部隊や指揮官なども含まれていた。



そして我々を支援するはずの暗黒魔術師団による大規模な魔法が我々に降り注ぐ。


それだけではない。

突如として川が発生して、流れに飲み込まれていく騎士。
吹き割れる竜巻
溶岩の海
降り注ぐ雷
凍死する猛吹雪
突撃する魔物の群れ。



間違いない。これは、ダンジョン司令官による地形操作だ。

ダンジョン司令官はDPを使いダンジョンマスターより任せられた層を改造することができる。

61層の司令官は、中層暗黒魔術師団師団長。

こいつだ。こいつが凄まじい量のDPを使い、我々騎士団に攻撃を仕掛けてきている。


だがそんなことはありえない。

ダンジョンマスターにより生み出された魔物同士での殺し合いは、正当防衛時などの一部の限られた理由とダンジョンマスターからの許可が無ければ不可能。

なのにどうしてこんなことが。

理由もわからない。こんなことしたら、ダンジョンの戦力低下は必然。こんな地形や気象の変化は膨大なDPを使うはず。そこまでして何故我々を攻撃する。

そして暗黒魔術師団は、同胞殺しの烙印を押されるだろう。


意味がわからない。まさかダンジョンマスターが命令したのか?そんな。




あぁ、空から流星が降り注ぐ。

どうしてこんな。







中層暗黒騎士団 第61層派遣軍 全滅


しおりを挟む

処理中です...